何者にもなれなかったわたし
何者にもなれなかった。
小学生の頃から夢見た職業は、中学生くらいで他の人からの心無い言葉に傷ついて目指すこともやめた。大学で学んだことを大して活かすこともできない就職先へ入るけれど、ブラックすぎて辞めて、今はとある企業の派遣社員として事務をこなす日々になった。
わたしはずっと名前のある職業の人になりたかった。
わたしにはこれですよ!と胸を張って言えるものが欲しかった。
そういうことを言うと、「人生なんてそんなもんだよ」とか「みんなそうだよ」とか言われるけれど、わたしは「そんなもん」な人生を歩みたくなかったし、「みんな」と一緒も嫌だった。特別になりたかった。
そんなことをうっかり話してしまったことがある。
何者にもなれなかったと。
全部の話を聞いた上で、「でも、君がなりたかったような有名な人が死ぬよりも、君が死ぬ方がよっぽど悲しいよ」とその人は言った。
そこでこのどうしようもない思いが少しだけ軽くなった。
わたしが大切に思う人が、わたしがいなくなったら悲しいと言ってくれるんだからもうそれでいいんじゃないかと思った。
そう思ってくれる友達がいるならもうそれでいい。
必要以上に考えるのはやめようと思った。
未だに、「何者にもなれなかったなぁ」と思って悲しくて仕方ないときはある。これは多分、一生消えないと思う。
そんな時には、またあの言葉を思い出してこれからの日々を生きることにする。