七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第313回 ひとの悲しみ(ブレイク)
Can I see a falling tear,
And not feel my sorrow’s share ?
Can a father see his child
‘Weep, nor be with sorrow fill’d ?
(ひとの涙を見て、悲しみを分かたずにいられようか。
わが子の泣くのを見て、父親は平気でいられようか)
英国の詩人、ウィリアム・ブレイク(William Blake, 1757~1827)の「ひとの悲しみ(On another’s sorrow)」の第2連。1789年に発表したイラスト入り詩集『無垢の歌(Songs of Innocence)』に収録されている。人間には生来、他人を思いやる気持ちが備わっており、人類は神の愛によって救われると歌う。
ロンドン下町の靴下商人に生まれたブレイクは絵画学校を出て銅版画家として身を立てた。やがて文章とイラストを融合するカラー印刷の技術を開発し、自前の印刷機で製本するようになる。
そして、『無垢の歌』で詩人としてのデビューを飾る。この詩集に収められた詩はすべてわらべ歌の伝統を踏まえている。それぞれに自作の絵が添えられ、絵本の体裁をとっている。
この数年後に『経験の歌』の出版が計画されるが、沙汰止みになる。1794年に両詩集を合わせて『無垢と経験の歌』として出版された。
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