忍殺TRPGリプレイ【ディープ・レッド】03
前回のあらすじ:キョート共和国北部、タンバ地方。ニンジャスレイヤーはアンダーガイオンでの調査の末、ここにザイバツの荘園があることを突き止めた。荘園を管理する手練れのニンジャ・デシメイションを殺し、次なる獲物はグランドマスター・イグゾーションだ!カラダニキヲツケテネ!
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「シューッ……」ニンジャスレイヤーはザンシンし、呼吸を調える。実際恐るべき強敵であった。だが殺した。もしタイタンズ・ベインが命中していれば、他に敵ニンジャがいれば、あるいはこちらが倒されていたかも知れぬ。ナラクが休眠していなければ、これほど苦戦はしなかったかも知れぬ。
だが、そうではなかった。それだけだ。彼はデシメイションとのイクサを反芻し、己のカラテの糧とする。「……!」その時、ニンジャ第六感がざわめいた。このアトモスフィアは……!『おやおや、これは』西のアズキ畑の方から、男の声がした。『デシメイション=サン。クセモノかね?』
イグゾーションだ。凄まじいニンジャ存在感が周囲の空気を圧する。ニンジャスレイヤーは脂汗を流し、状況判断する。相手がこの邸宅に駆けつけて来るまでには、まだ少し時間がある。それまでにどう動くか。奴隷労働者たちは……微動だにしない。やつの所有物である以上、無下に殺しはすまい。
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは部屋から飛び出した。そのまま邸宅北側のキッチンに突入し、冷蔵庫からオーガニック・トロスシを入手する。これとチャドー呼吸があれば……!『どうした?デシメイション=サン』イグゾーションは悠然と邸宅へ近づいてくる。ニンジャ殺すべし!
戦闘継続
1ターン目
「イヤーッ!」イグゾーションは色付きの風と化し、デシメイションがいるであろう部屋へ飛び込んだ!そこには……三人の奴隷オイランと、デシメイションの生首、そして爆発四散跡!「なんと」イグゾーションは眉根を寄せると、瞬時に残留カラテの流れを読み取る。「そこか!イヤーッ!」
KRASH!「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはクロス腕防御するが、凄まじいカラテに押されダメージ!だがジュー・ジツの動きでなめらかに勢いをそらし、迎撃を繰り出す!「イヤーッ!」「イヤーッ!」イグゾーションは流麗な動きで躱す!そしてアイサツ!「ドーモ、イグゾーションです!」
「ドーモ、イグゾーション=サン。ニンジャスレイヤーです」互いにアイサツ。先程の応酬でカラテの差は歴然だ!「デシメイション=サンは殺した。オヌシも殺す」「なんたる夢見がちな男よ!」イグゾーションは微笑んだ。「サラマンダー=サンたちを殺したことで、随分思い上がっているな」
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは憎悪の炎を燃やし、イグゾーションへ襲いかかる!イグゾーションはジュー・ジツの構えで迎え撃つ!致命的な心臓への一撃をそらしクロスカウンター!KRASH!「グワーッ!」ナムサン!ニンジャスレイヤーはギリギリで躱し、迎撃を当てていた!「ヌウッ……」
イグゾーションは目を細めた。「なるほど……考え直す。君が相当に強いことは認めよう。ザイバツのため、ロードのために、今ここで倒す!」
2ターン目
「イイイヤァアアアーーッ!」ハヤイ!イグゾーションは巧みなステップで縦横無尽に動き回りつつ、素早いカラテで打ちのめす!「グワーッ!」命中!カウンター攻撃に繋げられない!「ニンジャ……殺すべし!」ニンジャスレイヤーは憎悪を燃やし、全身にカラテをみなぎらせる!
「イイイヤァアアアーーッ!」猛攻!だが浅い!「イヤーッ!」「グワーッ!」イグゾーションは華麗に回避し迎撃!「実際なかなかのカラテだが、私を打ち倒すほどではないな!ハハハハハ!」イグゾーションは久しぶりのイクサの昂揚に橙色の輪郭を輝かせる。「楽しいぞ!君とのイクサは!」
3ターン目
ゆらり……イグゾーションは陽炎めいて橙色の輪郭を揺らがせ、凄まじい連続攻撃!「「イイイヤァアアアーーッ!」」ガガガガガッ!ニンジャスレイヤーはブレーサーやレガースで弾いて全て防御!ワザマエ!しかし迎撃はならず、全身の防具はボロボロだ!「スゥーッ……ハァーッ……!」
ニンジャスレイヤーは短くチャドー呼吸を行ってエテルを引き寄せ、スシを補給したかのように負傷を回復させる。「ほう」イグゾーションは眉根を寄せる。「イイイヤァアアアーーッ!」ニンジャスレイヤーは懐に飛び込み心臓を狙う!「イヤーッ!」イグゾーションはブリッジ回避し迎撃の蹴り!
SLASH!「ヌウッ!」ガキィン!ニンジャスレイヤーは危うくメンポで受けた!衝撃で鋼鉄のメンポがヒビ割れる!なんたる強敵!
4ターン目
「イイイヤァアアアーーッ!」イグゾーションは凄まじい連続攻撃!狙うは両腕と両脚だ!ニンジャスレイヤーは……KRASH!「グゥワーッ!」ナムサン!イグゾーションの足払いが足首に命中!レガースが破壊……否、焼き溶かされる!以前ダークニンジャに妖刀ベッピンで斬られた傷口から出血!
「ニンジャ……殺す……べし!」ニンジャスレイヤーは暗黒マントラめいた呪いの言葉を唱え、憎悪を燃やす!「イイイヤァアアアーーッ!」色付きの風と化してイグゾーションの懐に飛び込み、脚・股間・頭部を狙った凄まじいカラテラッシュ!どくん……イグゾーションはアドレナリンを過剰分泌!
「ヌウッ……イヤーッ!」「グワーッ!」流麗なブリッジ回避からのカポエイラじみた動きで迎撃!ニンジャスレイヤーは躱しきれず一撃を食らう!イグゾーションは……無事である!ゴウランガ!「ハハハハハ……!無駄だ!」両腕を広げて哄笑!「しかし、一瞬冷や汗をかかされたよ!」
5ターン目
「「イイイヤァアアアーーッ!」イグゾーションとニンジャスレイヤーのカラテが激突!激突!激突!だが……「グゥワーッ!」イグゾーションの鉄拳がニンジャスレイヤーを打ち据える!ニンジャスレイヤーの攻撃は……当たらない!「君はこんなものか?サラマンダー=サンには遠く及ばないぞ!」
6ターン目
イグゾーションは高速ステップによりブンシン・ジツめいて残像を生みだしながら、全方位からの凄まじいカラテ攻撃を叩き込む!「イイイヤァアアアーーッ!」SMAAASH!「ゴボッ……アバーッ!」ナムアミダブツ!イグゾーションのチョップ突きが、ニンジャスレイヤーの胸を突き破った!
「アバッ……!」胸の穴からおびただしい血液が噴出し、室内を赤黒に染め上げる。イグゾーションの手のひらには、どくどくと脈打つ心臓が握られていた。「興味はある……君が何者なのか、誰と通じているのか……それを知ることができれば、ロード・オブ・ザイバツの御為にもなる……だろうな」
???
イグゾーションは一瞬、カイシャクを躊躇った。このまま心臓を握り潰されれば、ニンジャスレイヤーといえど死ぬであろう。だが、彼に宿るナラクの力が、彼を護るゲンドーソーの遺志が、それを阻む!どくん……心臓が、ニンジャスレイヤーの肉体が、黒い炎に包まれた!「う、グワーッ!?」
アズキめいた暗褐色の血液が燃え上がり、イグゾーションに纏いつく。それは数千年に渡ってニンジャに殺され続けたモータルたちの憎悪の炎、不浄の黒炎である!イグゾーションは本能的な恐怖を感じ、ニンジャスレイヤーの心臓から手を離し、胸の穴から腕を引き抜いた。「なんだ……これは?」
イグゾーションは訝しんだ。これが、サラマンダーを殺し、ダークニンジャを打ち倒した、ニンジャスレイヤーの真の力……彼に宿ったニンジャソウルの発現なのか。「スゥーッ……ハァーッ……!」『殺す……べし……』「スゥーッ……ハァーッ……!」『殺す……べし……ニンジャ……殺すべし……!』
ニンジャスレイヤーは立ち上がり、深い呼吸を行いながら、別人めいた声でニンジャへの呪詛の言葉を吐き出し続ける。トモエめいた力の共振。取り出された心臓はひとりでに胸の穴におさまり、じゅくじゅくと黒い血肉が湧き出して、傷口を塞いでいく。なんたる……なんたるジゴクめいた光景か。
フジキド・ケンジの意志とチャドー呼吸が、眠っているナラク・ニンジャの力を、無理矢理に吸い上げている。否、ここはニンジャの奴隷農園だ。いかに恐怖で従わされ、幸福だと信じ込まされていても、モータルの心の中には虐げる者への反発心が眠っている。それを揺り動かし、呼び覚ます!
「「「あ……アイエエエ!」」」「「「アイエエエ!」」」ナムサン!邸宅内の奴隷オイランや奴隷労働者たちが、凄まじいキリングオーラにあてられて恐慌を起こした!彼女らを縛り付けていた足枷がひとりでに破壊される!正気に戻った、否、狂気に取り憑かれたモータルたちは一斉に逃げ出した!
「フフフ……ハハハハハ!」イグゾーションは力強く笑い、恐怖を払い除ける!「いいだろう!君を倒す!」彼は武者震いしてジュー・ジツを構えた。これを単独で打ち倒せるのは、ロード・オブ・ザイバツを除けば、グランドマスター最強の自分をおいて他にあるまい!……一撃必殺アトモスフィア!
【続く】
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