七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第282回 狼の死(ヴィニー)
Gémir, pleurer, prier, est également lâche.
Fais énergiquement ta longue et lourde tâche
Dans la voie où le Sort a voulu t’appeler.
Puis, après, comme moi, souffre et meurs sans parler.
(呻き、泣き、祈りはすべて卑怯だ。運命に呼ばれた道を歩み、
長く重い己の務めを力強く成し遂げよ。そして、この私にならい、
黙々として死にゆくべし)
フランス・ロマン派の詩人、アルフレッド・ド・ヴィニー(Alfred de Vigny, 1797~1863)の「狼の死(La Mort du Loup)」から。絶望的な厭世観のなかにあって、情念を抑制した表現により、崇高な死を感じさせる。
ヴィニーは、フランス中部トウレーヌの地方都市ロッシュで生まれた。生家は名門軍事貴族の家柄だったが、フランス革命で没落した。ヴィニーも近衛騎兵隊に入隊するが、王政復古期に入りナポレオン時代の栄光を失った軍隊に幻滅する。
退屈な駐屯生活のなかで詩を書き始め、1822年に匿名で処女詩集を刊行する。1828年に除隊した後、パリのロマン主義者たちのサロンの常連となる。そして1830年代には小説や戯曲を立て続けに発表した。
しかし、女優マリ・ドルヴァルとの恋愛が破局したころから表舞台を去り、隠遁生活に入る。ついには象牙の塔に籠ったまま孤独な死を迎える。晩年書いた詩11篇が友人の手で『運命詩集(Les Destinées)』と題して発表された。「狼の死」はそのなかの1篇である。この哲学詩集によってヴィニーはフランス文学史上不滅の光を放つことになる。
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