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人にしてもらったから人にしてあげられる

ヨーロッパのどこか、たしかスイスあたりの駅で乗り換えのために重たいスーツケースを引っ張ってたとき。無人駅が当たり前の田舎でエレベーターなんてないので階段を登ろうとしてたら、通りがかりの女性が「手伝うよ」と言い、ひょいっとスーツケースを持ち上げて上まで運んでくれた。そしてニコッとしてそのままどっかに去っていった。かっこよかった。

それ以降、重たい荷物を持って大変そうな人がいたら、声をかけてあげたくなる(助ける時もあるし、お節介になりそうな時は見守るだけも時もある)。日本に来て困っている外国人がいたら助けてあげたくなる。

人にしてもらったから人にしてあげられるんだよね、とこの前母が言った。母は外国で電話代がなく困っていた時、見知らぬ人に助けてもらったことがあるらしい。その通りだと思う。見知らぬ人に助けてもらった。助ける義理なんてないのに。ありがたい。だから自分も他人を助けようと思える。助けることだけじゃない。すべてのことがそうだと思う。人にしてもらったことだから、自分も人にしてあげられる。先輩にしてもらったことを後輩にしてあげる。上司にしてもらったことを部下にしてあげる。親にしてもらったことを子どもにしてあげる。良いものも悪いものも全部伝達される。それは、一対一の関係だけではなくて、誰かから誰かに、前の世代から次の世代に、流れていくものだと思う。親にもらった愛は親に返すのではなく子どもに与えるものだ、とどこかで聞いた。

スーツケースを運んでくれた女性にお礼をするだけだと、その二者間のやり取りで終わってしまう。それだけじゃなくて、それ以降いろんな人に自分がしてもらったことをしてあげることで、もっと還元できるんだと思う。

階段の多いヨーロッパ

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