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「ただいま」の声と表情
小3の娘Tが学校から帰宅した。
「たたいま…」顔を見ると、泣きべその一歩手前の顔をしている。
「おかえり。どうかしたの?」
「なんでもないよ」
ドアを手荒に開け、いつもは大切に扱うランドセルを投げるように置く。
手を洗いうがいをし、ソファに座り込んだ。
「お昼できてるよ、食べよう」
「まだお腹空いてない」
そんなわけはない。午前中のみ授業で、給食はなかったのだ。
私も隣に座って、彼女を膝に乗せ、抱きしめた。
すると、しくしく泣きながら、
「先生ひどいんだよ!普通3位まで賞状もらえるでしょ?なのに、2位までしか無かったの。」
冷静に聞くと、この言葉は初めから終わりまで突っ込みたいところだらけなのだが、カウンセリングのセオリーどおり、まず黙って聞く。
そもそもなんの話かさえわからないので、ひとつひとつ紐解くと、
・体育でポートボール大会をを6チーム対抗で行った。
・自分のチームは3位だった。
・オリンピックとか、3位までメダルもらえるのに、2位までしか賞状が用意されていなかった。
・だから、先生ひどい。
というのがTの言い分。
膝に乗せて向き合ったまま、
・3位まで賞状がもらえるのは、「普通」で「絶対」なのか?
・賞状を用意していなかった先生は「ひどい」のか?
と、意見交換をした。
テレビで放送されるような、国際的な大きな大会は、確かに3位まで表彰台が用意されているけれど、それが全世界で通用するルールなのだろうか。
あなたが知らないだけで、トップしかお祝いされないものも、5位まであるものもあるだろう。
本来体育の授業で行うものに、賞状なんてなくてもいい。
「優勝は1班でした、おめでとう!拍手」でも済む。でも先生はみんなのために賞状を作って下さった。
お母さんはそれで充分と思うけど、あなたはどう思う?
そこまで話したところで、Tのおなかの虫が鳴いて、お昼にしたのだが、このやりとりの中に、既にTのなかに無意識の価値観が生まれていることを感じた。
この日は、私にも余裕があり、気づくことも、話す時間もあったけれど、それがなかったらどうだったろう。
小学生のことだから、お昼食べてゲームでもすれば忘れてしまうだろう。翌日まで引きずるなんてことはないと思う。
でも、不要な思い込みをそのままにすることにより、
その枠からはずれたものに対して、やたらと腹を立てる毎日は楽しくない。
教育とは、価値観の継承と創造だと改めて思った。