デザイン思考とリーンスタートアップ
アイデアの実現に向けた話をしましたが、今回もそれに関連して、「リーンスタートアップ」と、「デザイン思考」の関係についてです。
リーンスタートアップ
リーンスタートアップはご存知の方も多いと思いますが、エリックリースの著書「リーンスタートアップ」で有名な、特にシリコンバレーなどで実践されていて、スタートアップの立ち上げに有効なプロセスです。
詳細に関しては、是非本などを読んでいただきたいのですが、
重要なプロセスは、
仮説→構築→計測→学び
のサイクルで、
これを「できる限り早く」実施することで、早期に失敗しながら、アイデアの確度を高められます。
できる限り早く実施するためにMVP(Minimum Viable Product)と言われる、必要最小限の「構築」が推奨され、リーンキャンバス、ビジネスモデルキャンバスなどのフレームワークが使われたりします。
そもそも、新規事業のアイデアは発想の多くは「うまくいかない」ことがほとんどで、そのため、「早期に仮説検証、失敗しながら進めた方が良いよね」というのが根源にあります。
デザイン思考とリーンスタートアップの関係
デザイン思考のプロセスの後半に、Prototype → Testがあります。これも早く安くプロトタイプ をしてユーザーへテストし、そこで得られた学びを次の問題定義やアイデアの改良に活かすという点で、リーンスタートアップ的と言えます。不確かなものへの学びを深めるために、早くにプロトタイプを作って検証するという意味で、考え方は同じです。
ここからは自分の理解ですが、それぞれの関係や違いについて、解説します。
■デザイン思考はあくまで人間中心の学び
デザイン思考のプロセスは、基本的には「人間中心」のプロセスです。人間を理解し、人間が抱える問題に気付き、人間を助けるプロセスです。
ですので、ここで位置付けるプロトタイプとテストは、やはり人間を理解するためのプロトタイプとテストです。
・考えたインサイトは正しいか
・設定した問題で本当にユーザーを幸せにできるのか
・考えたソリューションアイデアは、ユーザーの問題を解決できそうか
を知るために行うのが、プロトタイプであり、テストです。また、このような人間理解の側面から、明確な計測指標を設けなくても、学び、成長ができます。つまり、インタビューをしていく上で見つかったインサイトや、プロトタイプ を体験してもらった言動から得られた気づき、学びなどは、予想することができませんし、インサイトのような表に出ないことは、そもそも計測が困難です。
このように、フェーズで言えばより前段の、人間中心の「マーケットイン」のプロセスが、デザイン思考です。
■リーンスタートアップはビジネス全般の仮説検証
リーンスタートアップの原則は、上述の通り、仮説→構築→計測→学びです。この仮説には、もちろんデザイン思考で語られているような人間の理解もありますが、もっと事業性の検証に近いような仮説も含まれます。
まず考えた新規事業のアイデアがあって、そのアイデアの妥当性を検証するために必要な大量の仮説と検証が、リーンスタートアップの対象です。
・○○な人は××できれば△△円を払う
・□□というチャネルは、我々の製品を取り扱ってくれる
・●●なコミュニティに訴えれば、製品は広まるはずだ
など、仮説の対象は様々です。
そして、それぞれの仮説について、必要最低限のMVPと、定量的な計測指標を持って進めていきます。このように、基本的には新規事業アイデアがベースで、フェーズで言えばより後段の、「プロダクトアウト」のプロセスが、リーンスタートアップです。
デザイン思考とリーンスタートアップの関係のまとめ
それぞれの関係をまとめます。
まず、不確かなことを早期に検証していくと言う考え方は同じです。その中で以下のように違いがあります。
・フェーズ
アイデア発想から事業化までの中で、より前段に位置するのがデザイン思考で、後段がリーンスタートアップ。
・計測指標
インサイトの気づきなど、曖昧で良いのがデザイン思考。基本的には定量的な計測指標を設けるのがリーンスタートアップ。
・考える起点
人間中心で「マーケットイン」なデザイン思考。新規事業アイデアを起点に仮説を元に進めていく「プロダクトアウト」なリーンスタートアップ
・概念
どちらもプロセスとして語られることが多いですが、概念的には、デザイン思考はマインドセット、リーンスタートアップはマネジメント論。
以上、なんとなくご理解いただけましたでしょうか。実際に事業開発を進める場合は、プロセスを明確に分けて考える必要もないですし、違いなどを知る必要もないですが、非常に同じような文脈で、似たような方法論として語られることが多いので、私なりの理解を説明させていただきました。
それぞれの意味を理解し、必要な時に有効に活用いただければ幸いです!!!
補足:シリコンバレー好きの豆知識
リーンスタートアップは、Yale大学のエリックリース氏の著書で有名ですが、実はこの考え方のベースはUC BerkeleyやStanford大学で教える、エリックリースの会社の投資家でもあったSteve Blank氏の考え方がベースになっています。また、デザイン思考は、ビジネスへ適用させたのが、デザインコンサルティングファームのIDEOが発端とされていて、そのIDEOの創設者であるDavid Kelly氏が、Stanford大学でd.schoolを創設したことで普及しました。共に1990年代の提唱から2000年代前半への大学展開で、共にStanford大学で、どちらもシリコンバレーの発展に根付いた考え方なのです!!