私の始まり
今の私を作っているのは何だろうと思い、今回過去を振り返ってみようと思います。
私の人生の転機は、2010年に上海に行ったことです。当時、私はまだ小学校五年生でした。田舎の公立小学校に通い、水泳や英会話やピアノや書道を習っていました。性格はごく普通で、友人もいたし家族とも仲が良かったです。
そんな中、2010年5月のある日の帰りの会で担任の先生がいつも通りプリント配布や明日の時間割についての説明などをしていました。そこで何気なく配られたプリントには、「上海・南京研修募集」の文字がありました。
研修の内容は、「南京にある小学校と姉妹校となるため校内の小学生を10人程度募集する。そして中国で起きた地震のための募金活動を行い、現地に届ける。5日間の研修の中には現地の小学生との文化交流も兼ねるため、募集者が決定次第、文化発表のための練習を行う。」とのことでした。記憶があいまいなので細かくは覚えていませんが、大方このような内容でした。
私はこのプリントを見た瞬間、「あ、行きたい」と思いました。特に中国に関心があったわけではないですが、海外に行きたいという感覚を持っていました。ニュースでたまに見る海外を直接みてみたいなあという好奇心をもっていたと思います。
その日の帰り、仲の良い友達と上海研修について話していると、その子も興味があるということになり、さっそくその日中にお互いの親のOKをもらって一緒に行こう!という話になりました。
無事、お互いの親の了承が得られて上海に行くことになりました。しかし、研修については希望制で、募集人数が多ければ抽選を行うということだったので、行くことが確定してはいませんでした。
募集期間が終わる前に私は友人と校長室に呼ばれました。何か悪いことしたかな?という不安を持ちながら物々しい雰囲気の校長室に入ると、上海研修に行くことが決定したと告げられました。私はとてもびっくりしました。なんせ、希望者が少なくて私と友人は上海研修に行くことが決まったのです。
とてもうれしかったです。その時の感情は修学旅行に行くことが決まったようなそんなものでした。「やったー!ラッキー!」と思いながら当日まで過ごしました。
そして実際に上海に行きました。私にとっては初めての海外、初めての中国でした。そこで感じたものは、今でも忘れられません。
におい・風景・生活・道・車・服・髪型・話し方・食べ物・声
全てが自分が知っているものではありませんでした。私が知っている生き方がそこにはなく、あるのは中国の生き方でした。私は初めて外国を文化を感じました。生きてきた環境が違うだけで人はこんなにも違うのかと思いました。
私はそこから、いろいろな生き方があることを学びました。これまで私が「赤」だと思っていたものは私にとっての「赤」でしかないし、私にとっての「黒」は中国人にとっては「白」であるということを何となく感じました。
特に印象に残っているのは、姉妹校となる小学校に行く途中の田舎の風景です。道は土の道路で、周辺には家がポツンポツンとあって家畜がいました。そのため、バスの中まで動物のにおいが漂っていました。私は、本当にこんなところに小学校があって小学生がいるのか?と思いました。そして道を抜けると、急に真っ白な建物が表れました。
バスがその建物の中に入ると、マーチングバンドが出迎えてくれ、多くの小学生が拍手をしてくれました。
私は今でもこの光景をはっきりと覚えています。自分と同じくらいの小学生がいること、そして私たちを認知してくれていることに感激しました。
その後も、上海万博や上海料理のレストランなどに訪れたたくさんの思い出があります。
私は貴重な5日間を過ごして日本に帰ってきたときは、なんだかすごく不思議な気持ちがしていました。同じ時間を過ごしているのに、感じ方や生活はまるで違うことはなんだかすごいなあ、これが全世界で起きていることかあと思い、もっともっと違う世界を知りたいと思うようになりました。
そこから、私はほかの人とは違う景色を見たいと思うようになり、中学受験をすることを決めました。田舎だったので、同学年で中学受験をする子は私を含めて二人しかいませんでした。それでも、私は町から出て新しい人と出会うことで何か得られる・もっと知りたいと思ったので受験をしました。
そして、無事合格して往復二時間の学校生活が始まりました。中高一貫校だったこともあり、そこでは多くのことを学び、何度か海外にも行く経験をしました。大学受験では国際文化をもっと学びたいと思い、国際系の大学に進みました。
このように、私の価値観や好奇心のベクトルの根源はすべて2010年の上海にあります。
今回振り返ってみて、自分が歩んできた道をたどると自然だと思っていたこともすべてつながっていることが分かります。
判断基準軸や価値観はアップデートされていきますが、根本の感覚はそう変わらないのかなと感じました。そして、その感覚や感情を素直に受け入れて、自分だと自覚して次に進むことが私にとってすごく幸せなことであると思います。
無理に変わろうとするのではなく、自分だったらどうするかを素直に考えることでもっと自分にあった道や楽しい道が見つかるのかなと思ったりもしますね。