見出し画像

成功するリモートワークを実現するための心得

新型肺炎が日本でも報告され始め、リモートワークを推奨する会社が増えてきている。私の会社でも遅れながらも今週から完全にリモートワーク体制に切り替えた。まだ経過が少ないのでこれからではあるが、今のところ順調といって良いと思う。

この記事ではリモートワークを実施するにあたり、準備してきたことや心がけていることを共有したい。正直これまでも何度か試してきたのだが、うまくいかないことが多くあった。この経験を踏まえて、リモートワークをまさにワークさせるために取り組んできたことをまとめてみた。

リモートワークへのモチベーション

最初に言っておくと、決してうまくいったという華やかな成功事例があるわけではない。やり続けた教訓とやり続けようと思ったモチベーションについて述べたい。ダイエットを続けられた理由のような体験談的な話だ。ただ、私は自分で会社をやっていることもあり、自由に選びやすい立場にあるため、多くの方には当てはまらないかもしれない。その旨ご留意いただきたい。

リモートワークのメリットはきっと言わずもがなであろう。個人の視点というところから言うと、特に、私は子育て中の身ということもあり、時間的に物理的にとても有難い働き方というのがあった。

子供が生まれる前は、通勤ラッシュの前に出社して集中できる時間を持ちやすかった。また、多少打ち合わせが長引いても吸収できてしまっていたということもあり、仕事に柔軟に対応できていた(悪い意味で)。それ故、リモートワークは全く必要なかった。

しかし、こういう働き方を習慣化してしまっために、途端に時間がなくなり、焦燥感に駆られる日々が続いた。そして真っ先に見直すことになったのは通勤ラッシュ帯の通勤だ。これがなくなるだけでも一日の負担は大きく減った。その延長で日によっては外出が多くなり、出社しても2-3時間しかいられないということがあり、それならば外出先から直帰を早める、そもそも出社しないというオプションは現実的だった。

リモートワークはやはり対面よりは話しづらく、顔もみえにくいため、正直なところやりづらい。大企業の会議室のように立派な設備があるわけではないのでなおさらだ。通信環境が悪く、声が途切れることもあり、気が散ることも少なくない。単純比較でいえば、対面に越したことはないというのは今も思っていることだ。それでも上述の実際に受けられる恩恵から考えると、これらのデメリットは許容範囲であった。

次に集団の視点からいうと、正直なところリモートワークの是非は個々人によって違うところで、みながみな望むという価値観の醸成は難しいところだと考えている。誰かにとっては理想的でも、誰かにとって強制に近い状態となる(ex.自分だけで完結せず、相手の都合次第ではオンラインになる等)。多くの企業にとってオペレーションが変わることのハードルも然ることながら、会社も個人の集まりであるため率先して取り入れるモチベーションにつながらない理由がここにあると思う。

その意味で新型肺炎によって強制的にリモートワークをはじざるを得ず、実験として試そうとする動きには注目していた。むしろ、こういう必要性がないと集団としてのモチベーションにはならないと思う。(後述のように最初からリモートワークありきな場合もあるが)

リモートワークで陥りがちな罠と対策

私の会社では有難いことに、インターンに来てくれる優秀な学生のメンバーに支えて成り立っている。安心して仕事を任すことができるのだが、リモートワークとなると不安がよぎる。たとえば、具体的には以下のようなことがよく起きる。

・都度確認していかないと報告・連絡・相談がなく、齟齬や抜け漏れが生じていたり、締め切りまでの余裕がないときに問題が発覚する

・人に相談すれば、すぐに解決できることも一人で悩み込んでしまい、時間をロスする。

・ミーティングをすすめるうえでの事前準備不足や通信不調等により、薄い議論もしくは最低限の議論で留まってしまう。

あるあるだと思う。ホウレンソウは働いている方にとっては共通の基礎スキルだと思うが、学生となると体育会系的な場にいないと普通身につかないだろう。私も人のことを言えたもんじゃないが(笑)

改善していくうえでは、個人単位と集団単位とで対策は変わってくるところだろう。

まず個人単位からでいうと、多くの場合、一度体験してみないと分からないことだ。失敗とまでいかなくとも、それに近い認識を持たないと実感を持ちにくい。単純なマニュアルがあれば良いわけでも、一度のミーティングで共有すれば解決されるものでもない。時間をかけて少しずつ改善し、習慣化していくものだと思う。

逆にいえば、一度身につけば、基礎のフォームとなり、以後ずっと役立つものでもある。たとえば、齟齬がないようにと、文章を丁寧にまとめるなどしているとあっという間に時間が経過する。かえって効率悪いんじゃないかと思えることは一度や二度ではない。しかし、やればやるほど慣れて短縮化できるだろうし、どこにいっても役立つ汎用スキルにもある。長い目でみると良い特訓の場になる。ただ、急ぎの場合にはそうもいかないことは意識しておく必要があると思う。

次に集団単位という視点からいうと、ここはマネジメントの世界だと考える。勤務形態や業務ツールの利用、ミーティング進め方などが必要になってくると考える。すべてをここでは語らないが、個人的に重要度が高い勤務形態を中心に言及したい。

①勤務形態

業務内容によるが、ひたすら打ち込み入力のようなアルバイトを除き、時給制や日給制はリモートワークは、多々難しい点があると考えている。

たとえば、システム開発のような仕事では、保守・運用のように既にオペレーションができあがっていている場合にはやりやすいと思われる。他方、新規の機能開発であったり、バグチェックとなると時間の見積もりがとてもやりづらく、少しの工夫の違いでかかる実績工数は大きく変わってくる。そのため、見積もり通りいかなければ焦りやすくなる。それこそホウレンソウがうまくできないと、リモートワークが破綻しかねない

どちからというと業務発注・年俸制というかたちの方が向いているのではないかと思う。

メリットとしては、いずれもやる内容が定義されているため、早く終われば終わった分だけ余暇ができるという意味で働き手のモチベーションが高めやすいという性質がある。また、やる内容が定義されているため、仮に予定どおりにいかず、時間が大幅にかかってしまう場合にも責任を持ってやりきるという点において管理しやすいという性質もある。

デメリットとしては、細かく実施内容を定義して、合意を得るというプロセスを経る必要がある。要件定義が必要であることや、フリーランス的な働き方が可能である方でないとやりにくい。仕事をはじめるまでに発注側も受注側もそれなりに負担を伴う。

昨年より少しずつこの発注型をトライしている。想像以上に時間を要したという声もあれば、やることが明確で良いなどというフィードバックを頂いている。時給や日給制の場合には、要件定義などのプロセスを細かく、かつ、厳密に定めなくとも、柔軟に進めやすく、やりやすさはある。しかし、やはり対面でないと難しいという性質はぬぐえない。

まだ試行段階で5人程度しか実施していないため、満足した進め方になっているか、サステナブルに続けられるか次第だと考える。引き続き実施してまた別の機会に共有したい。

②業務ツールの利用

(既に書くのが疲れてきたため、だんだんと端折ります 笑)

ツールの使い方とセットにして言及したい。ツール別に整理すると、以下のようなものがある。

・スケジューリング ・・・ Google Calendar、スプレッドシート 等

・タスク共有    ・・・ Trello、スプレッドシート、Github Issue 等

・連絡手段     ・・・ Slack、チャットワーク、Gitter 等

SlackやGitterなどは既に多くの方が利用していることと思うが、最低限のお作法や共通ルール的なものを決めておかないとリモートワークではコミュニケーションが滞ることが少なくない。たとえば、メンションをつけるとか、勤務している時間帯は勤務開始の旨、投稿しておくなどだ。対面では無意識で実現しても、オンライン上でないと意識的に実施しないとコミュニケーションがとれなくなることが多い

また、対面と違う形態もある。たとえば、DM(ダイレクトメッセージ)だ。個別に連絡するか、全体に連絡するかといった判断は対面の場合など異なることが多い。全体のチャンネルだと関係しない人にもメッセージが届いてしまうため、投稿が億劫になり、DMを使いたくなってしまうところがある。しかし、DMばかりやっていると、全体への共有が少なくなり、メンバー全体で状況の把握ができなくなったり、PM(プロジェクトマネージャー、取りまとめ役)が個別対応をすることとなり、負担が集中するといったことが起きる。

簡単に使いはじめられるものであるが、奥が深く、業務の進め方と密接な関係がある。奥が深いのでまた別の機会に言及したい。

③ミーティングの進め方

このトピックも奥が深い(笑)そろそろ長くて読むのも飽きてきたことと思うのでさらっとにしたい。

リモートワークでのミーティングというと、Skypeなどのオンラインミーティングのことを想定している。端的にいうと、A.打ち合わせ事前準備とB.ミーティング環境の2点が重要と考えている。

A.打ち合わせ事前準備

あらかじめアジェンダを設定したり、関連資料のリンクをアジェンダに貼っておくということだ。たとえば、打ち合わせ中に資料を共有しようと、資料を探し始めたり、Dropboxにアップしていたりすると、簡単に参加者全員の数分の時間を奪ってしまうことがある。対面だとラップトップごしに見せたりで済むことだが。用意周到な準備が必要である。

また、マイクやイヤホンが正常かも事前にチェックがいる。誰か一人がうまくいかないために、ミーティングが始まっても4,5分かかることが多い。集中力が高い最初の時点で出だしが悪いと、ロスが大きい。

B.ミーティング環境

意外と見落としがちな点である。外出先からの参加だと通信環境が悪かったり、雑音が入ることが少なくない。たとえばカフェなどだと、BGMが入ってきたり、隣の方の声が直に入ってくることもある。喋る側は気が散るし、聞く側は聞き取りづらく、ストレスフルになってしまう。

当たり前といえば当たり前のことであれば、オンラインミーティングというと、いつでもどこでもできると思ってしまいがちなところがある。静かに、かつ、通信も支障なく話せる場所というと思ったより場所は限られるのが実際と思う。見落としがちであるため、注意されたい。

リモートワークの指南書

ここまでは個人的に経験してきたことや心がけてきたことを中心に言及してきた。やや偏っていたり、抜け漏れも多くあると思うので、参考書籍を紹介したい。

Ruby on Railsの開発で有名な37シグナルズのジェイソン・フリード氏, デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン氏の執筆した書籍で、2014年に日本語版が出版されている。37シグナルズは各国に社員がわかれて働いており、年に顔をあわせることは数回しかないという。そんな状況でも世界的なサービスをつくることを実現しているリモートワークのプロであると言える。

私の経験談よりずっと汎用的で網羅性が高いと思われるため(笑)、参考までに目次を引用する。

目次

「リモートワークの時代がやってきた」
14 本当に集中したい人にとって最悪な場所とは?
20 なぜ多くの会社がリモートワークを実践しないのか?
25 リモートワークに最適な仕事とは?
32 リモートワークが仕事と趣味を両立させる?
39 リモートワークは社員の生活の質を向上させる?
49 リモートワークの2つの欠点とは?
     
「リモートワークの誤解を解く」
57 閃きの連鎖に必要な2つのものとは?
58 仕事をさぼる心配は必要ない理由は?
62 誘惑を感じることが意味することは?
74 大企業と比べない。本当に必要なことは?
77 仕事の評価の方法とは?
80 企業文化とは?
83 今すぐ質問する前に問うべきことは?
91 オフィスが必要かどうかの判断基準とは?
     
「リモートワークのコラボレーション術」
99 リモートワークを成功させるコツは?
103 画面を共有することのメリットとは?
112 チームの一体感を高める方法は?
115 リモートワークの方が正確な評価を得られる理由は?
125 オフィス仕事の邪魔をする2つのものは?
     
「リモートワークの落とし穴」
135 部下に対して心配するべきことは?
146 顧客の不安を取り除く5つのコツは?
     
「リモート時代の人材採用」
156 世界中の人を雇うことのメリットとは?
160 働き手にとってリモートワークの大きな魅力とは?
163 リモートワークに必要な人間とは?
167 社員の趣味を全力で応援する理由は?
178 使えない人材がすぐに明らかになる仕組みとは?
182 文章が上手くなるただ一つの方法は?
187 人材採用の決め手とは?
189 リモートワークの一番の練習法とは?
     
「リモート時代のマネジメント」
195 リモートワークを始めるベストタイミングとは?
198 マネージャーの役目とは?
209 リモートワークの格差をなくす方法は?
213 無駄な待ち時間を減らすベストな方法は?
219 社員の働きすぎを防ぐ方法は?
     
「リモートワーカーの仕事スタイル」
237 頭脳労働者のモチベーションを引き出す唯一の方法は?
239 モチベーションが上がらない意味とは?
249 リモートワークに向いている人とは?
253 職場で存在感をアピールする2つの方法は?
253 リモートワークにおいて存在感を示す方法は?
引用: Amazonレビュー First Penguinさん

本の感想としては、理屈は分かる、しかし、行うは難しという感想だった。いくつかテクニックも紹介されているが、それよりも実現したいことが何かを明確にし、そこから得られる恩恵をチームでどう共有し、共通の価値観を持つかというプロセスを学ぶのに適した本だと思う。

リモートワークを半ば仕方なく進めることになり、良い方法を知りたいという後ろ向きなスタンスだと失敗すると思う。私もこの本を参考にいろいろと試してみたが、なかなかこの本に書いてあることをなかなか活かせなかった理由はここにあったと考えている。

どんな働き方にも長所短所がある。リモートワークが可能になることで日本だけではなく、世界を相手に仕事が出来るようにしたいであったり、世界の優秀な方とコラボレーションできるようにしたい、今回のように新型肺炎が流行しても柔軟に事業存続させたいなど積極的に実現したいことが強くあるかどうかだ。

意外とこの視点が抜け落ちてしまいがちではないかと考える。大事なことはリモートワークで細かな一つ一つの要件が向いているか、できるかよりも、最後はどれほど構想する働き方を実現したいか次第にかかってくると考える。オプションは無数にあり、自ら作り出すことだって可能なのだから。私もリソースの都合上できていないが、留学生のインターン生も積極的に受け入れていきたいということもあり、視座を高く挑戦していきたい。

堀江さんが語る「テレワークによる働き方改革がすぐそこにきています」動画

すかさず堀江さんも、新型肺炎からリモートワークが見直されるという趣旨の動画を語っていた。さすが(笑)

WeWorkのように高スペックなオフィス空間がもてはやされたと思ったら、今度はリモートワーク。両者は働き方のスタイルというだけで、どちらか一択というわけではないと思う。いずれも生産性を高めるのに適しているなら、両方を柔軟にとりいれればよいし、どちらか一方でも良い。

時代の流れっておもしろい。働き方は永遠のテーマと感じさせられる。多くの方がさまざまな働き方を模索されていることと思う。この記事が少しでも参考になれば幸いである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?