参考になった中国映画市場の考察コラム
映画ナタリーに掲載された徐昊辰氏による2023年の中国映画市場を考察したコラムが非常に参考になったのでメモしておきたいと思います。
記事よれば「中国映画市場の2023年の年間興行収入はトータルで549億1500万元(約1兆1000億円)」とのこと。国別の年間興行収入は北米に次ぐ2位ということですが、日本人の感覚からしたら圧倒的な数字。中国ドラマを観ていると、若い男女でも映画館にデートに行くシーンがよく登場するのですが、この数字を見て映画館に足を運ぶことが日常のレジャーの一つとなっているのだなと実感しました。
また、日本映画の「すずめの戸締まり」「THE FIRST SLAM DUNK」が中国での海外映画の年間興行収入2位3位にランクインしたとのこと。どちらもアニメ映画で、新海監督や原作漫画の人気を考えると納得ですが、記事ではファンに向けた宣伝戦略についても詳しく書かれていて参考になります。常々、中国ドラマにおいてもライブ配信や視聴者参加型のイベントなど、いわゆるインタラクティブマーケティングが積極的に行われていることに感心していたのですが、映画界でもいろいろな試みがあるのだなと思いました。
さらに、女性向けのサスペンスものが好調というのは、確かにここ数年の中国ドラマにも見られる傾向で、映画のヒットも女性観客の嗜好に左右されているという結果が興味深かったです。
なお、中国で受ける日本作品という観点で考えると・・・
最近、中国のSNSを見ていて思ったのは・・・
中国人が日本の作品に中国ドラマや韓国ドラマとは違う日本らしさを感じているらしいということです。
例えば、フジテレビの「silent」、Netflixの「First Love 初恋」、日本テレビの「ブラッシュアップライフ」といったドラマは中国のドラマファンの間でも受けていたという印象があるのですが、「間のある落ち着いた語り口」で「ピュアな初恋の感覚」や「フツーの人のフツーの日常」を描いた作風がとっても「日本的」という感想をよく見かけたように思います。
そういえば、岩井俊二監督の映画「Love Letter」は2021年に中国でリバイバル上映され、いまだにロケ地を巡るファンやレビューサイト豆瓣でコメントを書き込む人が絶えないのですが、これも上記で述べた「日本的」な作風に当てはまるかもしれません。
ハリウッド映画が不振という中国で日本映画に勝機があるとしたら、やはり中国の観客に刺さる独自の「日本的」な要素がある作品ということになるでしょうか。アニメ映画以外にも中国の興行収入ランキングにランクインするような日本映画が出てくるとしたら、それはどんな作品なのか、気になるところです。