弁理士の未来はどうなるのか
日本弁理士会は、PA、春秋、南甲、無名、稲門、弁理士クラブ、同友、西日本の8つの派閥から成っています。そして、無名と稲門は、実質的に一つの派閥であり、3年に2度は無名から、3年に1度は稲門から副会長候補が出されることになっています。したがって、8名の副会長は、PA、春秋、南甲、「無名、稲門」、弁理士クラブ、同友、西日本の各会派から1名ずつ、合計で7名が出されるわけなのですが、慣例により、会長の属する派閥から2名の候補者が出ることとなっています。
ところで、これらの派閥には、そこに入る弁理士の数が少なくなってきており、既に過半数を割っています。したがって、会派連合の案というのは、会員全ての意見を纏めたものであるとは言い難いものとなっています。
そうした中にあって、今までに何人かがこうした「派閥による閉鎖的な政治」を打破しようと、会長や副会長に果敢に立候補してきました。新たな時代を作ろうという挑戦者が居たわけです。そうした中にあって、会長候補として、無会派の方が立候補して当選した例は、今のところ、ありません。
けれども、副会長職につきましては、無会派のものが当選した例があります。その最初の例は、渡辺温であり、彼は春秋を飛び出し、自ら立候補しました。そして、一度は、たったの一票差で敗れたものの、翌年には見事に当選いたしました。
次にこれを打破したのは、正林です。彼は、こうしたときには、「派閥が寄ってたかって落とすために動く」状態を打破し、見事に4位で当選したのです(敗れたのは、PA、同友、弁理士クラブ(ただし、2名のうちの1名)。なお、「無名、稲門」連合は、僅差で勝利)。先の渡辺温ですら最下位当選であり、派閥が頑張りさえすれば、また落とすことができる状態であったわけなのですが、この正林は最下位当選ではなかったために、もはや「派閥が寄ってたかって落とす」ことができなくなってしまいました。
これによって、長らく続いた「弁理士会の役員会は会派連合のもの。会派の独占」という歴史が終了し、無会派のものが弁理士会の役員になれることとなったわけなのです。その後にも、長濱や赤川といった無会派の副会長も誕生しました。
なお、常議員については、今までにも何回か、派閥連合が敗れるケースがありました。
今回は、無会派の正林が副会長に再選し、常議員に無会派の金子、監事に無会派の岩池が出馬しています。常議員の例はあるものの、監事の例は、今までにありません。特に監事は、副会長経験者などの老齢の弁理士がなるものという慣例があり、弁理士会の保守的な考えの根源となっています。
常議員は、副会長等の役員になるための登竜門のようなものなのですが、実際には、叙勲を得るためのポイント稼ぎという側面があります。事実、会長経験者や副会長経験者が、若手の候補を押しのけて再び常議員となるのは、叙勲を得るためのポイント稼ぎのためです。
さて、果たして、今年の弁理士会の役員選挙は、一体どうなるのでしょうか。会派か無会派か、旧来派か革新派か、泥沼か清水か、閉鎖的かリベラルか、今回の選挙によって弁理士会の未来が決まることになります。
参考)
会派ホームページ
PA https://www.pa-kai.net/?p=3418
春秋会 http://www.shunju.gr.jp
南甲弁理士クラブ http://www.nankoh.gr.jp
無名会 http://www.mumeikai.net
稲門弁理士クラブ https://www.tomon-benrishi.com
西日本弁理士クラブ https://nishiben.net/選挙特集/
弁理士同友会 http://www.douyukai.com
弁理士クラブ https://www.benku.org/R1senkyo/kouhosya.pdf
なお、日本弁理士クラブは、PA会・春秋会・南甲弁理士クラブ・無名会・稲門弁理士クラブの5会派で組織されています。(http://nichiben.gr.jp/wp/2019/01/01/平成31年度%E3%80%80日本弁理士クラブ%E3%80%80人事/)