セックスの体験レッスンをしてきた
前に、ゲイビデオショップで散策をしていたときに、『ALL THAT JIZZ』というタイトルのAVをみつけた。ジャケットには全裸の男が沢山写っていた気がする。『ALL THAT JAZZ』という映画は観ていたので、パロディかなんかだろうかと想像した。映画もプレイボーイな舞台演出家であったし、紀州でいうところのドン・ファンで、カサノバでもある。となると、「JIZZ」がなんかしらのスラングだろうと思って調べると、「精液」だったので、『精液がいっぱい』って邦題にしたらいいのにと思った。そうなると、主演はもちろんアラン・ドロドロンになる。
セックスの頻度が減ってしまったので「サックスをやろう」と、深夜に思い立ち眠れなくなってから10日間経って、楽譜を読めるようになろう、とゼロから学理を教えてくれる動画を見漁って、ピアノをいじってたら、メジャーやマイナーのスケールを弾けるようになって、簡単なコードをインプットできて楽しいのだけど、楽譜は読めないままでどうしようってなってた(多分これからやる、全98回中25回ぐらいしか見てないので)。近くのチェーン店で体験を受けたけど、チェーンで高くて、尻込みしていたら、家の近くに小規模のジャズ教室(安い)があったので、メールを送ると、「明日どうですか?」と返信がきたので、体験に、というのが今日のスケジュール。自転車で10分くらいのとこなので、お昼寝してから向かった。この教室は、理論1時間、レッスン2時間で月3回通うことになるのだけれど、月謝は同額でも時間が2倍になってくれるので、アタシの貧乏根性と、「バークレー音楽大学卒」という肩書だけで、えいやと進めてしまった。宮迫がYoutubeはじめるという行為、そして、ヒカルやDaigo、ホリエモンとコラボするという選択は、全て間違いだって、みんなわかるけど、本人は判らない、というのに近いかもしれない。
そもそも、サックスは、響きがセックスに似ているから始めたので、講師は女性がよかった。女性の顔を引き立てるアクセサリーはちんこであると、多くの男性がフェラチオ中に天啓をうけたことがあるだろう。とまれ私は異性愛者で、同性にフェラチオをされたことも、したこともないので(無念です、いつかね)、男性×男性器という磁石でいうと離れようとしてしまう二つの装置が、意外なマリアージュを見せるかもしれないので、保留にしておく。ちなみに、「愛すべき老害」と呼ぶべき蓮實重彦は、90歳近くにして、女子アナと、マイクの性的関係性(記事の主題からは逸れるが)について書いていて、サイコーだったので読んでほしい。普通のマイクならまだしも、イメージしやすいのはタモリマイク型。あれはあからさまに亀頭、あるいはコンドームをつけているので、女子アナは数倍可愛く映っているのだとわかる。美顔ローラーは、金玉を模して作っているわけだが、個人的にはあまりエロティックさを感じない。だから、問題は竿である。
自宅から徒歩24分の距離を自転車で走る。右耳からは春日が、むつみ荘でバルサンを炊いたフリートークが流れていた。レッスン場は住宅地の一角にあってわかりづらかったけれど、前の受講者が出てきたので見つけられた。入口でスリッパに履き替え、中にはいると、ダイノジ大谷を白髪にしたような風体のおじさんが待っていた。彼はジャズピアニストでギタリストだった。「まず、質問用紙に記入をお願いします」と言われたので、必要事項を記入したあと、「好きなアーティスト」という欄が待っていた。これは難しい。「好きな芸人は?」「好きな映画は?」「好きなアニメは?」というように、識者たちが「絞れねぇよ」と一斉におこりだす類のものではなく、個人的な自意識が邪魔する、こっちの問題で。私は、博徒の精神をいかんなく発揮して、「菊地成孔」、そして隣に「山下達郎」と記入した。前者は危険牌で、後者は安全牌である。この基準は、好き嫌いが激しいか否かといえる。私は自意識の壁を突破して、前者を記入した。というのも、かつて新宿のチェーン店のジャズバーの面接に行った際、終始引き気味だった面接官に「ジャズすきで…」と切り出すと、急に前のめりになっていたのに、持ち前の愛をもって語れるジャズ手札である彼の名前を出せず(危険牌だが)熱が冷めていったのを感じたこともあってである。私が、サックスを始めようと思ったのも、彼を特集したユリイカで山下洋輔との対談記事を目にしたことによる。これを読んでいたら、眠れなくなった。ちなみにこれはジャズ三次ブームで、第一次はブルー・ジャイアント、二次は母がサックスを始めたときである。
この用紙を記入している最中も、ダイノジ大谷似の先生のジャズピアノの旋律と足で創出されたリズムの揺れが流れている。終わってペンをカチッと鳴らすと、大谷先生は振り返り、質問用紙をじっとみて、「山下達郎、いいよねぇ」と会話が始まり、少し盛り上がった。それで、「好きなアーティスト」トークは終わり。わたしは、博打にまけてしまったらしい。ジャズミュージシャンである彼を、知らないはずがない。「成孔は嫌いなんだな」と思って、急に楽しくなってきた。顔相から性格分析をするという、魅力的な疑似科学を駆使すると、先生は「ダイノジ大地型」。つまり、ナルシシズムが、成孔の成シシズムと磁石の同極のために避けてしまったのだろうか。さながら、男性と美顔ローラーの不釣り合いな印象に近いかもしれない。
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