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舞台照明のデザインのこと その3 デザインには強度がいること

前回の終わりに

具体的なデザインについては、
明かりの角度について
明かりの色について
明かりの明るさについて
シーンという概念について
キューという概念について
シーンとキューの組み合わせについて
照明をデザインしていくためのフックについて
最小限の照明について

というような章立てで書いていこうと思う。

とか、書いていたけど、超重要なことを説明していなかった。

それは、デザインの強度についてのことだ。

というわけで、まだ具体的な舞台照明のデザインの話には進めない。

デザインの強度ってなんだよ

何をデザインするにも同じことだと思っているのだけど、特に舞台照明のデザインには「強度」というものが存在する。

演劇というものは、時空間を共にしたものだけが鑑賞できる特殊な芸術であると、同時にあるコンセプトに基づいた視点を持ち寄ることで成立する芸術でもある。

どこかの誰かが考えたことに乗っかるだけでは、デザインとは言えず、また言われたことを言われたとおりにやるのは、デザインとも呼べない。
照明をデザインしていくときに、僕はそのデザインの強度が確かなものかどうか。ということを考える。

デザインのコアになるものに強い信念みたいなものが必要になってくる。それは各シーンごとを通してみた時や全体の中で最も重要となるシーンはどこなのか、そこに繋がっていくための段階はどういうものなのか。
自分の中で唯一無二のコンセプトと呼べるものなのかどうか。ということである。

デザインの強度が必要な理由

僕が考えるデザインの強度というものは、その作品を生かすために出来る渾身の画を持てるかどうか。また、その作られた画によって、観客を納得かつ、共感させることが可能かどうか。ということなのである。
例えば、ある俳優がセリフを言っている姿に対して、絶対的な美しさを顕示出来る角度や色、もしくは空間全体としての「美」が存在しているかどうか。ということでもある。また、そのために舞台照明自体(つまり光源など)を見るのではなく、必要な集中力がその俳優に注ぎ込めるようになっているのかどうか。ということである。

この話は、具体的なデザインの話の時にもたびたび出てくることでもある。

照明を当てる角度には限りがあることについて

さて、具体的な照明のデザインに関わることに進んでみようと思う。

照明を当てる角度には限りがあること。
当然、だけど、照明を当てるとなれば、それがどこからどこに当てるのか。ということが重要になってくる。

ただし、その確度は有限でしかもパターンが少ない。

いやいや、360度あって、その中から自由に選べるんだから、無限じゃないですか。って思うかもしれない。
でも、実際に観る側からしたら、斜め30度と斜め45度の違いを厳密に区別は付けられない。比較したら、差が分かるかもしれない。でも、確度を比較してわざわざ見せない限りにおいては、その差はない。わかるのは、真後ろか斜め後ろか、くらいの違いでしかない。図にするとこういうことだ。

上から見た図。

無題の図形描画

対象に対して8方向からの角度。
これに加えて、上中下と真上

無題の図形描画 (1)

つまり、計算してみると、8方向×上中下+真上=25種類の角度しか存在しない。

実際に照明を操作する上では、この角度というものは幅が細かくあるが、概念として理解しやすく、実際に区別が出来るものというのはこれくらいしか種類がない。

当てる角度の種類が少ないと言うこととデザイン

これらの方向の全てに照明を用意して、全部を点灯したら、対象物が持つ凹凸が無くなって見えてしまうので、必要な角度がどの角度なのかと言うことを考えて行かなくてはならない。

演劇の照明デザインの話なので、基本的には俳優の顔が見えるようにはしたい。敢えて、見せないという選択肢も存在しうるし、その可能性は否定しないけれども、まずは見えるようにすることが前提で全体をデザインする。
今更だけど、このnoteでは、基本的なことを取り扱おうと考えている。
なので、わざわざ見せないことについては語らない。

この8方向の中で、重要だと思う方向を決めなくてはならない。
まず、この選ぶことがデザインの一歩だと考えている。
対象となるものに当てる照明の角度の中で最も重要だと考えるものを一つ選ぶということ。これが、照明をデザインしていく上で最初に考えなくてはならないことである。

一か所からの照明ということは、それ以外の方向からの明かりは無いわけだから、選んだ方向以外は当然暗くなる。単純な話である。

大分、長くなって来たので、次回は照明のシミュレーションも含めた画像を見ながら説明しようと考えている。

読んでくれている人ありがとう。
がんばって続きを書けるようにしようと思う。

では、また。


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