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「大西洋の宝石」テルセイラ島観光ルポタージュ

テルセイラ島が俺を呼んでいる

「テルセイラ島」

日本人の私達からすれば聞きなじみがないにも程がある。

テルセイラ島は大西洋に位置する、「ヨーロッパのハワイ」とも称されるポルトガル領アゾレス諸島の一島で、雄大な自然とカラフルな街並みが特徴である。ヨーロッパの中では有名なリゾート地として知られているらしい。

なぜそんな場所に私は赴いたのか?

当時リスボン大学に留学中だった私は現地での生活にも慣れ、以前から憧れだった「一人旅バカンス」を計画していた。そんな時にポルトガル人の友達がオススメしてくれたのが「アゾレス諸島」であった。遥か西に浮かぶ島の情景に思いを馳せながら、私は往復の飛行機と滞在予定の安宿を予約したのである。

一日目~いざテルセイラ島へ~

さっそく滞在の詳細を記していきたいと思う。今回はリスボンからポルトガル航空の直通便で向かった。(リスボンから飛行機で向かうのが一般的だが、アメリカの東海岸からも飛行機で行けるらしい)ちなみにチケットは往復で約15000円。

空港に到着し、まずはバスで「プライア・ダ・ヴィット―リア」という町に向かった。島内の移動はほぼすべてバスになるが、路線も少なく時刻表もしっかりしているので案外使いやすい。

プライアでは高台から見える街の景色が美しかった。一通り街を散策したら再びバスに乗って宿のある「アングラ・デ・エロイジュモ」へと向かう。

高台からの景色を見ながら昼食をとる。


島の沿岸部に沿って走るバスから見える景色は絶景。

そしていよいよ本日の宿である「Globo Happy Hostel」にチェックインすると、とても感じの良い従業員の方が迎えてくれた。明るくて綺麗で今まで泊まったホステルの中で1番良かった気がする。

夕食をとるついでに買い出しに行き、夕日に染まる街を少し散策した。

この島に来て気づいたことがあるが、この島の建物はどれもカラフルでありながら派手すぎず、独特の世界観を作り上げている。

カラフルな街並み


二日目~アングラの街を散策~

二日目は朝早めに起きて海沿いを散歩した。伝統的な朝市に寄ってみたが、出店もまばらで思ったほどの活気はなかった。調べてみると区画整備や高齢化などが原因らしく、かつての活気を取り戻せる事を願う。

朝食の後に再び街を散策し、黄色いオブジェが目印の展望台からアングラの街と青い海を一望した。四月上旬は観光シーズンとは少しズレているらしく、昼時でも街には落ち着いた雰囲気が漂っている。

アングラが一望できる展望台


夜はお手軽にポルトガル料理が楽しめる地元のレストランに入った。名物ステーキのビトックと赤ワインで9€!お得!

この日からRose Street Hotelに宿泊したが、こちらも一泊一人当たり10ユーロと旅人に優しい。キッチンとバストイレは共用だが十分安い。


三日目~まるでジブリの世界観、セラ・ド・クメ~

三日目はテルセイラ島に来た一番の目的と行っても過言ではないとあるスポットに向かった。アングラから40分ほどバスで移動し、目的地へと続くトレッキングルートに降り立つ。レンタカーでセラ・ド・クメに向かうのが一般的だが、折角なので私はバスと徒歩で景色を楽しんだ。

道中はどこまでも広がる牧草地帯で、牛がのんびりと草を食んでいる。まるでハウルの動く城に出てくる草原のよう。

一時間ほど歩き、遂に目的地である展望台に到着。ワクワクしながらデッキに近づくと圧巻の光景が広がっていた。

どこまでも続く新緑のパッチワーク、、、正直観光サイトなどで何回も写真を見たがこれほどまでとは思わなかった。正に逆写真詐欺。

永遠に広がる草原


時間によって草原に落とされる雲の影の形が変わったり、飽きずにずっと眺めていた。

展望台に向かうまでの道のり含めてセラ・ド・クメは自分にとって一生の思い出に残る場所となった。

その日の夜はアングラに戻り、オーシャンビューのレストランでハンバーガーを食べた。


四日目~小さな港町、サンマテウシュ~

四日目はアングラの西部に位置する小さな港町、サン・マテウシュを訪れた。教会の白色と海の深い青のコントラストが美しい。


ところで、国際免許も持っておらず、お金もない私にとって、観光をする際には徒歩で向かうのが当たり前である。この日も3ユーロほどケチって3時間ほど歩いたが、知らない土地を歩くのはなかなか楽しいものである。バスや車では気づけない現地の生活感を味わうことが出来る。

そして、夜はずっと楽しみにしていたテルセイラ島名物の「アルカトラ」を食べに行った。お肉はクセもなくホロホロですごく美味しい。今のところ島で口にしたものでまずいものなし!

テルセイラ島名物「アルカトラ」


五日目~自然の雄大さを感じるセバスチャントレイル~

五日目はセバスチャントレイルルートでトレッキングを楽しんだ。波の浸食によって出来た崖は迫力満点。


全部で2時間ほどのコースでアップダウンも激しくないので初心者にもオススメなコース。

夜は適当に入った店で「くだらない話」という料理を頼んでみた。どのへんに「くだらない話」要素があるのか分からなかったが、普通においしい豆シチューだった。


六日目~猫の楽園、アングラの絶景スポット~

六日目はアングラの街の絶景スポットに向かった。

道中のいたるところに人懐っこい猫がいて正に天国!

仲良くなった仲良くなった猫


山を登り切るとアングラの街と海を一望できる展望台に到着。アングラの街はほとんどの屋根がオレンジ色に統一されており、青い海とのコントラストが非常に綺麗。


最後の夕食ということで少し奮発し、ソーセージやエビのソテーなどのテルセイ島の名物を5品ほど頼んだ。スパイスのきいたサングリアとの相性も最高。

今回は一人で1週間も島に滞在したが、友人と行く旅行にも、一人旅にも良い点があると気づけた。ゆっくり自分と向き合う時間も大切である。


七日目~まさかの嬉しいハプニング~

テルセイラ島ともいよいよお別れかと寂しい思いをしながら空港に向かったが、なんとチェックインカウンターで「席を譲ってくれた方に700€の航空券をプレゼントします」と言われた。もちろん譲る。約10万円分の航空券なんて金のない大学生からしたら垂涎ものだ。

そしてなんと航空券だけでなく当日泊まるホテル、送迎、食事もついてきた。びっくり。正直「席譲っただけでこんなにもらっていいの?」とも思ったが、調べてみると「フレックストラベラー制度」というちゃんとしたシステムらしい。

無料で泊まった四つ星ホテル


日本の航空会社の謝礼は約1,2万円の航空券らしいが、ヨーロッパは10万円、、、流石海外、、、


最後に~プチ移住という旅行スタイル~

さて、ここまでテルセイラ島で過ごした一週間についてだらだらと文を連ねたが、いくつか気付いたことがある。

それは「観光する人」と「住む人」の二つの視点の存在だ。私は今まで「とにかく効率よく有名なスポットを巡りたい」という所謂「ファストツーリズム」のスタンスを取っていた。

しかし、なんとなく「表面しか触れていないのではないか」というモヤモヤを感じていた。そこで今回は一つの島に長く滞在する事を決めたのだが、自分の「視点」に変化を感じることが出来た。

一週間も滞在していると、私は次第に「まるで住んでいる」かのようにふるまい始めた。例えばスーパーで買った地元の食材で料理をつくったり、朝に散歩するというルーティンが出来たりした。

「観光する人の視点」ではなく「住む人の視点」を手に入れたことで、今までのファストツーリズムでは感じることのできなかった「地域と観光地の循環的な繋がり」を感じることが出来た気がする。

長い間一つの地域に滞在し、観光地のキラキラした面だけでなく、地元の方の生活や課題を知ることが「地域を盛り上げよう」という意識を動かすキッカケになりうるのだと思った。

海外に限らず、日本の地方でも観光客に「住む人」の視点を持たせてあげることで地域をより良く作り変えていくキッカケになれば良いなぁと。


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