『胡漢英雄記』序章・ライナーノーツ
おれだ。そういうわけで、ライナーノーツだ。この作品は、おれが逆噴射小説大賞で最初に書いたものであり、note海に異世海転移して最初の記事ということになる。思い入れがそこそこある。だいたいのことは名鑑に引用した最初のライナーノーツで書いてしまった。ここではだらだら書く。
ヘッダー画像は南シベリアのパジリク古墳群の壁画だ。匈奴やスキタイとなんか関係があるだろう。スキタイはもともとこの辺にいた連中らしい。
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なぜこれを書いたか?直接的にはエピロワで冒頓単于とか書いてて匈奴づいてたせいだ。あと蒼天航路と遊牧民がすきで、ヒストリエのトラクスをかつてハルケギニア海に召喚した影響もあるかもだ。冒頭のエピソードは晋書にある。印象的で、始まりにふさわしいと思った。完全におれの趣味だ。
魏書(北魏・東魏の歴史書)にも石勒伝はあるが、話は詳しくない。後から話を盛られたのだろう。あと魏書が他の政権をヘイトしているためもある。
おまえは三国志を知っているか?すべての男は三国志で最初に歴史を知る。それは真の男たちが戦い、漢の中に漢ができる話だ。漢中王、蜀漢だ。これは結局魏に滅ぼされ、魏は晋に簒奪され、呉は晋に滅ぼされて天下は再統一される。だがその後に何が起きたか、知っているやつは少ない。これはその時代を描いた歴史書をもとにしたパルプ小説だ。同じような小説や漫画は探せばどこかにたくさんあるだろうが、おれは寡聞にして知らない。
主人公となるバイ、石勒は、キンメリアのコナンを地で行くような英雄で、蛮族の奴隷から武力と知恵と人徳で皇帝に成り上がった真の男だ。まだ彼はただの少年に過ぎない。これから筋肉ムキムキのシュワルツェネッガーとなり、奴隷や馬賊や傭兵といったキャリアをこなして、劉淵に仕える将軍となる。劉淵もすごい男だが、バイほどに自由ではない。過去の帝国の幻影を二重に引きずっている。ほかも一癖も二癖もあるやつらだ。
なにしろ歴史ものなので、書こうと思えばいくらでも書ける。無数の登場人物それぞれの背景や行動や繋がりも、史書を紐解けばネタバレされている。晋書はこの時代からかなり後に編纂されており、講談や怪談のたぐいも平気で採用しているため史書としては信頼性に欠けるが、それはそれでパルプ小説として面白い。三国志だって正史の時点でかなりパルプだ。歴史書とはそういうもので、起こったことをありのままに記したものなどない。必ず編者の、読者の、思いが入る。入らねばおかしい。そう思って読めばいい。
おれは歴史すきなのでこういうのをどんどん書いて読めるが、歴史に興味がないやつもいるだろう。漢字の羅列だけで頭が痛くなるやつ、どれが誰でなにがどこなのかさっぱりというやつもいるだろう。それなら無理に読むことはない。興味が湧いたらどんどんわからない言葉を調べてみてくれ。だいたいのことはWikipediaに書いてある。いろいろ物理書籍を読むのもいいぞ。文庫や新書ばかりなので手に入れやすいだろう。なければ図書館で探せ。
【続くかもしれない】