七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第318回 岩(スナイダー)
Lay down these words
Before your mind like rocks.
placed solid, by hands
In choice of place, set
Before the body of the mind
in space and time:
(これらの言葉をあなたの心の前に置きなさい。両手で岩石を持つようにしっかりと。時間と空間のなかで心が具象化する地点を選んで)
米国の自然詩人、ゲイリー・スナイダー(Gary Snyder, 1930~)の「岩(Riprap)」の冒頭。スナイダーの詩を特徴づけるロッキー山脈の岩のイメージが鮮烈に浮かび上がる。
スナイダーはサンフランシスコの農場で生まれ、大学で神話学、言語学、東洋思想などを学ぶ。そこで禅の思想に出会い、禅を学ぶために京都を訪れる。相国寺や大徳寺で臨済宗を学んだ。日本での滞在は二度、通算10年に及んだ。その間に日本人女性、上原雅(まさ)と結婚。そして、現在カリフォルニア州のシエラ・ネヴァダ山中で原始的な生活を送っている。
スナイダーはギンズバーグらとともにビート・ジェネレーションの詩人として、1950年代の〝サンフランシスコの詩のルネサンス〟に参加した。スナイダーの詩は人間も岩石も本質的に同一であるという仏教的な世界観を反映している。また、宮沢賢治の詩の翻訳も試みている。