揺籃期

踏切を待つ間に夜を洗う風が吹く
通り過ぎる電車に浮かぶ
方々へ別れる予定の人々は
灯台の顔をして揺れている

遮断機があがると道が生まれた
真っ直ぐに進むことをこばむ足は
敷き詰められた小石に触れる
それは 未完の寄り道
いつか水底で
ねむっていた時間に繋ぐ
渡れる川を横断する

遠景にころがる果実に映された、いくつもの呼びかけ

皮を剥くように
拡がるとばり
手招きする一歩手前で止めて
転写される系譜を追う
見ない人の分まで空をみている

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?