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2%しか効果のない性犯罪防止プログラム

性犯罪防止プログラムについて書こうと思う。現在、全国77の矯正施設のうち21の矯正施設で性犯罪防止プログラムが行われている。私の加害者も性犯罪防止プログラムを受けるために、三重刑務所から川越少年刑務所に移送された。

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年間のプログラム受講人数は約500人から600人で性犯罪で起訴され、実刑になった人すべてが受けられるわけではなく、犯罪傾向が進んでいる、再犯の恐れがある、テストで認知の歪みや理性で自己の欲求を抑えることが難しい人が対象となる。

行われているのは、約7人から8人のグループを作り体験や思いを話す。そのグループに2人の専門家(公認心理士など)が付く。

個人に関しては自己内省をして、認知の歪みであるとか社会に出たときに加害行動をしたくなったときどう対処するかなどを専門家と話し合う。

60分を1単位として、全てを受講する場合65単位となる。まず、それだけの時間と外部の専門家を招いて、贅沢なほどに内省をする。最高で8か月から1年を要する。

性犯罪に手を染めてしまうという人の傾向と言うのはある程度、犯罪心理学によって表されている。人間の心理はフロイト心理学でよく見る、意識、前意識、無意識の三構想で構成されているという。意識と言うのは私たちが自身で感じる感情である。前意識は考えたら想起できるもの。無意識は自分自身では感じられない奥底にあるもの。その意識、前意識、無意識をつなぐものが「超自我」と呼ばれるもので、無意識の世界が意識の世界に上がってきたときに善悪を判断させるものが超自我である。そもそも超自我の具合がおかしい人もいれば、物質によっておかしくなってしまうという場合もある。

これはどの犯罪にも言えることだけれども、超自我が正常でないと「この行動を現実に移したらどうなるか、相手はどう思うか、その後にどうなるか」と言うことが考えられず、理性で抑えられないことによって犯罪を犯してしまう。性犯罪はその傾向が非常に高いのだ。要するに、「理性」が働きにくいパーソナリティを有しているということ。

自分の感情を伝えることが苦手であるとか、この世の中の不条理なこと(休日出勤や八つ当たりされたなど)があった時、通常であれば人や自分を傷つける方法ではなく、音楽や映画、運動などでその現実も仕方がない、相手にも事情があっただろうなどと昇華させてゆく。その不条理に対する処理に歪みが生じ「俺(私)が嫌な思いをしたのだから、他の人間もしたって仕方がない」と言う気持ちから、上記の理性との具合に異常が生じてしまう。

その結果、自身の犯行は合理的であり被害者に何らかの落ち度を作り上げて、犯行を起こす。性犯罪の場合は、「被害者がこちらを見ていたから、気があると思った」「俺(私)のような人間にやさしくしてくれたから気がある」と言うように、冷静かつ客観的に見た場合、ありえないが「だから犯行してもいい」と合理化してしまう。

犯罪者の多くは敵意帰属バイアスと言うものがあり、挨拶をしたら相手から返事がなかったなどの場合、通常は「聞こえてなかったかな」や「忙しいのかな」と思うが、このバイアスが働いた場合「どうせ俺(私)のことなんて、目にも入ってないんだろう」や「わざと無視したに違いない」と思い、敵意を生んでしまう。

と言うような歪みを性犯罪防止プログラムで正常な認知にしていこうということを矯正機関は行っている。

性犯罪に女性が少ない理由としては、まず性差が存在している。男性ホルモンが起因し、性衝動や暴力性が高まるということは知られている。また、種の保存と言う本能が重なり起こることがある。また、多くの場合は自己の力よりも弱い人間を腕力でねじ伏せることによる快楽を同時に求める。女性は比較的、男性よりも感情を表に出す言葉での表現をするということが脳の構造上優位であり、争いを好まないそういった観点からも女性の犯罪者は少ない。このプログラムの最終的に行き着く理想的な着地点は「被害者の痛み、人の痛みを自身に置き換え共感できる能力」をつけることである。

一度、性犯罪が成功し検挙されなかったという経験をすると、その本人は自身の力によって相手を服従させることが出来たという悪い成功体験を得ることになる。その結果、その万能感を感じたときに脳内から分泌される物質により、その万能感を感じたいと犯行を繰り返す。そして悲しいことに、性被害を警察に申告できなかった暗数の人たちが生まれる。1人の犯罪者によって性犯罪被害者が複数人生まれるが、実際に検挙された時には1人の容疑での逮捕起訴となるため、本来すべての被害者が申告していたら罰せられたであろう刑よりも軽い刑が言い渡されてしまう。多くは、1回目の犯行では執行猶予となるため社会に性犯罪者であるということを知られることなく紛れてゆく。性的嗜好の問題は依存性があり、盗撮や痴漢などをしている際のばれたらどうしようというすれすれのスリルに依存してしまうこともあれば、服従させて性的被害を与えることでしか充足できないなどの病理的な一面もある。性依存の状態で仕事中にもアダルトなことを考えて、考えをやめようと思ってもやめられない、自慰行為をやめれられないなどがある。性と依存と言うものはとても深くつながっている。それを「病理的」と本人が理解をして受け入れ、治療をすることはとても困難な状態であるのが事実だ。

また、性犯罪は窃盗や詐欺の様に実際に「物として存在するもの」を奪っていない、人の尊厳を奪っている。形として奪っていないため、犯罪としての意識が低く、また合理化し「相手も抵抗していなかったし」などとなるが、単に犯行に恐怖を感じ抵抗したら命の危険を感じたため抵抗ができなかったことを合理化し「抵抗されていない=受け入れていた」と取るような思考に至る。

では、実際に性犯罪防止プログラム(通称:R3)で性犯罪が防げているのかと言う点である。

法務省は欧米で性犯罪防止プログラムが高い再犯率を防いでいると言っているが、性犯罪防止プログラムがどれだけの再犯を防いだか…と言うと

2%

である。私はこの数字を低いと感じる。外部機関の専門家や移送などの税金を使用し、最長8か月から1年、週2回のプログラムで得られたのはたった2%なのである。

そもそも、アイデンティティの確立した人間を1年程度の期間で認知の歪みや共感性、衝動を抑えるなどの行為が得られるのだろうかと言う点である。これが2歳児、3歳児などのアイデンティティの確立をしていない年齢であれば、その子の1年はとても大きなものなので可能かもしれない。そもそも、本人が「二度とこのようなことをしたくない、してはいけない」と言う強い決意のもとでなければ、結果的に「刑務所がやれっていうから、処遇のためにもやっとくか、その時間は懲役作業しなくていいし」と言う程度の人間が多いのではないかと思う。その場さえしのげればいいという、犯罪者の多くが思うこと(逮捕されなければいい)などの受動的または、プログラムを受講することで内省することよりも処遇のメリットを考えてしまった場合は、このプログラム自体が税金の無駄なのである。

法務省はこの2%を高いととらえているのかわからないが、もっと実社会に出たときに再犯を犯してしまったらとても生きずらい世の中にした方が、再犯は減るのではないかと思う。プライバシー権の問題から性犯罪者の仮出所中のGPS装着も仮出所に限れば意味はないと思う。性犯罪を犯したら、出所後すぐにGPSを一生装着されるくらいが必要ではないかと思う。他の国では薬物によって、性加害を防ぐという取り組みがされているがそういったことは恐らく私が生きている限り日本で取り入れられることはないだろう。

1年そこそこで、「こんなに被害者は苦しんでいたのか」と強く認識し、猛省する人間は、初めから「もしも性犯罪をしたら、もしも自分の大事な人が同じ目にあったならば」と共感性をもって考えるだろうし、罪を犯すことはないのだ。

累犯の性犯罪者が出所して、また新たな被害者を生んでいるのは紛れもない事実で、刑事公判で私の加害者の場合は、

「前回の強制わいせつの公判の際に、レイプ物のアダルトビデオを見ない、飲酒をしない、双極性障害の治療をするなど約束しましたよね。でも約束を守らず、あなたはレイプ物の動画を犯行直前の時まで見ていたね」と。

結局のところ、加害者が反省と言うことを心の底からすることはないのである。どこまで行っても「捕まったこと自体が運の悪いこと」「あいつが警察に言うから、逮捕された」と自身の犯行自体を自身で悔い、責めるという心理の動きは私には感じられなかった。また、犯行理由も自身の心の弱さであるとか虚栄心ではなく、不景気な日本社会であるとか学校での性教育の問題と外部に問題を置いている。

この人間が税金を割いて性犯罪プログラムを受けたところで一体何が変わるのかと思いながら、処遇状況を見ていた。加害者は死亡したので、再犯をすることは現実ないが、仮に生きていたとしたら確実にまた外部の原因にして自己の性的欲求を満たすために人の尊厳を奪い痛みを与えることは言うまでもない。

日本政府も努力しているように言うが、実際に努力をしているのであれば、矯正施設に入所していた犯罪者が出所したのちまた、再犯を犯すということの件数が異常であると考えるのがふつうであるし、だとすると矯正施設の運用や仕組み化に問題があると考えるのが相当だろう。とりあえず、言われた刑期の間、入れておくということや何のエビデンスがあるか分からないけれども、性犯罪防止プログラムを高い税金でやってみるというパフォーマンスにすぎないと思っている。

性犯罪者(性犯罪に限らないが)が被害者の立場に立ち、どれだけの痛手と苦痛を負い生きていくのかということを想像することもないだろう。そこが共感性の欠如というところになるのだが、それを実際に正しい認知にしようと思うと出所後も性犯罪に特化した心理的アプローチを自費で払う必要がある。

民間では

と言う機関があるが、初回は無料

アセスメント(心理検査など)が4時間で22000円

グループ認知療法プログラム(毎月1回3時間1クール12回)平日27500円、土日29700円

である。医師によるホルモン療法もあるようだが、性犯罪を犯した人間が月に30000円かけて、自身で治療をするだろうか?私はその治療を受ける人は本当にごくごくわずかだと思っている。犯罪者の性質上、無資力がゆえに犯罪を犯す、衝動性が高いから職を転々とするなどで生活自体が怪しいのにこれだけの費用を捻出できるだろうか。この機関では抗アンドロゲン剤(前立腺肥大や前立腺がんに保険適用)の薬を飲んだ275名を対象にした結果、抗アンドロゲン剤を服用していない患者の再犯率は3分の1が再犯をし、抗アンドロゲン剤を服用していた場合、再犯は皆無だったという結果だそう。

もし仮にこれが科学的にエビデンスが275名でなく、もっと多くのサンプル数で得られたら、プログラム云々よりもその抗アンドロゲン剤を服用させる、いわゆる科学的去勢をした方が安価であるし2%しか再犯を防げないプログラムをやるよりも結果的には再犯が防げるのではないかと思う。現在、適応症が前立腺肥大、前立腺がんに限られているようなので、自費診療となってしまうだろうがそこを公費で負担したほうが外部機関を入れて、時間をかけてプログラムをする費用よりも多少上がったとしても、再犯がない時点ではプラスになると思わないだろうか。しかし、1つ問題としてあるのは、その薬を性犯罪経験者が継続的に医師に掛かり毎日服用するのかと言う点である。恐らくGPSをつけたところでというところになると思う。仮に、国民が性犯罪者のいる場所をGPSで閲覧できるとしても「だからどうしたらいいの、隣に引っ越してきたけど、こちらが引っ越さないといけないの」など「どうしたらいいわけ」が起こると思う。性犯罪の前科がある人は月2回など、医師の診察を受け薬を服用することを義務づけることの方が遥かに再犯防止につながるのではないだろうか。運転免許の様にスピード違反で捕まったら、罰金と言うように、約束を反故にした場合は罰金などの通わないことによって起こる不利益を込むことはできないかと考えた。

犯罪の被害に遭った人たちが、その被害によって負った深い傷の治療のために本来であれば飲まなくていい向精神薬やカウンセリングの負担を負っているのが現状である。その費用は被害者が持つことになる。そのような、加害者は守られて出所後は更生したものとみなすけれども、被害者はいつ治療が終わるのか通常の生活を得られるのかもわからないままに、日々を生きている。その矛盾した不条理を被害者にばかり負わせるのではなく、塀を出た後、執行猶予判決を受けた後も加害者には強制的に再犯を防ぐシステムを作らなければ、一生経っても終わらないことになると私は強く思う。



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