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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第285回 我が哀しみを知るものなし(詩経・采薇(さいび))

昔我往矣 揚柳依依 今我来思 雨雪霏霏
行道遅遅 載掲載飢 我心傷悲 我哀莫知 
(昔我が往きしとき 揚柳依依(いい)に 今我来るや 雨雪霏霏(ひひ)たり
 道行くこと遅遅にして 渇きつ飢えつ 我が心傷み悲しむも 我が哀しみを知るものなし)
 
 『詩経』の「采薇(さいび)」の最終節。この詩は、王室や貴族の宴会で奏した音楽の歌詞を集めた『小雅』のジャンルに含まれる。
 <依依>は繁っている状態、<霏霏>はさかんに飛び交う様子。遠征軍の兵士が戦いに敗れ郷里に帰るときの気持ちを綴る。
― 昔、我らが進軍したとき、柳が青々と茂っていた。今、戦いに敗れて帰る身に雨や雪が冷たく降りかかる。足取り重く遅遅として進まない。私の心は傷み悲しむが、この哀しみを知る人はいない。―
 もう一つの解釈は、愛人を失った女性が往時をしのび、兵士の立場に仮託し、孤独を嘆く、とする。その方が、二重構造の詩となり、玄妙である。
 詩経の起源については、周の時代に各地の歌謡を集め、その膨大な詩篇を孔子が311篇に編集したという説がある。
 そのうち6編は題名だけが残り、現在は305篇の詩が伝わっている。その構成は大きく3つのグループに分かれる。
①国風 邶(はい)など15国の民謡。国により邶風、奏風などという
②雅(大雅、小雅) 王室や貴族の宴会で奏した音楽の歌詞
③頌(しょう)   王室の祭祀で使う廟歌の歌詞

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