Underdefining Fried Object

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「焼きうどんです」
 話が初っ端から破綻している。
「それとも焼きナポリタンだったかな」
 ついでに自己同一性も崩壊している。しかし、この香ばしいソースの匂いはどう嗅いだって焼きそばなのだし、即席汁無し麺一般を焼きそばと呼んで差し障りはなさそうである。
「作り方はまだありません」
 聞けよ。
 とは言え、現に今ここにこうやって存在する以上、作り方はともかく作られ方ってもんがあったはずだ。
「さあ、何ともその辺りの記憶が曖昧で」
 何とも心許無い。
「気が付けば、硬い棒で身体の中を闇雲に掻き回されていたのです」
 そう言って、ふやけたそばを矢鱈とくねらせる。
 成程、作り方というのはそういうものかも知れない。だが、そんな作り方は非道く倫理的に間違っている気がする。いずれにせよ、もうこうしてどうしようもなく作られてしまった焼きそばの赤裸々な身の上話を以て焼きそばの作り方とする事など、僕の桜吹雪が見逃してもお天道様が許してくれそうにない。「でしたら」
 と、焼きそばは青海苔を総毛立たせながら僕に要請する。

―どうか、あなたが正しい作り方を紐解いて下さい。
 先刻、わたしに名を下すったように。

 こうして僕たちは始源への探索を開始する。無限の可能性がひとつの存在に収斂する過程に起こるあれやこれやを余さず記録するために。だから今しばらくこのお話にお付き合い願いたい。何、そんなにお時間を頂くつもりはない。

 ほんの3分間だ。

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