マガジンのカバー画像

つのpedia

646
いろいろな資料集です。ご自由に活用して下さい。
運営しているクリエイター

2021年3月の記事一覧

【つの版】ユダヤの秘密・インデックス

ドーモ、三宅つのです。新たにインデックスを作りました。「ユダヤの謎」を古代編として、ここからは中世編です。 つのの記事はつのに属しますが、ミームが広がるのは歓迎しますので、紹介したり感想を書いたりする程度はご自由にして下さい。You Tubeとか書籍とかでつのの記事に基づく仮説を披露しても構いませんが、その場合は出典を明記して下さい。つのも参考文献一覧を作りました。 なお中東をはじめ世界各地に話が飛びますので、世界地図をご用意下さい。なければGoogle Mapで充分です

【つの版】ユダヤの秘密01・可薩可汗

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。モーセからウマイヤ朝に至る古代編は一段落したので、今回から中世編です。 欧州の歴史では、一般に西ローマ帝国断絶を中世の開始としますが、2世紀末から711年のイスラム帝国のイベリア侵攻、あるいは800年のカール大帝即位(神聖ローマ帝国の建国)までを「古代末期」とする学説もあります。 アラビア半島に興ったイスラム教は軍事力によって瞬く間に広がり、ペルシア帝国を滅ぼし、ユダヤ教徒・キリスト教徒・ゾロアスター教徒らを服属させました。エルサレム

【つの版】ユダヤの謎22・三教源流

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 656年、カリフ・ウスマーンが不平分子に暗殺されるとアリーが跡を継ぎますが、ウスマーンの一族であるウマイヤ家のムアーウィヤは従わず、シリアで自立してカリフを称しました。661年にアリーが暗殺されると、ムアーウィヤが唯一のカリフとなり、世襲王朝・ウマイヤ朝を開始します。 ◆聖戦士◆ ◆ムジャヒディン◆ 摩栧伐城ムアーウィヤの兄ヤズィードは、アブー・バクルから初代シリア総督に任命され、640年に彼が病死するとムアーウィヤが跡を継ぎま

【つの版】ユダヤの謎21・内戦勃発

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 預言者ムハンマドの死からたった12年で、カリフ(ムハンマドの代理人)を指導者とするアラブ・イスラムの軍勢は破竹の勢いで勝利を重ね、エジプトからシリア、イラク、西イランまで領土を拡大しました。644年11月に2代目カリフのウマルが暗殺され、ウスマーンが即位します。 ◆Acid◆ ◆Arab◆ 大食遣使ウスマーンは、クライシュ族の名家・ウマイヤ家の出身です。預言者ムハンマドの曾祖父ハーシムの兄弟にアブドゥルシャムスがおり、その子ウマ

【つの版】ユダヤの謎20・聖都入城

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 唯一神アッラーフの預言者ムハンマドは、マディーナを首都とする宗教国家を築き上げ、アラビアの諸部族を服属させ、マッカを征服しました。東ローマにもペルシアにも属さない独立国(部族連合)が出現したのです。 ◆Allah◆ ◆Akbar◆ 代理後継632年6月にムハンマドが逝去すると、人々は動揺します。イエスの時のように「彼は生きている、復活する」という声も上がりますが、アブー・バクルは「彼は死んだ、蘇ることはない。彼は神の子ではなく、

【つの版】ユダヤの謎19・天啓聖戦

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 東ローマ帝国とペルシア帝国の数十年に及ぶ大戦争は、西突厥と手を組んだ東ローマ帝国の勝利に終わろうとしていました。しかし、両国が疲弊していたところへ、南からアラビア人の軍勢が押し寄せてきます。すなわち、イスラム教徒による大征服が始まったのです。 ◆Muhammad◆ ◆Avdol◆ 使徒誕生イスラム教は、預言者ムハンマドが唯一神(アッラーフ)の啓示を受けて創始した宗教です。古くは「回教」と漢訳されましたが、こ

【つの版】ユダヤの謎18・無明時代

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 東ローマ帝国はキリスト教三位一体派を国教とし、異端や異教を激しく弾圧します。これにより多くの亡命者がペルシア帝国へ向かい、やがて両帝国の間にユーラシア西部を二分する大戦争が始まります。 ◆G◆ ◆K◆ 匈奴突厥クシャーナ朝がサーサーン朝ペルシアに敗れて衰退すると、中央アジアにはエフタルが現れます。彼らは匈奴の一派が西へ遷り、ジュンガリアの烏孫の西北、カザフスタンに建てた国で、漢籍では悦般や嚈噠とも呼ばれました。フン族も彼らの一派

【つの版】ユダヤの謎17・東西戦乱

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 4世紀末、ついにキリスト教はローマの国教となり、キリスト教以外の宗教を信仰することは禁止されました。しかし、ただちに全国の「異教」の神殿やシナゴーグが破壊されたわけではありません。皇帝の命令で破壊されたりキリスト教徒の暴徒が襲撃することもありましたが、「異教」は何世紀にもわたって意外としぶとく生き残っています。 ◆馬◆ ◆娘◆ 異教弾圧エジプトのアレクサンドリアには、プトレマイオス朝以来の大図書館が存在し、ローマ時代にも学問の殿

【つの版】ユダヤの謎16・反猶太論

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 ローマ帝国は多神教の国であり、誰がどんな神を崇めようと、反乱や社会不安を起こさなければ信仰の自由は認めていました。皇帝やローマ古来の神々を礼拝することは求めましたが、ユダヤ民族はカエサル以来の特権としてそれを免除されています。しかしキリスト教徒は他の神や皇帝を崇めず、ユダヤ教徒とも対立していました。現代まで続くユダヤ人への差別や偏見の源流はキリスト教によるものです。 ◆Old Earth◆ ◆Against◆ 殺基督罪キリスト教

【つの版】ユダヤの謎15・異端論駁

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 135年にバル・コクバの乱が平定された後、エルサレムはユピテル神殿が立つ非ユダヤ人の都市とされ、ユダヤの地名もパレスチナと変えられました。ただハドリアヌスの後の皇帝たちは穏健派のユダヤ教徒との関係を修復し、融和路線をとって東方を安定させました。パルティア側にもユダヤ教徒がいる以上、敵対すればパルティアが反乱を煽ってきます。この時代にローマが警戒していたのは、むしろキリスト教徒の方でした。 ◆異◆ ◆端◆ 基督教団ナザレのイエスが

【つの版】ユダヤの謎14・星之王子

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 ユダヤ教やキリスト教における終末論、善悪二元論といった教義は、イランのゾロアスター教から取り入れたものでした。しかし現実世界は理不尽なもので、常に倫理的に善や正義や敬虔な方が勝つわけではありません。理想論や神学論争はさておいて、現実の歴史の方を見てみましょう。 ◆星◆ ◆星◆ 猶太反乱西暦96年にローマ皇帝ドミティアヌスが暗殺されると、元老院によってネルウァが皇帝に擁立されます。彼は温厚な性格で元老院には喜ばれたものの、軍からは

【つの版】ユダヤの謎13・善悪二元

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 ユダヤ教やキリスト教、イスラム教に共通する歴史観として、世界には始まりと終わりがあり、世の終わりには災害や戦争が起きて世界が滅び、善人は天国へ、悪人は地獄へ割り振られるという「最後の審判」があります。いわゆる終末論の一種ですが、仏教やヒンドゥー教、アステカ神話での世界の終末が巨大なサイクルで繰り返されるのに対し、これらの宗教では終末は一回限りです。こうした思想の起源はゾロアスター教に遡ります。 ◆Let Me◆ ◆Live◆ 祆

【つの版】ユダヤの謎12・終末黙示

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 西暦70年、エルサレムの第二神殿はローマ軍の攻撃で焼け落ちました。ローマは神殿再建を許さず、ユダヤ教ファリサイ派はヤムニアに中心地を遷してユダヤ人を管轄しました。ユダヤ教から派生したキリスト教はこの頃に福音書を編纂しています。そして1世紀末頃、『ヨハネの黙示録』が現れます。 ◆黙◆ ◆示◆ 約翰文書新約聖書に含まれる諸文書のうち、『ヨハネによる福音書(ヨハネ伝)』と三通の『ヨハネの手紙』、及び『ヨハネの黙示録』を「ヨハネ文書」と

【つの版】ユダヤの謎11・神殿崩壊

ドーモ、三宅つのです。前回の続きです。 西暦30年頃に磔刑死したナザレのイエスは「復活した」と信じられ、彼をメシア(キリスト)と信じる人々は教団を形成します。このユダヤ教の異端・ナザレ派が発展して多数の非ユダヤ教徒を取り込み、ユダヤ教から独立した「キリスト教」となっていったのです。 ◆United◆ ◆We Stand◆ 領主変遷キリスト教史から離れ、ヘロデ家の領主らのその後を見てみましょう。西暦34年にゴラン高原の領主フィリッポスが逝去すると、その領地は一旦ローマ帝