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"公平"な50m走、「ユニバーサルかけっこチャレンジ」というチャレンジ

スポーツにはルールがあり、参加者が公平に競技で競い合えるよう設計される。一方、ルールがあまりにも複雑であったり、公平性に疑問が残る場合には正直見ていて単純に楽しむことは難しい。実は私にとってパラリンピックはそんな競技ばかりだ。

そんなことを考えながら、周りの選手たちやコーチと挑戦しているのがこのユニバーサルかけっこチャレンジだ。

クラス分け

最初に行っておくが、パラリンピックを批判するつもりは一切ない。公平性とエンターテイメント性のバランスを考えた一つの準最適解だと考えている。

私は義足アスリートのカーボン性の板バネ、ブレードの開発を通してアスリートのサポートや義足の子供が走ることを支援している。その中でパラリンピックのクラス分けがとても理不尽であると感じてしまうことも多々ある。

例えばXiborgアスリートたちが戦っているクラスであるT64。片足下腿と両足下腿義足の選手たちが競い合うクラスである。この中にXiborgアスリートの池田樹生選手がいる。この選手は右足の下腿が義足である上に、右腕も義手を使用している。足だけでなく片腕もない状態で、T64のアスリートたちと競争しているのだ。タイムだけ見てみると、現在日本の4,5番手の選手とだけ思われがちであるが、本当にそうだろうかと私はいつも疑問である。ちなみに本人はこれを言い訳にしたことは一度もない。

池田樹生選手

また、日本を代表する山本篤選手はT63の片足大腿義足の選手だが、彼は交通事故で片足の大腿部を切断している。一方で彼のライバルの多くは切断でなく膝離断といい、大腿骨が丸々残っている状態なのだ。一見同じような条件に見えるかもしれないが、実は膝離断の選手たちは足の断端で立つことができるほど義足側の足で強く地面をけることができ、有利であると考えられている。さらにいうと、T63の中には股関節からない股離断の選手やローテーション手術(足首から先を180度反転させて膝関節の代替として移植する手術法)で膝関節の代わりに足首関節を使用できる選手も含まれる。シンプルに考えて、股関節もない選手が股関節のある選手に勝つことは少なくとも現段階ではほぼ不可能に近い。

山本篤選手(左)

他にもたくさん例があるが、悪くいえばクラス分けはたまたま運よく有利になることができたアスリートたちで競い合うルールになってしまっている。

ポイント制という代替案

一方、ロンドンパラリンピックの走り幅跳びは下腿切断と大腿切断のアスリートたちが一緒に競い合った。この時にはポイント制が導入され、1位は下腿義足の選手だったのに対し、2位から5位までは大腿義足の選手だった。障害の重度に応じてポイントが加算され、順位が決まるルールだ。

よりユニバーサルにするために、我々が50m走のルールで提案するのはこのポイント制だ。同じT64でも残っている足の長さや腕の欠損、T63でも股離断、大腿切断、膝離断、ローテーションと別々に加点ポイントを決めることができ、パラリンピックのクラス分けよりも障害の重度をより細分化して考慮することができる。また障害だけでなく、性別や年齢も同様にポイントでより"公平に"することが可能となる。メリットは、どんなランナーでも同じスタートラインにたち、同時にスタートを切れるところだ。デメリットはゴールした瞬間は誰が勝者かわからず、クラス分けに比べエンターテイメント性にかけるところだろう。

先日、トライアル としてユニバーサルかけっこチャレンジを開催したところ、100名以上の参加登録があり、そのうち7名が義足使用者であった。年齢や性別は本当に様々で動画を見ればその雰囲気がわかるだろう。まだまだポイント制も不十分でT64とT63しか考慮できていない。それも義足の子供たちの50m走のタイムのデータが世の中になく基準がわからないからだ。今後ともレースを繰り返し、様々な障害者の50m走のデータを集めながら、より"公平"なルールについて議論を深めていきたい。

次回10月に予定しているので、ご興味ある方、ぜひ参加をお願いします。ちなみにポイントはこちらで自分の年齢やタイムから計算できます。


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