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君のプライドを守りたかった
2021年7月26日
愛護センターの檻越しに対面した老犬は、
白内障で視力を失い、ガリガリにやせ細り、
皮膚病に侵されていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1714974054737-q1qxtiSDQk.jpg)
「かわいそう」という感情が打ち消されるほどに
老犬の全身から強い気高さを感じた。
「おい!早くここから出せよ!」
フラフラした足で必死に踏ん張り
吠え続ける老犬が
凛とした姿に感じるのはなぜだろう?
かわいそうな程ボロボロなのにな…
![](https://assets.st-note.com/img/1714974667215-dbp45bvDhE.jpg)
気高い老犬
こうしてレスキューしたのが…
「ハクジィ」という老犬だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1714975715145-trjk50OI5m.jpg)
栄養状態と皮膚も日に日に良くなり、
あっという間にフサフサ長毛のイケジィに。
![](https://assets.st-note.com/img/1714975885926-YELLk1IbXe.jpg)
「ホスピス棟」の仲間たちとも、
上手に付き合えるようになったものの…
![](https://assets.st-note.com/img/1714976034279-gNRgJe1eXu.jpg)
プライドの高いハクジィは、
耳が遠いからと大きい声で呼ばれたり、
目が見えないからと気を遣われたり、
赤ちゃん言葉で話しかけられると
「なめんなよ!」ひどく怒っていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1714976776331-d4Y50dM4v8.jpg)
「人間とどう接して良いものか…?」
強い迷いがハクジィから感じられた。
尊重していることがハクジィに伝われば
きっと、ハクジィも変わってくれる…はず?
![](https://assets.st-note.com/img/1714976191330-RrqznJdjvK.jpg)
スタッフやボランティアさん達に
ハクジィとの接し方を事細かく伝えた。
自信に満ち溢れた表情を
ハクジィから奪いたくなかったから…
![](https://assets.st-note.com/img/1714978575082-UFubL66kdG.jpg)
みんなに尊重されてることに
ようやく気付いてくれたハクジィは…
顔をうずめながら静かに甘えてくるようになった。
気難しい頑固ジィサンに、
こんな甘え方されるようになれば…
もうね、「かわいい」の感情抑えるのに必死!!
冷静沈着にハクジィと接することを心掛けていた。
ハクジィのプライドを尊重するために…
![](https://assets.st-note.com/img/1714977333427-nwrHg4o6cY.jpg)
プライドを守るために!
だけど…
認知症からの夜鳴きや旋回が
日に日に増えていった。
![](https://assets.st-note.com/img/1714978033411-8RKJoiEKw0.jpg)
足腰が弱りながらも、自力で食べてきたご飯も…
![](https://assets.st-note.com/img/1714978169314-o1e5Btb42c.jpg)
レスキューして2年…
食事介助が必要になった。
![](https://assets.st-note.com/img/1714978184029-kc4EcS5o30.jpg)
ハクジィは自信を失った…
![](https://assets.st-note.com/img/1714978505697-kvjLDlqpZs.jpg)
自分の力で立てなくなったハクジィは、
悔しさと哀しみでいっぱいだった…
![](https://assets.st-note.com/img/1714979604272-b69ZyeRqm8.jpg)
今の自分を受け入れて欲しい!
寝たきりになろうが、介助されようが、
ハクジィはハクジィなんだ!…と、
プライドを持ち続けて欲しい!
気位ハクジィのままでいて欲しい!
![](https://assets.st-note.com/img/1714979753664-4wwguzisZJ.jpg)
ハクジィは…
2年間過ごしたホスピス棟を離れ
隣接する「療養の家」に引っ越した。
![](https://assets.st-note.com/img/1714985447100-dGd65Hn5dR.jpg)
老いに逆らうことはできないけど…
たとえ作為的な「家庭」であっても、
ハクジィは「家族」というものを
しっかりと感じ取っていた…と思う。
少しずつハクジィらしさを取り戻していくが、
それ以上に気負うことを辞めて
自然体で生きてるハクジィの姿に胸を打たれた。
![](https://assets.st-note.com/img/1714986039172-pjaG49IyM5.jpg)
24時間体制での介護生活の中でハクジィは、
「介護される自分」を受け入れると同時に、
私の存在を認めてくれるようになった。
![](https://assets.st-note.com/img/1714987323044-yIVUOrYo9f.jpg)
ちょっとでも離れようものなら、
体を引きずりながら…
全身に力が入りすぎた結果、
糞尿まき散らしながら
必死に私の姿を探すようになり、
゛アチャ~(-_-;)゛半面、嬉しくもあったが…
![](https://assets.st-note.com/img/1714988119039-L7DFFU2CA8.jpg)
あんなに気位高かったハクジィが、
どんどん赤ちゃんになっていく姿に
これで良いのか?…という迷いもあった。
![](https://assets.st-note.com/img/1714988272267-Vqb1Eushzy.jpg)
ハクジィの自尊心を、
私自身の手で
壊してるような気がして…
![](https://assets.st-note.com/img/1714989171779-07hwkFegVu.jpg)
ターミナル期
ハクジィの介護生活6ヶ月目に突入した頃、
三重県鳥羽市の出張が決まった(それはまた後ほど…)
三泊四日の出張、大丈夫だろうか?と思った矢先、
出張前日、ハクジィは食欲不振と軟便をくり返した。
出張中止の覚悟もしていたが、
出発ギリギリで予想外の体調回復…。
予定通り、三重県鳥羽市に向けて飛んだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1714990344085-KuGqkYZd3n.jpg)
夜間介護を頼んだボランティアさんからは、
「ハクジィ良便で食欲もあり、夜鳴きもありません」
えっ?あの前日のハクジィは何だったんだ?
正直、拍子抜けした。
![](https://assets.st-note.com/img/1714990642206-ntqbiwqVVu.jpg)
だけど…
三泊四日の出張を終え帰宅した直後、
ハクジィの真意に気付かされた。
必死に私の姿を目で追いながら、
明け方まで延々と夜鳴きが続いた。
「いい子にして待ってたんだよ!」
そう言ってるかのように…
![](https://assets.st-note.com/img/1714991246546-7XVCGeCpkg.jpg)
出張帰宅から三日後…
ハクジィは「ターミナル期」(終末期)に入った。
おそらく、出張前日の体調異変が
ターミナル期に入るサインだったのかもしれない。
なぜ、出張当日持ち直したのか…?
なぜ、出張中に異変がなかったのか…?
「非科学的」だと言われるだろうけど、
私に心配や迷惑かけないよう、
ハクジィの意志で自身の心身を懸命に
コントロールしてたような気がしてならない…
![](https://assets.st-note.com/img/1714992287791-XFMo00UOiL.jpg)
看取り期へ…
「ターミナル期」を終え、
「看取り期」に入ったハクジィは
しんどさから解放され、
穏やかで安堵な時間を過ごした。
![](https://assets.st-note.com/img/1714992786017-S8UNPJylOh.jpg)
ハクジィの周りには、
猫たちがいつも傍に居てくれた。
私自身、ハクジィを失うことの悲しみ淋しさよりも、
老衰で最期を迎えられるハクジィは
なんて幸せな子だろう!…と、
前向きな感情が強く、毅然とした気持ちで
ハクジィと向き合ってたのに…
![](https://assets.st-note.com/img/1714994213433-B7tOTNz8EJ.jpg)
お気に入りのネズミのおもちゃを咥えて
こっちに歩いてくる猫のネバー。
ポトン…とハクジィの枕元に置いて
ハクジィの顔を心配そうに覗き込むネバー。
まるで、お気に入りのおもちゃを
ハクジィにプレゼントするかのように…。
![](https://assets.st-note.com/img/1714993274071-0jhyojApOQ.jpg)
ヤラレタっ!!
ネバーの優しさと
ごくごく自然な二人の絆を目の当たりにし、
一気に涙があふれ出た。
嗚咽しながら泣いた。
「老衰は幸せな最期」
自分にそう言い聞かせてただけかもしれない。
老衰死だろうが自然死だろうが
本当は哀しいよ…淋しいよ…
ハクジィを失いたくない!!
これが私の本心のようだ…
![](https://assets.st-note.com/img/1714995070422-8Lq4gGoaJR.jpg)
2024年5月2日 AM3:26
ハクジィの呼吸が変わった。
だけど、苦しんでいる感じはない。
どこか心地良い感情が伝わってきた。
呼吸が変わってからちょうど4時間後…
嘔吐や下顎呼吸が一切なく、
深く息を吸いながら、呼吸が止まった。
なんて穏やかな最期なんだろう…
「眠るように息を引き取った」
この言葉通り…綺麗な最期だった。
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生前、ハクジィがひなたぼっこしてたこの場所で
![](https://assets.st-note.com/img/1714996343689-3WS7nN7NXJ.jpg)
ハクジィは荼毘に付した…
![](https://assets.st-note.com/img/1714995606095-MEzaBYEypb.jpg)
療養の家の犬猫たちも
仲間だったハクジィの収骨に参加…
![](https://assets.st-note.com/img/1714995621839-h2YWOjfANm.jpg)
いつもハクジィを見守ってた長老猫のイチ…
![](https://assets.st-note.com/img/1714995990774-WFG56aNx1f.jpg)
まるでハクジィがソコに居るかのように
今日も見守ってくれてるよ…ハクジィ!
![](https://assets.st-note.com/img/1714996007396-QrtF6kejU2.jpg)
出張に向かったことに
一ミリの後悔もありません。
むしろ、出張に行って良かったと思います。
あの出張がなければ…
ハクジィの優しさと凄さに気付かないまま
終わってたと思います。
半年間の介護生活で
赤ちゃんになったハクジィだけど、
気高く男気のあるハクジィ本来の姿は、
何ひとつ失っていませんでした。
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