強くて頭のいい美人は最高。BBCドラマ『SILK 王室弁護士マーサ・コステロ』
偶然見つけたBBCのドラマですが、これがもう最高におもしろくてハマりました。舞台はイギリス。王室弁護士を目指す弁護士マーサの物語。もし、年末に時間を持て余すことがあったら、このドラマシリーズをおすすめします。6話×3シーズンと、アメリカのドラマほど長くないの見やすいです。
シーズン1は、イギリスの弁護士の名誉ある資格「王室顧問弁護士」を目指すマーサ(マキシーン・ピーク)とライバルのクライブ(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)、そして2人が所属する弁護士事務所の上級事務官のビリー・ラム(ニール・スターク)をめぐるお話。
弁護士の仕事に全力投球するマーサと、女性大好きでとりあえず魅力的な女性は全て口説くクライブはライバル。でも、お互い仕事面では認めあっている関係。このあたりの設定がすごく好きです。普通のドラマだったら、絶対弁護士男女の愛憎物語になるんですが、マーサは自立した女性で、クライブは過去の男。マージョリー……じゃなかった、ナタリー・ドーマー演じる見習い弁護士も、クライブとつきあうけれど、ちゃんと自分を持っているし。
ここに、マーサの能力を高く評価する事務官のビリーがからんできます。ドラマの縦糸は、複数の裁判。これにマーサとクライブのライバル関係と、事務所から独立しようと他の弁護士たちの動きが絡んでくるので、裁判以外でもハラハラできます。
あと、これはネットで拾った情報ですが、マーサの英語はエリートのそれではない、癖のあるものだそう。つまり、労働者階級の弁護士という設定なのだとか。このあたり、もっと英語ができたらおもしろいんだろうな。
シーズン2は、裁判の規模もバージョンアップ。やりきれない人生と、それでも法律では白黒つけなければいけない辛さ、いつも弱い被害者を救う弁護士でありたいマーサの葛藤が見どころです。事務所内の造反問題はすっかり(?)解決したようで、中心は暴走気味のマーサの弁護士使命感にあてられるように、恋人はいつもいるのにマーサに惹かれ、マーサに影響を受けていくクライブの関係。そして、外部の事務官からのアプローチです。
アメリカの弁護士ドラマはとてもわかりやすいのですが、イギリスの弁護士事務所の場合、一つの裁判で同じ事務所の弁護士が被告と訴訟の両方を担当することもあるようです。だから、マーサとクライブは同じ弁護士事務所なのに、ときどき敵対関係にある。それから、イギリスの場合は事務官が依頼をとってくるようで、弁護士が直接依頼人に依頼されるシーンがないのも不思議。このあたり、機会があれば何か本を読んでみたいです。
シーズン2は好きな話も多くて、例えば犯罪組織の下っ端をマーサがすばらしい弁護で救ったのに、裁判で無罪になった後、彼は組織を裏切ったという理由始末されてしまう話や、戦争で心を病んでしまった部下の名誉を救おうとした軍の上官の話、受刑者が護送中に亡くなってしまう話が好き。マーサが史料をきちんと読み込んで、被害者を弁護していく過程がちゃんとした法廷ものって感じで。
シーズン3は、ちょっと個人的には納得できない。きちんと弁護士の使命をまっとうすることで、これまで裁判に勝ってきたマーサ。なのに、シーズン3では、マーサの熱意だけが暴走して、破滅していくシナリオ。弁護士事務所の運営問題と、ビリーの病気の問題。そして、彼女らしくない「過去の男」にこだわる裁判。
そして、シーズン2で見事な敵役を演じていたマクベス夫人(フランシス・バーバー)を同じ事務所に移籍させたのに、実は飼い殺し状態にするとか、一体何がどうなっているのか。もったいないにもほどがある。結局、脚本家やプロデューサーは彼女をどうしたかったのか。アイデアだけあって、まとまらず、空中分解なのか。俳優さんたちの演技がすばらしいドラマだけに残念。
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