ダウンロード

NHK「まんぷく」第17週に見るイノベーションの起こし方

 少し情報が古くなってしまいましたが、「まんぷく」の第17週(1/25の週)、「ラーメンだ!福子!」で、遂に萬平さんがラーメン作りを始めました。今でもみんな大好きなチキンラーメンです。第17週では、発明家である萬平さんが新しいことを始めようと模索している中で、ラーメンだ!と発想し、どんなものを作りたいのかを具体化していったストーリーでした。
 この、発想からコンセプト作りまでの流れが非常にイノベーティブで、もちろんモノにあふれている今の時代とは違うものの、イノベーションを起こす上で非常に重要な要素が満載だと感じ、感動しましたので、まとめたいと思います!!

まんぷくのイノベーションをデザイン思考のプロセスで見る

 まずは、アイデアを発想し、コンセプトに持っていく上で萬平さんがやっていたことは、非常にデザイン思考的なプロセスでした。デザイン思考といっても諸説ありますが最も有名なのは、以下のスタンフォード大学のd.schoolが提唱している5つのプロセスではないでしょうか。ということで、この5つのプロセスに倣って、萬平さんの発想を説明していきます。

画像1

1. 共感(Empathize)
 最初のステップは、顧客の立場に立って共感し、顧客が潜在的に抱えているインサイトを見出します。萬平さんは、奥さんの福子に以下のように質問(インタビュー)をしていました。
萬平「日々の仕事で一番大変なのはなんだ?」
福子「やっぱり、毎日のご飯を考えることです。夕飯を食べながら、明日の朝の献立を考えています。」
仕事を辞めて家にいる萬平さんは、福子が毎日如何に大変なのか認識しています。そして、毎日のご飯を考える大変さを、まさに福子の立場に立って「共感」していきます。ここでのインサイトは、直接的ですが、ご飯作りや掃除ももちろん大変ですが、「毎日のご飯の献立を"考える"ことが非常に手間」ということだと思います。

2. 問題定義(Define)
 ここからの萬平さんのスピード感と発想力はすごいです。献立を考えることの大変さの共感から、萬平さんは以下のように問題を定義します。
「飽きずにおいしく手軽に食事を提供するためにはどうしたら良いか」
毎日のご飯の献立を考えることが大変なら、考えることに疲れてラクしたいときに、"明日はこれにしよう"と思えるような飽きずにおいしく手軽に食べられる食事が必要だと、問題を定義したのだと思います。

3.アイデア発想(Ideate)
 萬平さんは、飽きずにおいしく手軽に食事を提供するためにはどうしたら良いか、を考えたときに、過去の福子と萬平さんのラーメンを食べた思い出やラーメン屋の行列の映像を思い出し、「ラーメンだ!」と発想しました。
 この発想力はもはやセンスだと思いますが、
・ラーメンは外で食べるもの
・ラーメンを家で作るなんて想像もつかない
という当時の当たり前を疑い、ラーメンを家で手軽に作れるようにすれば飽きずにおいしい食卓が実現できる!と常識にとらわれない発想が、実に萬平さんらしくて脱帽です。
 また、ここからは、ラーメンを家で手軽に作れるようにするというコンセプトを具体化していくために、家族間のブレスト、プロトタイピング、テストを何周も並行してやっていきます。

3-2. ビジョンの具体化
 アイデアを具体化していくために、まず萬平さんがやったのが、作るものの「5つのビジョンを明確にした」ことです。
 ①おいしいこと
 ②安いこと
 ③簡単であること
 ④常温で保存できること
 ⑤安全であること
この5つを絶対に譲れない条件と定義したことは、物事の判断基準の明確な指針になるので、非常に重要と思いました。

4.プロトタイピング(Prototyping) 5.テスト(Test)
 アイデアを思いついてまず、萬平さんが行ったのは、アイデアの説明です。これも非常に重要なプロトタイプだと思います。福子や福子の親戚家族に説明し、その反応から、何を作らなくてはいけないかを掘り下げていきました。上記の5つのビジョン策定においてもこういったプロトタイプとテストの繰り返しで、決めていっています。
 次に、調査です。ラーメン屋さんを巡って、ラーメンの研究を始めます。既存のラーメンがどのようにして出来上がっているのかを調査し、そして、思いついたアイデアはすぐにトライしていきました。鶏ガラにより安全でおいしいスープにできる。麺は生めんでは常温で保存できないから、パスタみたいな乾麺が良いのではないか。と考え、鶏がらスープにパスタをゆでて作ったものをラーメンとして作って、食べてみたりしていました。こうしてすぐに作って食べてみることで、何が課題かを明確にして、スピード感を持ってどういったものを作るべきなのかを具体化していきました。

3-3. 作りたいものを具体化する
 こうしたプロトタイプとテストにより、最終的には、
「スープの味が練りこんである乾麺を作って、その麺にお湯を入れれば食べられるおいしいラーメン」
という具体的なソリューションまでたどり着きました。アイディエーションの観点では、
・福子などにアイデアを募って、ブレストしながら集合知で辿り着いたこと
・とろろ昆布がお湯で染み出していくのを見て、こういう麺にすれば良いんだ!と、身近な事象を転用したこと
がポイントと感じました。
 最後に、もう一つ重要なことをしていました。それは「名前」をつけることです。自分が作りたい未だ見ぬものを、誰もが想像できるような一言で説明できる名前にすることは、新しいものを作るうえでの共通言語になるため、重要だと思います。名前を「即席ラーメン」とつけたことは、萬平さんの起こすイノベーションを決定づけたと思います。

と、デザイン思考のプロセスに乗っ取って、ラーメンのコンセプトに辿り着くまでの流れを説明してきました。さらに、こういったプロセスだけでなく、萬平さんを取り巻く「環境」もイノベーションを起こす上での欠かせない要素だと思います。

まんぷくに見るイノベーションを起こす環境

 即席ラーメンを生み出すには、デザイン思考的なプロセスと、その発想力だけでは実現できません。萬平さんを取り巻く環境が後押ししています。以下3点です。

1. 圧倒的な過去の実績
 まず、忘れてはならないのが、萬平さんが稀代の発明家であったことです。過去に映写機や栄養食である「ダネイホン」を発明し、実用化した経験があります。そんな経験があるからこそ、こんなものを作りたい!という実現性が伴っていないアイデアの実行を周りが支援できたのだと思います。

2. 圧倒的な福子の信頼
 そして、その実績を後押しするのが、福子の圧倒的な信頼です。自分ではどんなものを作るのか想像もついていないのに、萬平さんなら作るのだと絶大な信頼を寄せ、誰が何と言おうと、子どもがいじめられようと、萬平さんはすごいラーメンを作るのだ!と言って、信じて止みません。
 これにより、逆に萬平さんも後戻りできない状況になりますし、二人三脚で諦めずに進められたと思います。

3. 周りの支援
 これも過去の実績があってこそですが、萬平さんが新しいことを始めるなら何が何でも手伝います!と言ってくれる過去の同僚がいるのは、実現に向けた大きな後押しになっていると思います。それだけ人を惹きつける萬平さんの魅力は、やはり情熱、熱狂にあると思いますし、尊敬しかありません。

 例えば大企業で新しい〇〇を始めたい!とプレゼンしたとしても、何馬鹿なことを言っているんだ、と一蹴されて終わってしまうことも多々あると思いますし、ましてや、今回の即席ラーメンのように、みんなが「はぁ?」と言っている状況の中、GOが出せる企業はまずないと思います。
 それなのに、本当に数年の月日をつぎ込み、最終的には実現させて大成功させてしまうのは、本当に並大抵のことではないなと、もう感銘しかありません。

以上、まとめてみました。
大きく分けて、デザイン思考的な発想と具体化のプロセス、そして萬平さんの熱意を支援できる環境、の2点にイノベーションの要素が詰まっているという内容でした。現代ではモノであふれていますし、インターネットが普及している中で、顧客ニーズは分散し、新しいことを生み出すのはさらに複雑化していますが、イノベーションを起こす上では、今でも変わらぬ重要な要素だと思います。
私もいつか、熱意と共に、世界中の人を笑顔にできるイノベーションに辿り着きたいと、夢に見ています。まずは、小さくても実績を伴わせていかねばなと、実感しました。

オンラインサロン デザイン思考研究所を開設しました。
月額800円で、こう言った日々の事象をデザイン思考で考える投稿をしたり、実際のワークショップの開催をしたりしています。
ご興味あれば是非ご参加ください!
https://community.camp-fire.jp/projects/view/203644

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?