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「嵐山」の秋の魔術

「高雄」の赤は、どんな赤?

私は京都の中心部に住んでいるので、普通に生活しているだけでも、海外や全国各地からの観光客をいつもたくさん見ている。京都には、名だたる名刹や古社がある。美しい景観や名勝、千年の「皇都」にふさわしい重層的な歴史と多様な文化遺産、そして自然に溶け込んだ宗教的な荘厳さが息づいている。さらには日本という国家の骨格をなす穏やかな秩序と、奥ゆかしい風情がある。そういった意味では、京都は海外の人にとっても、全国各地の人にとっても素晴らしい観光地になっているのだと思う。

ところで、観光都市においての「色彩」というものに焦点を当てれば、やはり「色彩」は思いっきり価値のあるものだと思う。一年という時間の流れの中で、観光都市としての「京都」を考えれば、「色彩」という要素はとりわけ重要で、季節に伴って変化する「色彩」の要素となると、やはり景勝地に展開される花たちや樹々、自然の色の美しさだ。ざっと考えただけでも二月の梅花の「白と赤」、三月の桃の花の「薄桃色」、三月から四月にかけての桜の花の白色から、薄く紅をさした色までの「変幻自在の桜色」。また四月、五月は藤の花の「藤色」、六月は花菖蒲(しょうぶ)の「白と紫」、七月はハスで「花の周辺をピンク色のグラデーションで飾ったハス色」、ハスの名所ごとに花の色が少しずつ変化していて、ハスの花は多種多様な色彩だと言える。八月は百合の花の「白」、九月の植物はススキの「枯草色」だ。それ以降は季節の山野を鮮やかに染めるような特定の「色彩」はないが、一〇月から一二月にかけては、紅葉の「黄色」「褐色」を包み込むように「茜色」「紅色」「朱色」などの多様な赤い色の洪水が野山を包む。

千年の皇都を染め分ける京都の色彩

京都の一年の「色彩」の移ろいは色鮮やかで、まさに観光の楽しみの大きな部分を占めているが、観光客によって「色彩」の趣向も多様だと思う。一般的に考えると、やはり一番人気があるのは「桜」だと思われる。桜の色は微妙で、ほとんど白色といった色から、カンヒザクラのように赤っぽい種類のものまであって、一概に桜の色は特定できないが、簡単に言うと白色に微かなピンク色が混ざると言った風情だと思う。サクラの魅力については、「色彩」よりも、小さな桜の花が無限に重なり合った集合的な色と形が人気の根源だと思う。
そんなことで私は、年間を通してどの花のどんな色が好きなのかと問われたら、やはり紅葉の鮮やかな「赤」とも「朱」とも言える「紅葉色」が好きだと答えるだろう。つまり紅葉の色は多様で、黄色から褐色、あるいは燃えるような真っ赤な赤に至るまでの魔術のような多様なバリエーションが魅力のポイントだ。私はいま住んでいるところから、電車に乗って嵐山まで三〇分ほどで行けるので、紅葉の季節になると何度も嵐山近辺を訪れて、高雄まで足を延ばして紅葉の赤を楽しんでいる。

旅行者を楽しませる「紅葉の赤」の無限のバリエーション

ずいぶん前のことになるが、コマーシャルのクライアントであるテレビメーカーが、「テレビ・モニター」の赤い色が鮮明なことをアピールするために、カラーテレビのコマーシャルとして、嵐山の北の方にある「高雄」を舞台にしたCMを放映した。そのCMの中で、「高雄の❝アカ❞」というメッセージが流れたが、この❝アカ❞が、「赤」なのか「朱」なのか、あるいは「紅」なのか随分気になっていた。何分昔のことなので、結果はネットでは見つけられなかった。私の個人的な希望では「朱」であって欲しいのだけれど、他の人はきっと違うのだろうと思えたりもする。何しろ、日本の赤の色は多彩で、赤を表すか漢字だっていくつもあるのだから。



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