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大阪・京都・東京          コンビニ・トイレの三都物語

大きな通りなのになぜかコンビニがない

京都の北大路通りを西に向かって歩いていたが、下鴨本通りと北大路が交わる辺りから北大路通りにはコンビニがほとんどなくなった。コンビニが大好きな外国人観光客はいっぱいいるのに、コンビニはない。これは理屈が分からない。それはともかく、この日は京都でも今年最高と思われる暑い日で、それほど歩いたわけでもないのに汗だくで、ペットボトルの水を過度に飲んでいたのか、にわかに尿意を催してきた。ところが北大路通りにはコンビニの存在が目に入らないので、どうしたものかと思案していると、ちょっと先の方にガソリンスタンドが目に入った。ガソリンスタンドは、比較的気安くトイレを貸してくれるので、トイレの借用を尋ねてみたが、店員は躊躇いがちに口を開いて、「うちは、トイレは貸してませんのです!トイレはあの公衆トイレを使ってもろてます」と、大きな交差点の斜め向かい側にある大きな樹の下にある公衆便所らしきところを指さした。

大阪・京都・大阪のコンビニではトイレが使える?

仕方がないかと、その指示に従って公衆便所に行こうとした。ところが、うろちょろしていると、ここからそれほど遠くないところに小振りのショッピング・センターのようなものがちらっと見えたので、公衆便所よりそちらのトイレの方がはるかにきれいだろうと、躊躇わずにそのトイレを使わせてもらうことにした。それはそれでいいのだけれど、私は京都、大阪、東京にそれぞれ10年以上住んでいたので、それらの街のコンビニのトイレの違いのことは少し気になっていた。トイレを貸すのも貸さないのも店の自由だと思うので、そのことを評価したりけなすつもりは少しもない。ただ、京都、大阪、東京の商売人の特徴には多少の思い入れもあるので、大阪・京都・東京の「コンビニのトイレ三都物語」でも述べてみたいと思う。

例えば大阪は「買い物してくれたらトイレ使用もOK」

ご存じの通り大阪の商人はケチだが、ただひたすらケチというのではなく、儲かるのが分かれば思い切った投資をするし、大胆なアプローチもできる。いってみれば紀伊国屋文左衛門や、娘を裁縫のお稽古に通わせるために淀屋橋を築いたとされる淀屋何某、といったイメージの大阪商人だ。しかし京都の商人は、ケチというのは大阪の商人と同じだが、少しタイプは違う。京都の商人の基本は、単に仕入れたものに利を載せて売るだけではなくて、可能な限り利の取れる商品に磨きあげるという工夫をする。京都の染めと織りはその典型で、仕入れたものを何十倍、何百倍に膨らませる想像力がある。
さらに東京の商人は、大阪、京都とはかなり違っていて、一言で言えばといった顕著な特徴がない。つまるところ、日本中様々なことろからいろんな人が集まってきた街なので、多種多様な稼ぎ方が混在している。だから自分のやり方にこだわるというのではなく、他の成功例に習うという傾向が強く、結果的にビジネスに合理性と安定性がある。また、東京という肥沃な消費者のマーケットがあるので、その面からもある程度の優位性がベースにある。

トイレを使わせないコンビニも多い京都

大阪・京都・東京のコンビニのトイレのことに話を移せば、大阪のコンビニでは、「うちの店で買い物してくれれば、トイレもどうぞ使って!」という考え方が目に付く。大阪の商人にとってはトイレも立派な商品なのだ。
さて京都はどうかと言えば、トイレを使わせない店が結構多い。コンビニはチェーン店展開になっているので、本部の意向などもあるので、店の意向で完全に自由に決められることではないにしても、いわゆる目抜き通りのコンビニは、チェーン店全体のイメージがあるのでトイレが使える店が多い。だがそこを外れるとトイレが使えない店がかなりある。割合で言うと、使えない店の方が若干優位といったところだと思う。京都の商人は、付加価値のある儲けの多い商品を作るのが得意だと述べたが、トイレという商品で付加価値を高めるのは簡単でなく、食事でも買い物でもなんでも高級店となれば、立派で美しく優雅なトイレを造るが、コンビニでのトイレだけの利用ならそこに大きな情熱を傾けることは余り考えられないと思う。

東京のコンビニではトイレは標準装備の流れ

私が昔ひいきにしていたとんかつ屋などは、女性用のトイレの床一面がガラス張りで、トイレから下を見ると鯉が泳いでいる。これが話題になっていつも千客万来だったが、コンビニのトイレを豪華にしても売り上げにはつながらない。コンビニに関しては、使わせないというのが妥当な判断かも知れない。さて、東京となると、先に書いた通りなんでも「成功例に習う」傾向があって、これだけインバウンドの観光客がやってくると、どこを歩いていてもコンビニがあればトイレの心配はないという情報が定着している。トイレを使わせないコンビニの情報もまた簡単に伝わりやすく、結果的に東京も、とりわけ都心部に近いほどコンビニのトイレは標準装備的なものとなってくる。

コンビニのトイレというのはインバウンドの旅行者には好評だが、いずれの店にしても儲かるものではなく、コストのかかる厄介なものだ。つまり日本の儲からない「おもてなし商品」のひとつの典型だ。おもてなし商品はいいのだが、日本の従業員のサービスで成り立つ「おもてなし商品」ばかりでは、インバウンド景気もやがて息切れするような気がしなくもない。

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