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かずさ
2020年6月8日 01:49
「しっかし、今日は大変だったなあ」 着替えを終えた店長が、首を回しながらフロアに出てきた。 先に帰り支度を整えた俺と馨佳さんは、近所のコンビニで調達してきたつまみと缶ビールを開けている。この店では、始発が動くまでの間、こうして時間を潰すのが恒例だ。「そうですね。永山さん、もう来なくなっちゃいますかねえ」「ウチは変わらず来てほしいけど、他のお客さんもいたから、しばらくは足が遠退くかもな」
2020年5月30日 18:06
ここのところ、冬物のコートじゃ少し汗ばむような陽気が続いている。 どうしようか迷ったものの、今日はバイトもなく真っ直ぐ帰宅する予定だったので、厚手のパーカーを上着代わりに羽織ることにした。 時刻は午前7時50分。これから10分歩いて最寄り駅へ向かい、8時の電車に乗り、8時15分に乗り換えの駅に着く。そこからさらに満員電車に揺られること15分、正門まで5分で大学に到着。講義が始まるのは9時か
2020年5月26日 19:42
バックヤードに入ると、ちょうど店長が丸椅子から立ち上がったところだった。「お、来たな」「半月も休んですみません」「いんや。どうだったよ?」「はあ、まあ、良かったんじゃないかと……馨佳さんが観に来てくれたのはちょっとびっくりしましたけど」 細長いロッカーの扉を開け、ハンガーに上着を掛ける。リュックの中から引っ張り出したユニフォームは、まだほんの少し柔軟剤の香りが残っている気がした。「あ
2020年5月24日 21:25
バタン、という扉の音が室内に響くと、壁際に丸まった布団がもぞもぞと動き出した。「けーかー。まだ寝てんのかー」 たった3歩の廊下を抜け、弁当屋のロゴが入った袋をデスクの上に置いて振り返る。 布団の塊の脇にある目覚まし時計が指しているのは、11時を少し過ぎたあたり。カーテンが開かれた南向きの窓からは、明るい日差しが降り注ぎ、少しずつ室内の空気を温め始めている。「ほら馨佳、起きろって」 しゃ