おすすめ本を尋ねて触れた真由美さんのイズム-おりぶん呉服店 吉田真由美さん-
「広く浅くいろんな本を読んでいると思うの」という吉田真由美さん。小学生の頃には『ジャポニカ百科事典』が好きだったが、気づけは純文学も嗜むように。
「おこづかいがもらえる歳になると、文庫本を自分で買いはじめました。気づいたら純文学も読んでいましたね。ボーボワールやシャーロット・ブロンテ、パール・バックなどの女流作家が好きです」。決して自分では言わないが、かなりの読書家の様子。しかし「これ以上は面白くないからやめとく ね」と、純文学の話は打ち切りに。
「だってとっつきにくいじゃない。でもね、年代から年代初頭の難解な海外作家さんの本も、最近のテレビドラマも、実は話のベースは同じだなと感じるの」。幅広く触れてきた吉田さんだからわかることなのだろう。しかし、そこに類似点を見出すところは、まるで本質を見極めるかのよう。好奇心旺盛な真由美さんの趣味や生き方にも通じるところがあった。
吉田さんは、小学生までを兵庫県西宮で過ごし、中学生の頃に敦賀へ。母方の実家が本町でガラス屋を営んでいた。「本町と縁があったのか、気づいたら本町の呉服店に嫁いでいた」と冗談まじりで生い立ちを話してくれた。メインで店に立つのは真由美さん。着物の知識は呉服屋さんになってから勉強をされたのかと思いきや、嫁入り前から着付け教室に通っていたという。「友人が嫁入り修行で一緒に通ってほしいというので、 暇つぶしで私も習いはじめて。友人が辞めた後もなんとなく続けていたら花嫁さんの着付けをできるくらいになったの」。
今では自分に合った着方まで編み出した。「私は腰紐を1本も使いません。それどころか、苦しくなると少しずついろいろ抜いちゃうの。構造がわかっているからできることなのかもね」。
まずは基本を習得し、そこから自分の好みに合わせていくというスタイルは何においても変わらない。「最近はプログラミング言語に興味がある」というのでその理由を探っていくと、お店のホー ムページを真由美さん自ら自作していることがわかった。ホームページの組み立てはまさに基礎とカスタマ イズの繰り返しだ。
そんな彼女にいざおすすめの本を聞くと、そのラインナップからもイズムを感じられた。はじめに名前が上がったのは海堂尊氏の『ジェネラル・ルージュの凱旋』だった(残念ながら在庫がなく、店頭に並べることはできなかった)。ドラマや映画にもなった人気作品を紹介するとはちょっと意外かと思いきや、その理由がやはり深かった。
「この人がなぜ医者でありながら小説を書いているかというと、死亡時画像診断の重要性を訴えるためだったんです。だから、シリーズ全ての世界観や登場人物も統一されていているんですよ。作品に強い信念を感じられてすごく素敵なんです」。海堂さんの本をほとんど読んだ上での感想というから説得力がある。
正直なところ、今回インタビューを 行うまで、好奇心旺盛で明るい方とい うイメージしかなかった。しかしよくよく会話をしてみると、鋭い視点で物 事の芯を捉える彼女の言葉にはハッとさせられることが多い。「本当はまだまだ紹介したい本があるの」ということだから、本をきっかけに痛快な真由美さんとの会話を楽しんでみてはいかがだろう。
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そんな真由美さんおすすめの本がこちら。
千田書店の「ほんいち本棚 特設コーナー」では、真由美さんとこの3冊にまつわるエピソードを7月8日まで掲示しています。抽選で8名様に当たる、かわいいプレゼントもご用意いただきました。ぜひ、店頭でご覧ください。
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