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UXやサービスデザインに仕事が直結していなくても、 デザインを学ぶことには意義がある。

社会人にデザインの知見を、という想いで講師と学生が共になって日々の学びを深めているXデザイン学校。実際に学ばれてきた方々の声を届けていく、クラスルームインタビュー。第5回目はベーシックコースに通われた後、マスターコース、その後アドバンスコースに2年連続で参加されているという(!)原聡司さんです。

原聡司さん
大手精密機器会社にて長年ソフトウェアエンジニアとして製品開発に携わりながら、組織のボーダーを越えて価値観の違う人々と共創していくためにデザインの探究に励まれています。

ー現在、どんなお仕事をされていますか?

精密機器会社に勤めていて、入社してからずっと製品開発に携わっています。入社して約10年間はデジタルカメラのソフトウェア開発を行ってました。最初の担当は同じように作ろうとしても個体バラツキが出てしまうものを個体ごとに調整して求められる性能を満たす工場でしか動作しないソフトウェアを開発していました。その後は、プリンターやPCなど周辺機器との通信規格関連やイメージセンサーを制御する経験を通し、最終的にはプロカメラマンからの高い要望、特に連写スペックを満たすようなシステム全体に関わる設計を行ってきました。

ーなるほど、プロダクトデザインではなくてエンジニアでいらっしゃるんですね。

はい、デザイナーでなくエンジニアとして仕事をしています。デジタルカメラの開発業務は、社内には複数の事業体があり、私が所属していた事業体の技術を他の事業体へ水平展開していくプロジェクトに参画しました。いざ水平展開しようとすると会社が違う……くらい文化が違ったんです。使う言葉も結構違ったりして、あれ?これって自分が入社以来培ってきたものが意外と使える部分とそうでない部分があるなって肌で感じたんです。

で、外の世界では皆さんこういう時にどうしてるんだろうっていうのを頭の中で求め始めたのが、Xデザイン学校に足繁く通うことになるきっかけです。本を読んでも具体的に自分の仕事にどうやって落とし込めば良いか結局のところよくわからない状況でした。そのあとに、外部のセミナーに行って生の声を聞くだけでなく自分の悩みを伝えていくことを始めたときに、山崎先生と出会いました。講演内容も興味深かったこともありセミナー後の懇親会で「実はこんなことで悩んでるんです、社会人が学ぶ環境ってないですか?」と聞いた時に、Xデザイン学校を紹介してもらって2018年から通い始めました。

事業体の境を越えて、どう共に歩けばいい?


ー仕事でUXやサービスデザインの知識習得の必要に迫られてというわけじゃないんですね。

すぐに新しいサービスを世の中に出すことが求められていた訳では全くないですね。今まで培ってきたスキルなり仕組みや業務の進め方を活かそうとしたけど、意外とそのままだと使えないんだなってところで困っていたんです。事業体のボーダーを越えて相手と会話をしながら“相手が何をやりたい、僕が何をしたい”っていうのをうまく伝えたりカタチにしていくっていうのがすごく難しくて。だからこそ、それをどうやって世の中の人は実現しているんだろう?っていうのを一番知りたかったんです。山崎先生の三方良しって話もすごく共感させていただいたんですが、実際それってどうやるの?とかすごく知りたくて。

そんな自分のモヤモヤをクリアにしていきたい、そのきっかけにしたいっていうのが最初の一歩目でした。サービスデザインやUXと会社の業務はあまり直結してないんですが、Xデザイン学校の学びってすごく私のモヤモヤとリンクしてる気がしたんです。新しいサービスを世の中に出すわけじゃないんだけど、これから価値観の違う人と話をしながらうまく自分の価値観も伝えて理解してもらいつつ、また相手の価値観も理解していくっていうことが必要になると私の中で補完していくと……社内では得られない学びを受けられるんじゃないかっていう感覚が僕の中でピカッと光った感じでした。

もちろん、デジタルカメラを製品開発でも使ってもらう人のことをちゃんと考えながらということがありたい姿なんですけど、開発部隊へのインプットは製品の要求仕様がメインになっています。そうするとユーザがどう使うかっていう目線じゃなくて、仕様がどのように書かれているかという部分に目線がいってしまう。そんな環境で働いていた私が、作ったものが本当に使いやすいのか?とか本当に欲しいものがそこなのか?ということに意識が向く体験があったんです。それはプロカメラマンに使ってもらう現場に立ち会うことができて「この新しい機能ってこういう狙いで……」って話すと、「いやそういうことじゃなくて、こういうところでこういう風にしてすぐに撮りたいんだよ、こういう絵で」って話を聞いた時に、目が覚めました。「あ、この人に使ってもらうんだ!」っていう実体験を通して、UXにおける実際に使ってもらう人の体験が大事なこともすごく共感できます。

ーエンジニアでありながらXデザイン学校に通われるところでハードルはありませんでした?

外の世界に出ようって思ったきっかけのひとつにプロジェクトを一緒に推進していた上司のアドバイスもあったんです。社内でもじもじ考えて悩むぐらいなら、外に出ていろんな人に自分の悩みを伝えてみろ、と。で、話し慣れてくると自分の悩みのポイントは意外とこれなんだ!?と思考が整理されたり新たな発見があったんです。そうやって外の世界の人に触れるっていう価値を感じていろんなセミナーに行き始めたんです。他の人からするとなぜ私みたいなエンジニアがUXのセミナー行ってるの?って感じだったと思いますが、その方からはどんどん外行くといいよと。で、Xデザイン学校も背中を押してくれました。

ー実際にXデザイン学校に行かれてみて、いかがでした?

2018年にベーシックコース、2019年にマスターコース、2020年・2021年にアドバンスコースに通っていてもう4年目になります。正直なところ通うのは1年と考えていて、マスターがすぐビジネスに有用という説明もあってマスターコースに行こうかと思ってたんです。山崎先生に相談したところ、どうせ長くやるんだからベーシックコースからをおすすめしますと言われて。先生からすると1年じゃなくてもうここからスタートで学び続けるんだぞ、って視点で、なるほど、と。

もう本当に会社の中で学べないことばかりだし、触れる情報っていうのがすごく新鮮で、そんな講義を先生方の生の声で聞けるのがすごく楽しかったです。それにXデザイン学校に私が長く通えてる理由は、仲間がいることですね。それぞれバックボーンは違うし、何を求めて入ってくるかも違うんですが、“一緒に学ぶ感”が私の中ではとても気持ちよくて。会社の休日なのになんでわざわざ行くの?と聞く人も多いんですが、やっぱり仲間がいるって感覚、そんな仲間と会えるという感覚が単純に楽しいなって感じてて、今でもアドバンスに通えていると思います。

実はアドバンスは崇高なものだと正直最初は思っていたんです。私がいくとは本当に思ってなくてマスターコース終わった後にもう1回ベーシックコースで学ぼうかなって思ったりしてました。1年目、駆け抜けちゃった感じがあってもう一回やった方がいいんじゃないかと。日頃から山崎先生に相談していた中で「アドバンスってちゃんと研究される方、世の中の課題に対してこうあった方がいいって目線を意識高く持たれてる方が行くとこだと思ってるんですよ」って話をしたら、「いや原さんが普段話してる会社の中の課題ってあるじゃないですか。まさしく“それ”が“それ”なんですよ」って一言でハードルを下げてくれたんです。いいからやってみようぜ、って。あなたが普段言ってることがまさしくここでアドバンスコースに書かれている1つの具体例なんですって言われたときに、“いろいろ考えてても答えは出ないんだから、やろうぜ”と背中を押してもらえたなと思っています。

ーバリバリ理系の工学ど真ん中でおられるのに、おもしろいですね。

私はどちらかいうと答えがないものに立ち向かうことに苦手意識があって、先が見えないと一歩踏み出せないタイプの人間だと思ってるんですけど、デザインってその一歩目を踏み出しやすくしてくれるものって印象があるんです。今までは情報かき集めて1歩目、2本目、3歩目ってシナリオをちゃんと描いてからでないと足を踏み出せなかったんですが、それってすごく時間もかかるんです。実際に1歩踏み出すと描いたシナリオ通りじゃない世界が待っていて、またシナリオを作り直すことにも時間がかかり、結局1歩目早く踏み出せばよかったじゃんとなっていました。デザインって私の捉え方として、頭の中のモヤモヤを明瞭に描くだけでなく、“私の考えはこうなんです、だから一歩目こうやって踏み出しますよ”って自分の意思を相手に宣言するもの。さらに、相手に1歩目はそう行くのね、わかったよっていう意思の確認や了承を得るための技術として、すごく力があるなって思うんです。

モヤモヤしているので結局ペラペラの絵しか描けないんですが「私はこう思っていて今はこれしか見えてないです、だからこっちに行きます」みたいなやりとりを仕事でぶつけ合えるようになって、Xデザイン学校でデザインを学ぶことってそういうところをトレーニングできていると感じています。相手の考えてることもホワイトボードに書きながら「こういうことをあなたは言いたいの?」みたいな会話するときにデザインの力ってすごく役に立ってるんじゃないかなって。Xデザイン学校に通う前に私が持ってたものではないなっていう感覚があり、お互いの価値観を理解し合えるやり方が広がってるという意味では、考え方や物事の認識の仕方が変わり続けていると思います。

デザインを学びたいからここに来るって思わなくてもいい。


ーなるほど、Xデザイン学校が原さんにはとても有意義な環境なんですね。

先生や仲間に自分の考えを発信した時にフィードバックがあるっていうのも“自分が変わり続けられるような環境”で、私が心地いいと思っているポイントだと思いますね。やっぱり会社ではなかなか得られない刺激だと思ってます。家族もいつまで続けるの?って思いながらも、4年間も通い続けてその時間を大事にしてるということで半分諦められていると思います(笑)。授業が週末で月に1回程度の頻度というのも仕事をしながら通いやすいですしね。山崎先生と出会ってから1つ自分の中で決めていることがあって、細く長く学び続けるっていうのが大事だなって。途絶えさせないようにするっていう。忙しい時はあるけどやっぱりやめないっていうことに意義があると思っているし、意外とそういうことが自分の中で支えになっています。

だから、私としてはデザインを学びたいからXデザイン学校に行くって風に思わなくてもいいんじゃない?と思いますね。デザインをやりたい人はご自分のアンテナでXデザイン学校を見つけると思うので、どちらかと言うと「日頃の業務に困っている人」や「外の世界を知らない人」や「世の中に触れられていない方」にとって視点が広がるきっかけになると思います。これは私の実体験としてそうなので。そういう人にファーストステップとしてXデザイン学校を利用してもらうと仕事や人生が面白くなるんじゃないか、って感じがします。

私にとって、デザインとは「考えを伝えあい、理解しあう道具」。


ーそんな原さんにとってデザインって何ですか?

デザインを自分でやってる実感はまだないのですが、そうですね、今の私にとってデザインとは、自分の考えを相手に伝えたり相手の考えを理解するための道具、と言えるかもしれません。


そんな原さんにオススメの本をリコメンドしてもらいました!

妻から子ども達と一緒に読んでみたらと薦めてくれた本を紹介させていただきます。何気なく本を読み始めてみると、父親としてだけでなく等身大の自分自身に響くことばがいくつも散りばめられてました。なかでも『自分をもっと知るために、「いいな」と思う瞬間を集めてみる。/「ちっぽけな自分」を感じられる体験をする』は、私がXデザイン学校という場に対して特に価値を感じていることです。子ども達とは単に文章を読むだけでなく、いくつになっても学び続けようとしている自分の想いや、講義の様子や仲間との関係性も交えながら会話をしています(どれだけ伝わっている分かりませんが)。本の中で言語化されていることばは、シンプルかつ簡潔なので自分の考えを整理するときや他人に伝えるときに活用にしています。


正直な言葉でまっすぐデザインとの向き合い方を教えてくれた原さん。エンジニアで日頃の業務と直結していないにも関わらず人と人の境界を越えていくためにデザインにはかけがえのない価値があると教えてくれました。デザインのおもしろさは、やっぱり広くて深いです。