もし他人の行動原因が知りたくなったらこれを軸に考える「批判的思考」+12
クリティカルシンキングシリーズの続きです。(+10,+11)
前回までで、原因推測の原則について説明しました。必要原因や十分原因、一致法や差異法などです。
ここからは、他人の行動を理解するために必要な「原因の帰属」について解説していきます。他人の行動の原因を判断するときに、気をつけるべき点について考えていきましょう。
こんな問題が起きたときの原因はなんだろう?
因果関係は、なにも必要原因や十分原因だけを考えれば良いわけではありません。その原因が、内的か外的かも重要な区分の1つなのです。
たとえば、15時にAくんと会う約束をしていたのに、相手が連絡なしにキャンセルしてきたとしましょう。このとき、あなたはどんな原因を思い浮かべるでしょうか。
起きた結果に対して、このような原因を考えるかもしれません。しかし逆に、次のように考えることもできますよね。
この2つの違いは、原因が内的か外的かで区分できます。
内的原因とは、その人の性格や気持ち、行動の特徴などを指します。外的原因とは、その場の環境や他人からの接触などを指します。
とくに他人の原因を考えるとき、その原因がどこにあるかを考えますよね。このときに行う判断を「原因帰属」と呼びます。つまり他人の行動の原因を考えるときは、帰属を内的と外的に区分する必要があるのです。
ドタキャンしたAくんの例で考えれば、内的と外的両方を考慮に入れれば、考え方が変わっていきますよね。
原因帰属を探すツール「ケリーの立方体」
原因を推測して判断するとき、内的と外的で区分する大切さを説明しましたが、この2つを区分しただけでは原因を判断しきれません。ドタキャンしてきたAくんの例で考えても、原因は探そうと思えば溢れてきます。
ではどのように原因を探せばいいのか、その方法が「ケリーの立方体」です。原因帰属をするときに便利な「フレームワーク」と考えるとわかりやすいです。
ケリーの立方体とは、「人物・対象・状況」を軸に原因帰属を行っていくツール。この3つを多角的に観察できれば、信ぴょう性の高い原因を突き止められるわけです。
ここで「クレヨンしんちゃん」の登場人物を使って例を出してみましょう。
しんちゃんは、きれいな女性にはすぐに声をかけるプレイボーイです。そんなしんちゃんですが、ある1人の女性、ナナコさんには紳士に対応しています。道端でナナコさんに会っても、他のきれいな女性たちへの振る舞いはしません。頬を赤くして緊張しながら会話するのです。そしてナナコさんの頼みならなんでも引き受け、褒められると何よりも喜びます。
しんちゃんは、なぜナナコさんには紳士な対応をするんでしょうか。ケリーの立方体を使って考えてみましょう。
しんちゃんについて考えてみると、このような内的な原因が浮かび上がります。しんちゃんの性格や行動原理を知っている人は、このような原因があると判断するでしょう。
次はナナコさんやほかのきれいな女性たちの振る舞いについて考えてみます。しんちゃんがナナコさんに紳士的な対応を取るのは、ナナコさんもしんちゃんを好きだと思うような振る舞いをしているかもしれません。だから、しんちゃんも本気になっていると。
ちなみに、人物と対象の原因は相互に交わっている点には注意しましょう。たとえば、しんちゃんがナナコさんに猛烈アタックしたから、ナナコさんがしんちゃんに好意を持ったとも考えられます。
人物と対象が組み合わさった原因もたくさんあるのです。
3つ目に、しんちゃんとナナコさんたちを囲む環境について考えてみます。しんちゃんがナナコさんに紳士な対応を取るのは、ナナコさんの競争率が高いからかもしれません。それかしんちゃんは過去に、ナナコさんに一目惚れしていた事実があるかもしれませんよね。
このように、状況からも原因を判断できるのです。
ケリーの立方体をさらに活用する
人物、対象、状況の3要素で分けて考えるだけでも、多角的な原因帰属が行なえます。しかし信ぴょう性の高い原因にはまだまだ遠いでしょう。そこで行いたいのが、3つの要素を立方体にして、数値で測れる要素を付け加える作業です。
しんちゃんの例で考えてみます。
しんちゃんだけがきれいな女性に声をかけており、ナナコさんに好意を持っています。つまり他の人はしんちゃんと同じ行動は取らないので、一致性は低いのです。
きれい女性たちには口説きつつ、ナナコさんだけに特別な求愛行動をしています。つまりしんちゃんの好意はナナコさんのみに向けられているので、弁別性が高いのです。
しんちゃんは、偶然会っても連絡して会っても電話をしても、すべての状況で一貫した行動をナナコさんへ行っています。ふだんは興味がないわけではなく、ずっとナナコさんが好きなのです。つまりしんちゃんの一貫性は高いと言えます。
立方体で考えてみると、このようになります。正直、立方体で考えるよりもマインドマップを使ったほうがラクなので、基本この図はいらい気がしています。これは「立方体ってそういことか!」と納得するためのイメージ図ですね。
原因帰属の判断チャート
ここまででしんちゃんの行動が、低い一致性・高い弁別性・高い一貫性を持っているとわかりました。しんちゃんが、ナナコさんを特別に考えているのはわかります。
では最後に、一致性、弁別性、一貫性が組み合わさったパターンの抽出をしてみましょう。このパターン分けをすれば、しんちゃんの原因の帰属が内的か外的なのかわかるはずです。
もちろん行動の要素は以下のようにMECEになっていますから、内的も外的も使っている可能性はあります。
ケリーの立方体を使ってつくったチャートがこちらです。
このチャートにイエス/ノーで答えていくと、しんちゃんの原因は、内的で安定しているとわかります。このようにケリーの立方体を使うと、相手の気持を理解しやすくなるのです。
まとめ
ケリーの立方体を頭の中でフローチャートにできると、ムダに悩む機会が減りますし、多角的に物事が見れるようになるのでおすすめ。自分の行動を振り返るときにも使えるフレームワークなんで、ぜひ使ってみてください。
【考えてみよう】
街を歩いていたら、スマホを見ながら微笑んでいる女性がいた。そのままうれしそうにスマホに釘付けになっている。彼女の行動原因を「一致性・弁別性・一貫性」の3つの次元で考えてみよう。どこに原因があるかもわかるとなおよし。
動画解説を今すぐ観る↓↓↓
クリティカルシンキング「原因帰属:ケリーの立方体」+12の解説