弥立つ #旅する日本語

あの時、あの場所に居合わせなかったら、今の自分はいなかったかもしれない　ーそんな偶然の巡り合わせが人生で何度あるだろう。

遅咲きのひとり旅。方向音痴で地図もまともに読めないくせして、ずっと片想いしていた広島へ足を踏み出した。

宮島ロープウェイで、偶然乗り合わせた同世代の女の子ふたり。ぽつりぽつりと話し始めた私達は、終点に到着する頃にはすっかり意気投合。日頃の運動不足がちょっと悔やまれる山道も、３人で頂上へたどり着いた時の達成感はひとしおだ。

下山後も一緒にぷりぷりの牡蠣を頬張ったり、昼間とは違った表情を見せる鳥居の下を屋形船でくぐってみたり… 計画にはなかった思いがけない出会いが、はじめてのひとり旅に花を添えてくれた。

スーツケースをひょいと携えて身軽にお出掛けするのが難しくなった今も、この旅が運んでくれた素敵な思い出は心を豊かに彩っている。