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談義①:設計者の私がFMに巡り合った私的な理由

そもそも私がファシリティマネジメントに出会ったのは、建築設計の教育過程での、個人的な思いからだ。

1 :突如FMを語り出した私的な理由

 私がファシリティマネジメントについて研究を始めたのは大学3年の末。

 年に4回ほどあった設計の課題について考えていく中で、それぞれで求められる建物用途毎の、【その用途らしい】建物と比較して、【その用途らしくない】建物に可能性を感じた。”その用途らしくない”建物とは何か、とは、”これまでの使い方とは違った使い方ができることで、建物のサービスにイノベーションを起こす建物”ではないかと考え始めた。


 どんな建物の設計の依頼でも、最初は与条件として建物の用途が与えられる。その求められた建築用途に特化して設計を進めるのではなく、まずはその求められた建物をサービスの視点で分解し、再構築する、その組み合わせ方自体もデザインされた新しい用途に対して、理想的な建築を提案する、それこそが設計者の役割ではないかと考えていた。

 その頃私は、与えられた用途にただ純粋な建物を与える設計を”ビルディングタイプ論”と呼び、いつもビルディングタイプ論批判をしていた。

*ビルディングタイプ論について

ビルディングタイプ論と勝手に呼んでいるが、もちろん一般化されている論ではない。ビルディングタイプというワードで最も有名なのはおそらくニコラス・ペブスナーだと思う。彼は著書『The History of Bulding Type』にて、建物用途ごとの
プランニングの歴史を記述した。彼によって”Building Typeというのは言うまでもなく、建物の社会的な利用におけるサービス分類にもとづく建物タイプのこととして使っている。このような建築における”タイプ”の考え方について、Adrian Fortyは著書、『 Words and Buildings : A Vocablary of Modern Archtiecture』(2002)
邦題(『言葉と建築 語彙体系としてのモダニズム』 エイドリアンフォーティー 坂牛卓+邉見浩久 監訳 (2005))
で、「建築においては最も一般的な二つの類型学的な分類がある。一つ目は用途による分類ーー教会、
監獄、銀行、空港などである。そして二つ目は形態論的な分類ーー長いホール形のインテリアを持った建物、集中形式の建物、中庭のある建物、相互連結した区画を持つ建物、相互に独立した区画を持つ建物などである」と述べた。この二つの”タイプに関する見方を並べると添付のようになる。

用途における分類

形態における分類

このように、”ビルディングタイプ”と呼ぶ分類的視点については、各個人によって様々な分類がありそうである。

2:建築計画からFMへ

 ”これまでの使い方とは違った使い方ができることで、建物のサービスにイノベーションを起こす建物”を目指すようになった私は、サービスイノベーションを起こすことについて体系的に考える方法を探求していた。またこのころ読んだ本には、おそらく自分と同じような思いをしている建築家がいることを感じていた。

 こういった”ビルディングタイプ”に対する認識の違いは、私の感じていた疑問点に少しばかり影響している。最後にそのことを最も簡単にあらわした文章を引用したい。

 *INAX『10+1 No.2 制度/ プログラム/ ビルディングタイプ』図書出版社,1994 プログラムとビルディングタイプの関係性
「建築はプログラムが要求されることでつくられる。建築家はそのためによりよいビルディングタイプを考えるが、要求側のプログラムにはそもそも前提条件に前のビルディングタイプのイメージが入っているため、大きな変化はむしろ嫌悪として表れ、ビルディングタイプの進化は求められていない。ビルディングタイプが社会の効率化のために分けているが、そのビルディングタイプが制度になってしまうというジレンマ。」

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 そんな中で、より良い建物に向かって、与条件自体についてデザインを加えていくアカデミックな方法として「建築企画論」「ブリーフィング(英)」「プログラミング(米)」といったファシリティマネジメントの分野があることを知った。FMの分野において、長期的なサービス運用の視点における、建物の新しい見方に出会うことができた。そこに自分が理想とする設計に繋がる手がかりを感じたような気がし、ファシリティマネジメントの分野に飛び込んだのがきっかけである。

 今思えば、00年台にすでに何度も話題となっていた、「計画からマネジメントへ」という動きに”乗ってみた”というのが正しいかもしれない。

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3:発注者の視点から建築を考える

 「建築企画論」「ブリーフィング(英)」「プログラミング(米)」といった分野には、建築設計へとつながる前段階として、発注者がどのように情報を整理しておき、どのように伝達すべきかについての様々な知見が蓄積されている。とくに建築企画論は日本の有識者によってまとめられたものであり、著書も発刊されている。といった分野の知見が有効だと感じたわたには、建築設計へとつながる前段階として、発注者がどのように情報を整理しておき、どのように伝達すべきかについての様々な知見が蓄積されている。とくに建築企画論は日本の有識者によってまとめられたものであり、著書も発刊されている。といった分野には、建築設計へとつながる前段階として、発注者がどのように情報を整理しておき、どのように伝達すべきかについての様々な知見が蓄積されている。とくに建築企画論は日本の有識者によってまとめられたものであり、著書も発刊されている。

建築企画論

しかし、いざ設計者として様々なプロジェクトに取り組んでいくと、やはり個々において企画と設計の連携にさまざまな苦労がある。この苦労が様々なイノベーションへとつながるのもまた確かではあるが、次の談義では一旦、発注者としての設計への情報伝達について、議論を展開してみたい。


2022.03.08

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