七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第425回 ダモクレスの剣(キケロ)
o Domocle, ipse hanc vitam dequestare et fortunam mean experirri ?
(ダモクレスよ、おまえはこの暮らしをちょっと味わって、私の幸福を経験する気があるか?)
共和制ローマ時代の文筆家、マルクス・トゥッリウス・キケロ(Marcus Tullius Cicero, BC106~BC43)の「トゥスクルム談義」から。一発触発の危機を警告する〝ダモクレスの剣〟の逸話として有名。
紀元前4世紀、シチリア島を支配する僭主ディオニュソス王はその栄華を謳歌していた。その部下のダモクレスは王を褒め称え、その幸福を羨んだ。それに対して王が掲出の発言をした。
ダモクレスは喜んでその申し出を受ける。王は黄金の椅子に美しい織物をかけてダモクレスを坐らせ、金銀の彫刻で飾ったテーブルを用意させた。そして美貌の侍女を侍らせ、豪奢な食事が運ばれる。
そのとき王は研いだ鋭い剣を馬の毛で結び、ダモクレスの真上の天井に吊り下げた。これを見たダモクレスは頭上の剣以外に何も考えられない。すぐに王に懇願してその場から解放された。
この逸話はヨーロッパ文化圏で語り継がれた。1961年にはケネディ大統領が国連演説で<世界の人々は核というダモクレスの剣の下で暮らしている(Every man, woman and child lives under a nuclear sword of Damocles)>と引用した。