Xiborg、アジア展開への序章
3月1日、タイのパラアスリート2名とxiborgのアスリート3名の合同練習会を墨田区で開催した。ただ開催した単発のイベントではなく、我々にとって今後のアジア諸国への大きなアクションのための第一歩であった。
日本、アジアの立ち位置
オリパラに出場する選手の地域別の割合を見ると、実はアジアはアフリカよりも少ない。もちろん、中国やインドの人口が多いことや、オリパラの競技が欧米よりに選定されていることもあるが、アジアはスポーツへの関心が少ないという一つの指標となってしまっている。特に我々が関わっている下腿義足(T62,64)の100mでは、パラリンピックに出場するための標準タイムを上回る選手は現時点でアジアに1人もいない。それだけ世界との差が生まれてしまった。
国や地域によってパラスポーツの広がり方は異なっている。ざっくりまとめると、メーカー主導のヨーロッパ、NPO主導のアメリカ、国主導のオーストラリアやブラジルなどに比べ、アジア諸国はパラスポーツに関してサポートが正直充実していないイメージだ。
2021年東京パラリンピックは、新型コロナウィスルの感染の影響をうけ、無観客での開催での中途半端な開催となったが、選手たちは素晴らしい活躍を見せてくれた。これを機に日本はリーダーシップを発揮し、アジアのパラスポーツの拠点となりえたのだが、そこまで国際感覚を持ちながら活動していた団体は少ない。スポーツ庁のスポートフォートゥモローは数少ない活動の一つだったが、残念ながら縮小傾向にある。
昨年日本はASEAN友好協力50周年を迎えた。さらには、2026年名古屋でアジアパラリンピックを開催予定でもある。貧困や経済格差、ジェンダー格差、高齢化社会、少子化問題などあらゆる社会課題を多々抱えるアジアで、パラスポーツの普及・育成・強化活動を広げる社会的意義は大きいと考える。そのような背景から、Xiborgはアジア展開のためプレスリリースを出し、1つの拠点としてのタイの活動を発表した。
経緯
2023年1月、タイのパラリンピック委員会からXiborgのブレードを購入したいという連絡を受ける。世界レベルでの大会で活躍する選手たちが履いているブレードがアジアの日本で作られているということを知ってくれていたのだ。これまで協力してきてくれた選手たちに感謝である。購入するにあたり選手の体重やソケットの作成方法に関するマニュアルを送付したところ、タイ国内で作ることは難しいかもしれないので、日本で作れないかという依頼を受ける。一方、タイ国内にはマヒドン大学のような素晴らしい製作所があることを知っていたので、間違いなくクオリティの高いスポーツ義足はタイでも作れるはずである。タイ国内の義肢装具士と連携し、スポーツ義足を制作した方が、今後のタイのパラスポーツにとってよいのではと提案、承諾を得る。
同年8月にタイに行く機会があり、パラリンピック委員会とコーチ、選手2名と面会。スポーツ義足に関する議論をし、2024年1月にスポーツ義足をタイ国内で義肢装具士と連携し、制作することに同意。
その後、先方での議論の結果、日本でやはり制作してほしいという依頼を再度受ける。将来的にはタイ国内でのスポーツ義足制作の体制を構築することを再度提案するものの、日本での制作を強く希望したので了承。2024年2月下旬に2名のパラアスリートを受け入れ、スポーツ用義足をトレーニングを一緒に行うことになった。
スポーツ義足制作
2月21日、大腿義足のランナーPhalathip Khamta選手、と下腿義足のランナーDenpoom Kotcharang選手、がコーチTawarit Chantapan
氏と一緒に来日した。Phalathip選手は昨年中国で開催されたアジアパラの大腿義足のクラスの100mで13.12秒という好記録を打ち出し、銅メダルに輝いた。またDenpoom選手は下腿義足のクラス100mで11.92秒で5位に入賞した。アジアでトップレベルにいる両選手ですが、Phalathip選手は16歳、Denpoom選手は24歳とまだ若く、今後世界レベルで戦うことを目指している。
両選手とコーチたちは2週間の間日本に滞在し、大腿義足は有限会社アイムス、下腿義足はStep4wardでの制作を行った。Xiborgは大腿義足のためのブレードはこれまで開発を行ってこなかったが、今後の知見のため、またイタリアの選手たちが採用しているアライメントを試すためにタイのパラリンピック委員会から依頼を受け、アイムスの義肢装具士たちと議論を重ねた。また、下腿義足に関しては、アスリートがいわゆるクラブフットという足首が内側に大きく変形した難しい形状をしており、剛性を保ちつつかつ難しい足にフィットする形状のソケットの制作を目指した。
公開練習
3月1日には、佐藤圭太(トヨタ自動車)、池田樹生(DAC)、春田純3選手がフクシ・エンタープライズ墨田フィールドで公開練習を行った。練習は佐藤圭太のコーチである大西氏がリードし、タイの選手たちは日本で新しく制作した義足の使い方を試しながら練習をこなした。練習後には、Run for the Futureのかけっこ教室に参加していた子供たちと一緒にリレーを行い、交流を深めた。
今後の展開
今回はタイの選手たちが来日したが、彼らのアジアにおける日本のパラスポーツへの貢献の期待は高い。それだけ日本がパラスポーツに力を入れていると思っているようだ。また、海外メーカーの独壇場となっている競技クラスでもXiborgのブレードを使ってメダルを獲得する選手が毎回いることから、義足技術に関する信頼も高いと感じた。一方で、まだまだ日本含むアジアやアフリカなどでのパラスポーツへの注目度は低く、投資も少ない。我々としては今回の活動を通じて、パラスポーツの競技力向上とエンターテイメント性向上、そしてスポーツ一般やリハビリ、高齢者のためのテクノロジーへの技術転用、スポーツを通じた健康寿命の延伸やWell-beingの促進などにつながるような大きなビジネスサイクルのグランドデザインにつなげることができればと考えている。
Xiborgはこのような活動を一緒に広げていただけるパートナーを募集しております。もしご興味ありましたら、info@xiborg.jpに連絡ください。