具体と抽象、ラダーリング
ワークショップなどでよく出てくる、具体と抽象を行き来するためのラダーリングという方法について、紹介させていただきます。
単純に言ってしまえば、
抽象化をラダーアップ
具体化をラダーダウン
と表現しています。
ラダーアップ
ラダーアップは抽象化であり、背景や感情的な心理を探る場合に使います。
デザイン思考では特にインタビューの中で「5 Whys」、なぜを5回繰り返すと言いますが、これは正にラダーアップすることでより感情面の情報を引き出すために使います。
観察では、事実に対してその理由を探ることでインサイトを探りますが、やはりWhyによるラダーアップを行っています。
ラダーダウン
ラダーダウンは具体化であり、話の粒度を細かくしたり、客観的な理解を深めるために使います。
「How」で進めていくのが、このラダーダウンです。
例えば、デザイン思考では、インサイト発掘で本質的な欲求に辿り着いたら、「ではどのように解決するのか」と、まずは問題の定義を行いますが、正にラダーダウンの作業です。
共感フェーズのインサイト発掘でも重要なラダーダウン
前述の通り、デザイン思考の共感フェーズにて行うインサイトの発掘では、主にラダーアップを進めることで、感情面の心理を探っていきます。
ただ、良く「飛び過ぎ」てしまうことがあります。梯子を複数弾飛び越して登ってしまうイメージです。
極端な例で言うならば、
インスタグラマーはいいね数を伸ばしたい
[Why?]→ 幸せになりたいから
みたいに、究極の欲求にいきなり言ってしまう場合があります。
「幸せ」はあまりに極端ですが、「承認欲求を満たしたい」とかも、マズローの5段階欲求ですので、かなり抽象度が高いです。
こうなった場合は、反対に、
「どういう要素が幸せなのか」
「どういったことで承認欲求を満たされたいのか」
みたいにラダーダウン(具体的な方向)に持っていくと良いです。
例えばですが、「特定の友人だけの深いコミュニケーションによる承認欲求」のようにしていくことで、全く当たり前の抽象的な欲求にユニーク性を持たせられるようになります。
逆も然りで、問題定義の際、今は問題を定義する段階なのに、具体的な解決策まで具体化が飛んでしまうこともよくあります。その場合は反対に、一旦ラダーアップして問題定義に戻ります。
ラダーアップなのか、ラダーダウンなのかを意識すると良いワークショップになる
ワークショップの際、様々なワークを決められた時間で行っていくと思いますが、今のワークはラダーアップ(抽象化)なのか、それともラダーダウン(具体化)なのか、が曖昧になってしまうことが多々あります。曖昧に進むと、混乱を生み、良いアウトプットにつながりにくいので、ファシリテーターの方は意識すると良いと思います。
以上、ラダーリングについて解説しました。
抽象化は、2019年最も売れたビジネス書であるSHOWROOM代表 前田裕二さんの「メモの魔力」がすごくわかりやすく説明されているのでオススメです。
ちなみにこのメモの魔力では、抽象化を「Why型」「How型」と表現されています。
メモの魔力では「事実を転用できる概念に変えること」=「抽象化」であり、
上記の幸せの例のように事実がフワッとした内容の場合は、ラダーリング法的にはラダーダウンで、フワッとした内容をHow型で特徴に分解することで転用できる概念にしており、メモの魔力的にはそれを抽象化と表現していると理解しています。
メモの魔力で語られている抽象化は本質を探る作業という意味でデザイン思考的にも非常にわかりやすく、体系的に説明されています。
■関連記事
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・デザイン思考の1st step: 共感
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