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「おもてなし」でイノベーションは起こせるか~HELLO, DESIGN の学び~

 先日、Newspicks Bookより、HELLO, DESIGN 日本人とデザインが発売されました。デザイン思考の本場であるIDEOのTokyoオフィスに所属されていた石川俊祐さんの書かれた本です。日本人のデザインの誤解から始まり、IDEOで培ったデザイン思考のマインドセット、デザイン思考のプロセス、組織と個の在り方と、デザイン思考をゼロから学びたい方にもわかりやすく説明されています。おススメです。(以降、ネタバレを含みます。)
 何よりも私が感激したのは、終章「デザイン思考 日本人最強説」です。序章でも、日本人はデザイン思考のポテンシャルにあふれていると書かれており、正直「?」だったんです。デザイン思考のような課題発見が苦手で、改善が得意な日本が、なぜデザイン思考のポテンシャルにあふれているのか。どんな話が展開されるのか、わくわくしながら読み進めていきました。
 そして、その答えは、「優しさ」にありました。

日本人のおもてなし精神は、デザイン思考である

 日本人のもつ「優しさ」は、お・も・て・な・し の精神でした。おもてなしは、人を観察し、相手に喜んでもらえるよう細かな気遣いで実現されていて、これはまさに人間中心のデザインそのものだというのです。石川さんは、このおもてなしを「人間中心の優しいデザイン」と表現されていました。デザイン思考ができる何百年も前から、日本人にDNAレベルで根付いているので、日本人は最強のデザイン思考家になれるのではないか。というのです。

「おもてなし」でイノベーションが起こせるか

 では日本人のおもてなし精神でイノベーションは起こせるのでしょうか。もちろん、デザイン思考はイノベーションのためのツールだけではないですが、今回はイノベーションの視点で、考えていきます。

おもてなしの3つの心得
 おもてなしの心得は、以下だそうです。この心得に、イノベーションの要素が存分につまっていました。
①想定外の気遣いをすべし
②見返りを求めるなかれ
③「考える時間」をつくるべし

①想定外の気遣いをすべし
 想定外の気遣いとは、お客様の期待をいい意味で裏切るような圧倒的気遣いです。この裏切りこそが、お客様の潜在的な心理であるインサイトをついていると思います。まさに、デザイン思考です。
②見返りを求めるなかれ
 日本人はチップなどの見返りは求めませんが、この見返りを求めないGiveの精神は、発想の制約を取っ払えるので、イノベーティブです。例えば、新規事業を初めからビジネスとして考えてしまうと、これ儲からないよね~となってしまってその先に進まなくなります。そこには一旦発想の制約を取っ払う必要があります。
③「考える時間」をつくるべし
 これは、心構えの話で、物思いに耽られるように、自分の心に余裕を持つことが、おもてなしには必要です。これもイノベーティブです。殺伐としたオフィスの閉鎖空間にいても、何も思いつきません。心に余裕を持った状況こそが、良いインサイトの発見を生み、良いソリューションの発想を生むのです。

つまり、おもてなしの心得を整理すると、以下だと言えます。
"心に余裕を持った状態で、見返りの制約に捉われない自由な発想で、お客様のインサイトを探り、期待を超える行動をする。"
実にデザイン思考的です。イノベーションが起きそうです。

日本人はプロダクトやサービスに「おもてなし」が使えていない
 この日本人のおもてなしは、考えてみると接客などの人対人の状況でしかできていない気がします。「もてなす」という言葉に、主観と相手がいるので、当たり前かもしれません。
 プロダクトやサービスとなると、提供する価値は何か?みたいな観点になって、すこし「おもてなし」からずれている感覚になります。つまり、日本人はおもてなしというデザイン思考的行動を、人対人ではできるのに、プロダクトやサービスを介すとできなくなっていると感じました。

「おもてなしするにはどうすれば良いか?」でイノベーションを起こす
 おもてなしは心得からも非常にデザイン思考的であるとわかりました。ただ、このおもてなしが、プロダクトやサービスに活かしきれていないのです。つまり、反対に言えば、おもてなしを活かせばよいのです。シンプルな答えに辿り着きました。
 「この人をおもてなしするにはどうすれば良いか?」という問いを起点にアイデアを生み出せば、きっとイノベーションは起こせます。別に直接対面でもてなす必要はありません。サービスでも、プロダクトでも、どんなソリューションでも良くて、ただ、「この人をおもてなしするにはどうすれば良いか」と考え、最良の方法を創造するのです。この発想の起点が、日本人をデザイナーにして、イノベーティブな発想を助ける気がしています。
 デザイン思考だ!インサイトだ!というと、「何それ?」となりがちですが、日本人ならば、「おもてなし」と言われただけで、共通言語として、勝手にインサイトを探るモードになって、新しい発想でソリューションがどんどん生み出されていく気がして仕方ありません。

結論、「おもてなし」で日本人はイノベーティブになる

 HELLO, DESIGNの学びから、おもてなしでイノベーションが起こせるか?という点を考えてみました。そして、結論、おもてなしを使えば、日本人はイノベーションを量産できる可能性を秘めていると思いました。
 さらに言えば、おもてなし起点の発想だけにとどまらず、実際に考えたアイデアを実践して、相手をおもてなしできたか?という指標でブラッシュアップを続けていけば、デザイン思考のすべてのプロセスをおもてなしの観点で実行できます。相手をおもてなしできたか?という指標も、日本人なら共通言語としてうまくワークするような気がします。

以上、HELLO, DESIGNの終章、「デザイン思考 日本人最強説」をイノベーション観点で考察しました。日本人最強でした。この「おもてなしするにはどうしたら良いか」の観点で実際に人を観察し、発想していくとどうなるのか、実験してみようと思います。面白くなる気がしています。


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