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イノベーションの種類と、成立条件

イノベーションについて、自分なりにまとめ、解説したいと思います。特に今回は前提となるイノベーションの種類成立条件についてです。

イノベーションの種類

そもそも、イノベーションは非常に定義が曖昧です。私も明確な定義はわかりません。おそらく、「市場を大きく変えた今までとは形態が異なるモノ/コト」をイノベーションと呼んでいるような気がしています。

イノベーションには種類があります。イノベーションに関する名著である「イノベーションのジレンマ」から解釈すると、漸進的イノベーション、革新的イノベーション、破壊的イノベーションの3つがありそうです。

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この図は、3種類のイノベーションを示したものです。横軸に時間、縦軸に性能をとったときの移り変わりを示しています。

掃除機を例に、時代を10年くらい前に遡ったとき、紙パック式の掃除機がスタンダードでした。そして、その紙パック式の掃除機の中で吸引力をできる限り向上したり、収納性を良くしたりと、性能の向上を図ってきました。こうしたいわゆる漸進的な成長が、「漸進的イノベーション」です。感覚的にはこれは「イノベーション」とは感じないかと思います。

そんな中出てきたのが、サイクロン式の掃除機です。圧倒的な軽さと吸引力で掃除機市場の大きなシェアを奪っていきました。今までの性能を大きく成長させる新しいカテゴリであり、これは「革新的イノベーション」です。ただし、上の図の通り、「掃除をする」という体験は変わっていなく、同じ性能、同じ2次元のグラフの中で戦っています。

次に出てきたのが、ルンバに代表されるロボット掃除機です。ご存知の通り、「無人」で掃除をしてくれるという新しいカテゴリを生み出し、爆発的にヒットしました。これは、今まで人が掃除をしていた中で、無人という「新しい価値」が存在し、上の図の通り、無人で綺麗に掃除をするという新しい性能軸に移行しており、これが「破壊的イノベーション」です。掃除の能力(部屋が綺麗になるか)だけを言うならば、人がサイクロン掃除機で隅々まで掃除をした方が断然良いのですが、別の価値がルンバには存在するため市場に広く受け入れられています。

このように、機能改善が「漸進的イノベーション」。同じ体験の中で劇的な性能向上を生み出すものが「革新的イノベーション」。新しい価値を生み出すものが「破壊的イノベーション」です。

ニーズの存在を忘れてはいけない

ここで忘れてはいけないのが、ニーズの存在です。ユーザーが欲しいと思わない性能をいくら劇的に向上させたところで、誰も喜ばないですし、市場を大きく変えることはできません。

そしてこのニーズの非常に厄介なのが、ニーズは人によっても違うし、性能軸によっても違うし、時間で変化したり、誰も気付いていないニーズがあったりします。市場の変化や、景気などの社会情勢の変化の影響も受けます。性能は数値化できても、ニーズは数値化できませんし、未来の予測は尚更難しいのです。上の図の時間、性能、性能の種類の3次元の軸に当てるのならば、ニーズは以下のように3次元的に凹凸しているイメージです。

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革新的イノベーションの文脈では、性能を劇的に向上させるので、その劇的な向上でニーズが満たされる必要がありますが、まだ見ぬレベルの性能へのニーズの有無は想像が難しいです。

破壊的イノベーションの文脈では、新たな性能の軸を開拓しますが、新たな性能など、もちろん誰も知りませんので、そこに存在するニーズの想像はより一層難しいのです。

そのため、イノベーションのジレンマで語られているように、大企業は既存の成功に盲目的になり、失敗を恐れ、後に失脚するのです。

イノベーションは「ニーズ」「実現性」「事業性」の交点を見つけて初めて成立する

前章では、ニーズについて詳しく触れましたが、では、イノベーションはどういう時に成立するのか。デザイン思考の中で良く語られている図に、以下の3つの円から構成されるベン図があります。元ネタはデザイン思考の提唱者であるデザインコンサルファームIDEOです。

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この図の通り、イノベーションは、DESIRABILITY(ユーザーニーズ)、FEASIBILITY(実現性)、VIABILITY(事業性)の3つの交点に存在します。どれか1つが抜けても、市場を大きく変革することはできません。

・ユーザーニーズ:ニーズが存在するか
・実現性:適正なコストで今までになかった価値を提供できるか
・事業性:持続的なビジネスであるか
この3つの円の交点こそがイノベーションなのです。

さらに言うならば、そもそも3つの円の交点に存在するものは「誰もやっていない、新しいもの」でないとイノベーションではありません。

革新的イノベーションでも、破壊的イノベーションでも、この3つの条件は変わりません。

イノベーションのスタート地点

では、どうやって誰もやっていないアイデアで、ニーズ、実現性、事業性の3つの交点を見つけるのか。
この3つの条件は、それぞれイノベーションのスタート地点になります。

・ユーザーニーズからのスタート
 --家にいない間にロボットが掃除してくれたら良いのに

・実現性からのスタート
 --高速な回転による吸引技術を思いついたが、良いアプリケーションはないか

・事業性からのスタート
 --最近CtoCのシェアリングエコノミーが流行っているけど、今までにない何かに応用できないか

みたいな感じです。実現性からのスタートは、革新的イノベーションにつながりやすいですし、ニーズや事業性からのスタートは破壊的イノベーションにつながりやすいです。
どこからスタートしても良いので、是非、素敵なアイデアと行動力で、イノベーションを起こしてください。


以上、イノベーションの種類と、その成立条件について書きました。革新的イノベーション、破壊的イノベーション、どっちが良いと言うことでもなく、起点もどこからの起点が一番良いと言うことでもありません。全て、イノベーションになったものは素晴らしいです。

そんな中、時代的にイノベーションは革新的イノベーションから破壊的イノベーションに注目が集まる傾向にあるのですが、その辺はまた次回、書きたいと思います。

イノベーションは語るものではなく、それ自身を目的にするものでもないのは重々承知していますので、私は、前に進みます。


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