埼玉西武ライオンズのドラフトポイントを”今のチーム状態”から見る|2023ドラフト考察
2023年振り返り
今シーズンのライオンズは65勝77敗1分の5位に終わった。
WBCで骨折強行出場し日本の世界一奪還に貢献した源田の不在、不祥事で早々にリタイアした山川、オープン戦で受けた頭部死球から出遅れた助っ人ペイトン。
得点力不足が最たる課題の野手陣が開幕から厳しいスタートになってしまった。
最も存在感を出したのが40歳の大ベテランおかわり中村なのだから、今年もか…という結果に。来年もお願いしますおかわり様。
助っ人マキノンが適応し攻守に必要不可欠な存在となったのも良かった。
出戻りとなった佐藤龍が着々と信頼を得て、途中からはスタメンに定着するまでになったのは嬉しい誤算。
中盤以降で頭角を現した渡部、ルーキーの蛭間。昨年1軍でノーヒットに終わり崖っぷちの西川もプロ初本塁打などアピールできた。来季に向けてレギュラー取りに期待の若手中堅が見つかったことが最低限の収穫。
今年の成績は投手陣の頑張りでなんとか持ちこたえたと言っても過言ではない。
高橋光成、平良、今井の二桁トリオ。9勝の隅田も左のエースとして覚醒気配。
守護神増田の大不調がありながら、ルーキー青山が開幕から1年間1軍で投げ続け、平井や佐藤隼の勝ちパがブルペンを支えた。育成から上がってきた豆田や昨年はチャンスに恵まれなかった田村もしっかり1軍で結果を残した。
投手陣は来季も期待できるだけに、野手陣から芽が出て花開く選手に出てきてもらいたい。
そんな中、目下ドラフトでは投手こそ最重要課題と考えられるので、各ポジション別にライオンズの現状を見ていきたい。
投手
多彩な先発陣
遂にエースと呼べる段階に成長した高橋光成。10勝8敗という数字に物足りなさはあるが、今のチーム状況を考えれば及第点。
明確にメジャー挑戦を訴えた中、メジャーで通用するために明らかにピッチングスタイルが変化。春先から素人目に見てもこれまでとは別人のようなピッチングをしており、何よりもストレートの球威アップには目を見張る。今季は4完投2完封と、昨年の0完投から一気に向上。勝ち星こそ減ったが3年連続二桁勝利と最低限の数字は残した。あとはこれを継続し、何か一つでも圧倒的な成績を残してメジャー移籍してもらいたい。
先発転向した平良はチームトップの11勝。先発でも十二分に通用することを見せつけた。将来的なメジャー挑戦のために来季はさらなる向上をしてくれるはず。
武隈の魂を継いだ今井も初の二桁勝利を達成。遂にローテーションを任せられる投手へと進化した。
隅田は序盤こそ苦しんだが、途中から覚醒。9勝をマークし、2完投1完封とエース左腕への一歩を踏み出した。
サブマリン與座は昨年の10勝から2勝と大きく勝ち星を減らした。とはいえ登板した際の安定感はあり、防御率も3.69に収め、十分に先発として戦力になることは示した。打たれ始めた時に捻じ伏せることはできないので、通年で二桁を期待するのではなく、他の投手とも併用しながら先発として少しでも多く登板し1つでも多くの勝ち星を積み上げてほしい。
松本は6勝止まりで2年連続で二桁を逃す結果に。同じような成績が続いており、良くも悪くも安定してきている。来年も先発として計算はできるが、貯金は計算できないという難しい立ち位置。他の投手が台頭してきている中、現状を脱却する何かがないと先発ローテの座は危うい。
渡邉勇がシーズンラストに2登板。好投を見せ1勝を上げることもできた。期待されていた昨年は打ち込まれ早々に2軍へ。2軍でも打ち込まれるケースが目立ち、再昇格することはなく終わった。今季は2軍で先発として5勝。来年に向けた1軍テストで見事に結果を出してアピールに成功した。
二桁カルテットも現実的な先発陣だが、層は決して厚くはない。羽田や黒田や菅井といったファームで育成段階の投手が多く、次に戦力として見込めるのは宮川や浜屋になってくる。
やはり先発タイプの助っ人補強が必須になってくるのと、二桁トリオ全員がメジャーへの意思を持っていることから先発投手のドラフト指名は優先事項。
盤石のリリーフ陣にも懸念
守護神増田が序盤から打ち込まれ、絶不調に終わる苦しいシーズンとなった。にも関わらず安定したリリーフ陣を形成できるのが今のライオンズ。
ルーキー青山が開幕戦で抑え抜擢、FA移籍した森に痛恨の一発を浴び抑え失敗デビュー。しかしその後も様々な場面で登板し少しずつ結果を残し、終わって見れば開幕から最後まで1軍で投げ続けた。
セットアッパーとして平井、佐藤隼がフル回転。平井はチーム最多54試合登板し32HPと1年間支えた。FA権を取得したが、球団は全力で慰留してもらいたい。佐藤隼も貴重な左のリリーバーとして47試合登板。夏場以降疲れが見え始めたのか、打たれるシーンも度々見られたが、この経験をさらなる成長の糧にしてほしい。
本田圭は安定のピッチングを見せ、昨年の覚醒がフロックではないことを証明した。困った時は先発してもらうことも可能で、一時の平井のように起用の選択肢を増やしてくれる貴重な存在。
昨年新人王獲得した水上は状態が上がらず、23試合登板に止まった。後半はだいぶ本来の姿を取り戻しつつあるので、来年は開幕から好スタート切れるように期待したい。
森脇も31登板防御率1.95と大きな働きをしてくれた。しかし右上腕動脈閉塞症による手術を受け、来年は育成契約でリハビリに専念することになる。
リリーフ左腕の佐々木は出遅れながらも21登板防御率0.87という成績を残した。しかし左ひじのトミージョン手術を受け、育成契約に切り替えリハビリ専念となる。
育成から昇格した豆田は16登板防御率0.59と素晴らしいアピールを行った。バイオメカニクス担当の武隈からのアドバイスで覚醒。大柄ではないものの強い直球を投げ打者を圧倒する。昨年までの平良のようなリリーフとして来年は期待したい。
後半に1軍でチャンスをものにした田村も来年の重要戦力。24登板防御率1.52の結果を残した。昨年は厚すぎるリリーフ陣の壁に阻まれ、2軍で結果を出しても1軍のチャンスすらまともになかった。今年は2軍の抑えとして結果を残しチャンスの時を待ち、待望のチャンスでアピール成功。
リリーフ陣は豊富に見えて、森脇佐々木が離脱するというカツカツな状態。若手中堅の台頭があれど、リリーフという特性上いつ怪我で離脱するかわからない。また増田水上のように状態が上がらないという投手も出てくる可能性がある。助っ人は勿論のこと、ドラフトでも4位~5位あたりで即戦力リリーバーの獲得は行いたい。
捕手
物足りない正捕手争い
オリックスへFA移籍した森の穴を誰が埋めるのか。”実質”正捕手となったのは2年目の古賀で、100試合出場し打率.218と2本塁打を記録。課題の打撃も徐々に向上傾向。要所で打つ場面も増え、来年さらなるレベルアップには期待をしたい。守備では盗塁阻止率.412とリーグトップ。元々強肩ではあるので、精度や投手との連携次第で盗塁阻止率が上がること自体は不思議ではない。それよりも、見ていてイージーミスがまだ気になるので、その改善が必要。打撃・守備どちらもまだ物足りないので来年は”正捕手”へと進化してほしい。
対抗となるのが柘植で59試合出場して打率.184に終わった。古賀ともっと競い合って欲しかったが、結果的には2番手捕手として固まってしまった。
育成から支配下に上がり1軍で爪痕を残したのが古市だ。29試合打率.160と数字だけ見ると物足りないが、2軍では40試合に出場し捕手ではチーム内トップの打率.319を記録。徳島から入団して2年目の若手捕手が急成長を見せているのは楽しみ。しかし、本来まだ3軍で育てていきたい段階の選手である。来年は2軍の正捕手としてさらなるレベルアップをし、1軍の正捕手争いに加われる存在になってほしい。
来年は野田、育成の是澤あたりが3軍でスキルアップ。育成再契約になるであろう牧野はシーズン中の支配下を目指し一気に1軍まで食い込みたい。岡田は果たしてどの程度プレーができようになるのか不透明。柘植も手術をし開幕には間に合いそうだが不安材料にはなる。
現状からすると、すぐに実戦で起用できそうな捕手が欲しい。即戦力捕手を1人、育成で1人くらい指名する可能性があるか。と考えていたが、楽天戦力外になった炭谷の獲得調査報道が出た。バックアップとしても若手を支える存在としてもこれ以上ない捕手なので、是非獲得してもらいたい。炭谷獲得を前提にするならば、下位から育成で高卒もしくは20代前半の捕手を指名すると考えるのが自然か。
内野手
おかわりと助っ人頼みの一三塁
山川不在の中、最も気を吐いたのが40歳の中村だ。88試合に出場しチームトップの17本塁打、打率.258を記録。おかわりサマサマヤー。
助っ人マキノンも序盤こそ物足りなさが強かったが、徐々に日本の野球へ適応を見せた。終わって見ればチームでは外崎と共に2人しかいない規定打席到達。打率.259に15本塁打。何よりも一塁守備で好プレーを連発しファンをすっかり虜にしてしまった。日本に慣れた来季はさらに向上も見込めることから、なんとか残留させたい助っ人である。
ユーティリティとして見られていた佐藤龍も、後半の打撃絶好調で一気にレギュラーへ。凡ミスはあれど、果敢な守備でチームを盛り立てた。
渡部健もおかわりが怪我で不在の中貴重な働きを見せた。本塁打6本は物足りないが、これは来年への課題。1軍定着して二桁本塁打は期待したい。
トノ・ゲンの牙城は固い二遊間
唯一1年間レギュラーとしてチームを支え続けたのが外崎と言っても過言ではない。136試合で打率.260本塁打12盗塁26と走攻守で中心的な活躍を見せた。来年も同様の活躍は期待。
源田はWBCでの骨折から復帰後、ショートの絶対的存在として君臨。100試合出場して打率.257と、なんだかんだで安定した結果を今年も残してくれた。来年は開幕から万全の状態で臨んでほしい。
控えとして貴重な存在が平沼だ。内野はどこでも守り、打撃も悪くない。たまにスタメンで出ると固め打ちを見せることも。走攻守すべてにおいてユーティリティプレイヤーとして、常時1軍にいてほしい存在。
ルーキーの児玉は源田不在の序盤ショートとしてチームを支えた。来年以降も渋い活躍を見せることができるか。
シーズン終盤に山村がプロ初本塁打から2戦連発とアピールに成功。大型セカンドとして育っていってほしいが、状況次第ではファーストも。
全体的にレギュラーの存在が高く、次世代の選手が不足気味。サードに関しては佐藤龍や渡部、ブランドンや野村といった育成途中の選手もいる。二遊間は小粒な選手が多く、滝澤も将来絶対的な存在になるかといわれると難しい。そろそろ次世代の絶対的ショートのレギュラーになれるような、大型ショート獲得を目指したい。また、ポジション問わずスラッガータイプの選手は欲しいところだ。
外野手
そしてレギュラーはいなくなった
アガサ・クリスティーならぬライオンズ・クオリティ。
愛斗の不振、金子侑の不振、栗山も序盤はからっきし。そもそも栗山にレギュラーを期待するのがおかしいのだが…。
期待された鈴木は72試合で打率.240本塁打0と1.5軍を抜け出せず。若林も36試合の出場に止まってしまった。岸潤も要所で活躍を見せたが安定感に欠き打率.209に終わる。崖っぷちの西川は41試合.227だがプロ初本塁打をマークするなど、終盤はアピールできたといっても良さそう。来年はレギュラー奪取に期待が懸かる。
内野登録の長谷川も1軍では外野として起用されており、来年は登録も外野手に。外野1本勝負でレギュラー奪取へ期待。
ルーキーの蛭間は中盤から1軍昇格すると、打撃好調時は3番打者としても起用が続くなど、近い将来のレギュラーになってくれそうなポテンシャルを見せつけた1年目となった。
レギュラーと言える存在が誰一人おらず、助っ人も外野手を補強したいところ。一方で1軍の戦力になっている世代はみな近く、ドラフト上位での外野手指名は不要。強いて言えばスポットで活躍できそうな社会人外野手を下位で指名する可能性くらいか。3軍で育てるための外野手の獲得は育成指名で目指したい。