文字絵「ふんややすひて」
引き続き、北斎の文字絵六歌仙を取り上げたい。今週の歌人は、文屋康秀。この一枚は、同じく大英博物館所蔵で、このリンクからデジタル画像を鑑賞することができる。
上段に書き込まれるのは、百人一首にも収録された歌である。嵐を詠みあげたもので、多くの人には、「あらし」と言えば思い出される名フレーズである。
吹からに秋の草木のしほるれはむへやまかせをあらしといふらん
吹くからに/秋の草木の/萎るれば/むべ山風を/嵐といふらん
絵に織り込んだ文字は、歌人の名前で、「ふんややすひて」である。歌人の姿を優雅に描き出すと同時に、筆の勢いまで表現した、飄々として美しい仮名である。ただ、歌人の首当たりの線は、「の」と読みたいものだが、どうしてもその答えには結びつかない。
この一枚も、文字解読のためにGIFに纏めた。