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短編集まとめ
過去やら日記やらです
規則正しく並べられ 生まれられない卵子達 柔い羽毛の夢を見る 赤い太陽 黄色い花と 銀貨数枚かすめて逃げる 悪戯盛りの幼な子の 青い青い夢を見る 暗い冷蔵庫の中で 生ま…
世界が巨大な冷凍庫に様変わりしてしまった。 入れ小細工の様に、小さなシェルターの様に、この家の、この一室だけが明るく快適な温度を保っている。 外の世界は人間に辟…
暴力的強風に体温を奪われる季節。 潔いほどの急激な冷え込みで、清々しくもある心持ちなのですが、同時に胃の下あたりになんとなく鬱々とした澱渦巻いている。 というよ…
たった一度の流行で擦り切れた言葉達が、今日もひっそり死んでいく。 何もかも、エモーショナルな使い捨て、弱さで武装し盾にする、打ち砕かれたら伽藍堂。 頭の中に連な…
特に理由はなかった。 これと言って何かあった訳でもなかった。 唯、街に数個しか無い高層ビルのひとつから、窓の外を眺めていた時、1つの夢想に取り憑かれてしまっただ…
脊椎に伽藍堂が出来上がる。 毛並みの温もりとカフェラテの匂いの類似性が巡る、夜がただ静かに訪れるから、万年筆のインクはまだ酸化の気配を見せてくれない。 深海魚の…
煮詰めた杏の空から、ぬるく半端に冷やされた糖蜜の様に、夜の空気が降りてくる。 開けたばかりの煙草がミルク粥の様に甘く、風のない薄闇で、目の前に滞留して消える。 …
ふとした時に、この世界と私の世界のズレを突き付けられることがある。 階段を登る時、地面に対して垂直を保って登っていたはずなのに、登り切る頃にはつんのめって転ぶ寸…
カーテンの様に垂れ下がる、重い夏の湿度を掻き分けて、玄関の戸を開ける。 すると解放されたかの様に、体内をアルコールで飽和させた人間特有の臭いが鼻をつく。 湿度で…
ガラスの舌を噛み砕きながら、僕は大変苛立っていた。 この照り付ける痛いほどの日差しの中、忘れて来てしまったのだ、帽子を。こうして焼けたアスファルトの上を歩いてい…
重い扉を開け、外に出て、使い捨てのライターの、小さな小さな火で、静かに煙草に火をつける。 空調で少しばかり冷え過ぎた、明るく乾いた室内から、扉一枚、隔てた外は、…
リスクの3文字を並べ替えて 薬に変える 薬、くすり、クスリ すくりと笑う大衆 大衆と民衆と醜悪な体臭 人間の香りが嫌いで 嫌いで体温は地雷だ 満員電車 人波に上手く乗…
合成されたチェリー味のキャンディで 舌が赤く染まってベタついている。 少し前から、鈍色の雲に 空が覆われ始めていて、 もし、雨が降り始めたら、 雨粒の間引きをしなき…
青々とした空、一輪の雲さえない青空。 その空の隅っこに、薄青色のリボンが結ばれている。 もうすぐ、雨よ、の合図だった。 雨の匂いの、淡い気配すらまだ無く ぬるい空…
雨粒が、やけに酷く音を立てて 窓硝子を何度も叩くので 重い脳を無理矢理持ち上げ 完全遮光の重たいカーテンを ほんの少し指をかけて開ける 二階ほどまで背が伸びた ハナ…
走馬灯のような夜だった。 まるで、走馬灯のような夜だった。 背の高い建物は何もないのに、窓の向こうは深く霞んで、近くの街灯の灯りと、走る車ももういないのに、無意…
2023年1月27日 02:05
規則正しく並べられ生まれられない卵子達柔い羽毛の夢を見る赤い太陽黄色い花と銀貨数枚かすめて逃げる悪戯盛りの幼な子の青い青い夢を見る暗い冷蔵庫の中で生まれられない卵子達未だ楽しく夢を見る氷の大地に大きな獣途中出会ったマンモスの牙の上ではしゃいで廻る赤い赤い夢を見る殻を破られ目が覚める鉄の匂いと火の音と焼ける匂いで終わる夢誰かの身体に飲み込まれ生まれら
2023年1月26日 16:13
世界が巨大な冷凍庫に様変わりしてしまった。入れ小細工の様に、小さなシェルターの様に、この家の、この一室だけが明るく快適な温度を保っている。外の世界は人間に辟易としてしまったのかもしれないな、とも思う。表皮の痛む様な鋭い寒さで、外の人達は大変な事になっているらしい、と液晶の中の顔のないニュースキャスターが話していた。あまり広くはない部屋の、さらに片隅で、出来る限り、体を縮めて呼吸をする
2022年12月20日 02:43
暴力的強風に体温を奪われる季節。潔いほどの急激な冷え込みで、清々しくもある心持ちなのですが、同時に胃の下あたりになんとなく鬱々とした澱渦巻いている。というより、澄んだ空気に取り巻かれて、解像度を無理やり上げられた精神に否が応でも向き合わねばならなくなってしまった。だいぶん間の空いた感情整理の日記を書いてみる。生まれてから何度目かの冬。カウントは簡単に出来るのですが、なんだか数えるのが
2022年11月30日 01:02
たった一度の流行で擦り切れた言葉達が、今日もひっそり死んでいく。何もかも、エモーショナルな使い捨て、弱さで武装し盾にする、打ち砕かれたら伽藍堂。頭の中に連なった引き出し、そっと乱雑に開けて、忘れかけた言葉達を舞台上に引き上げて、雑多に並べたフリークショー。見せ物達の成れの果てが、己であると、今更になって認識する。知る事と認識する事の差異の重さに首を垂れて、悔恨したとて、時計の針は右回
2022年11月14日 23:17
特に理由はなかった。これと言って何かあった訳でもなかった。唯、街に数個しか無い高層ビルのひとつから、窓の外を眺めていた時、1つの夢想に取り憑かれてしまっただけだった。もし、今指先が触れているこの窓が、はめごろしでは無かったら。もし、この窓から身を半分乗り出してみたら。もし、そのまま、地面への瞬間的飛行(あるいは落下とも表せる)が結構出来たなら。アスファルトに辿り着くまでの数秒で何
2022年10月26日 19:38
脊椎に伽藍堂が出来上がる。毛並みの温もりとカフェラテの匂いの類似性が巡る、夜がただ静かに訪れるから、万年筆のインクはまだ酸化の気配を見せてくれない。深海魚の鱗のない身体を思えば、正体の無い自己と強制的に向き合わされるから、回遊するように逃げ回り、辿り着けない砂漠まで行く。逃げ延びた先の砂つぶは、遥か昔は何者かの血肉だったのかもしれない、蜂蜜の甘い匂いが太陽に擬態し、焼ける熱気で喉粘膜が干
2022年10月3日 17:49
煮詰めた杏の空から、ぬるく半端に冷やされた糖蜜の様に、夜の空気が降りてくる。開けたばかりの煙草がミルク粥の様に甘く、風のない薄闇で、目の前に滞留して消える。重い瞼をこじ開ける為に淹れた、濃すぎる珈琲がまだ舌の上で重く香っていて、心臓がまどろみと覚醒に分離してしまった。細波ひとつない、湖の底で、ひっそり息を殺しながら、時が過ぎるのを待っている様な、形容し難い悲しみが、まだ、発作の如く首を
2022年9月9日 17:19
ふとした時に、この世界と私の世界のズレを突き付けられることがある。階段を登る時、地面に対して垂直を保って登っていたはずなのに、登り切る頃にはつんのめって転ぶ寸前まで傾いていた時。朝起きた瞬間に、寝ぼけた頭で、此処がどこなのか把握出来ないあの瞬間。社会の大多数の人間が、自然と習得していく常識的事柄を全く知らないと気付いてしまった時。それと、仲間内で賑やかに騒いでいても、急にスッと世界
2022年8月28日 03:46
カーテンの様に垂れ下がる、重い夏の湿度を掻き分けて、玄関の戸を開ける。すると解放されたかの様に、体内をアルコールで飽和させた人間特有の臭いが鼻をつく。湿度で程よく青い空気に、沈澱する様な重い白が、ゆっくり斑らを作る。どろりとした、重い白を辿れば、アルコール漬けの細胞達に簡単に辿り着けるような強い臭いで目眩がした。その場の空気を吸い込むだけで、酩酊しそうな臭い達が肺を出入りすると、不意に先
2022年7月26日 03:39
ガラスの舌を噛み砕きながら、僕は大変苛立っていた。この照り付ける痛いほどの日差しの中、忘れて来てしまったのだ、帽子を。こうして焼けたアスファルトの上を歩いている時も、燦々と降り注いでくる眩しいほどの殺人的太陽光線。こうなってしまうと、暫く、屋根のある場で、あの日差しをやり過ごすより他ない。僕はゆっくりと路地を抜けて、小さな喫茶店へ入った。古い匂いと、藍色と焦げ茶の空気が心地よかった。
2022年7月26日 02:16
重い扉を開け、外に出て、使い捨てのライターの、小さな小さな火で、静かに煙草に火をつける。空調で少しばかり冷え過ぎた、明るく乾いた室内から、扉一枚、隔てた外は、温室のような湿度と眩暈のする湿度で、空気そのものが酷く重く纏わりつく。夜の暗闇の中で、木々は葉の色を暗色に変えながら、時折申し訳程度に吹く風に、葉をこすり合わせて、ひそひそと音を立てた。壁と扉に遮られてた室内は、安息を約束された柔
2022年7月11日 19:30
リスクの3文字を並べ替えて薬に変える薬、くすり、クスリすくりと笑う大衆大衆と民衆と醜悪な体臭人間の香りが嫌いで嫌いで体温は地雷だ満員電車人波に上手く乗る術上手く滑り込んだつもりになるだけで全て地雷原忍耐は美徳で秘匿なる自己犠牲的マゾヒズム耐え難きを耐えてもそこにあるのは酷く痛む人体存在はぞんざいな錯覚で気付いた時にはもう遅い失格失態に石を投げる言論統治
2022年7月2日 17:11
合成されたチェリー味のキャンディで舌が赤く染まってベタついている。少し前から、鈍色の雲に空が覆われ始めていて、もし、雨が降り始めたら、雨粒の間引きをしなきゃいけないなとどうしようもなく気怠い頭でぼんやり思う。雨垂れを間引きし終えたら、冷蔵庫に入れたままの、ラズベリーゼリーでも食べようと決め込み仕事にかかる準備をする。ぬるい風と雨の匂い、不快な湿度の中で雨垂れを少し
2022年6月30日 00:17
青々とした空、一輪の雲さえない青空。その空の隅っこに、薄青色のリボンが結ばれている。もうすぐ、雨よ、の合図だった。雨の匂いの、淡い気配すらまだ無くぬるい空気が周囲を行ったり来たりしている。時折、金の鱗の回遊魚が、その狭間をゆらりと泳ぎ、きつい太陽光でその鱗を眩しいほどに光らせては消えた。少しばかり経ってからもう一度窓の外をみると空の端に、重々しい暗色の雲が青空の舞台に緞帳
2022年6月6日 23:46
雨粒が、やけに酷く音を立てて窓硝子を何度も叩くので重い脳を無理矢理持ち上げ完全遮光の重たいカーテンをほんの少し指をかけて開ける二階ほどまで背が伸びたハナミズキがのたうつ様に枝を揺らして外は嵐だと教えてくれる雨音、しなる木々の軋み風音、雨粒がアスファルトに落ちる音二重にはめられた硝子越しに本の群れと外を眺める束の間、部屋はシェルターになる古い医療器具、害獣とされた
2022年5月22日 00:12
走馬灯のような夜だった。まるで、走馬灯のような夜だった。背の高い建物は何もないのに、窓の向こうは深く霞んで、近くの街灯の灯りと、走る車ももういないのに、無意味に点滅する信号機の光が、放射線状に、万華鏡のように伸びているのだけが見えた。真新しい建物に、装飾として植えられた、スイカズラの芳香が、鼻腔の奥に張り付くように香っている。麻薬の如き芳香で、麻酔のような芳香。街明かりの万華鏡が、