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【THE古墳】箸墓の主は…卑弥呼、次の女王それとも「男王」

邪馬台国(やまたいこく)の女王、卑弥呼(ひみこ)の墓との説が戦前から唱えられている最古の巨大前方後円墳の箸墓古墳(3世紀後半、墳丘長約280メートル)。宮内庁は第7代孝霊天皇の娘、倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)の墓として祀(まつ)る。多くの陵墓が天皇や皇子という男性を被葬者とするなか、舌をかみそうな、どこか謎めいた名の女性というところが、卑弥呼へのロマンをかきたてる。ただし、築造年代などから、卑弥呼の次の女王「臺与(とよ)」、さらに次の「男王」との説もあり

    • 【THE古墳】「最も掘りたい古墳」卑弥呼の箸墓に迫った2メートル

      「考古学者が一番掘りたい古墳」ともいわれるのが、奈良県桜井市の箸墓(はしはか)古墳(3世紀後半、墳丘長約280メートル)。日本で最初に造られた巨大前方後円墳で、邪馬台国(やまたいこく)の女王・卑弥呼(ひみこ)の墓との説が戦前から唱えられているからだ。卑弥呼が中国から贈られた「金印」が見つかれば、邪馬台国畿内説を決定づけるとの期待は大きい。しかし、宮内庁が第7代・孝霊天皇の娘の墓として立ち入りを禁じ、発掘もできない。この謎のベールに包まれた古墳に、果敢に挑んだ発掘調査があった。

      • なぜ人は争い、殺し合うのか 骨から探る「戦争の起源」

         人はなぜ争い、殺し合うようになったのか。「戦争の起源」を考古学から探ろうと、岡山大、南山大(名古屋市)などの研究者チームが挑んだ。分析に選んだ舞台は弥生時代の北部九州。「漢委奴国王印」の出土でも知られる当時の先進地だ。研究から見えた答えは――。  狩猟採集から農耕への変化、武器の発達、社会の階層化……。人間が争い、戦争をするようになった原因には様々な仮説があるが、科学的な証拠に基づくものは多くない。  岡山大文明動態学研究所の松本直子教授らの研究チームは、仮説の一つ「人

        • (扉)ご先祖は、2万年前の港川人? DNA解析、日本人につながる可能性

           沖縄県で約2万年前の全身骨格が見つかった港川(みなとがわ)人=キーワード=は、現代の日本人につながる祖先だったかも知れない。そんな可能性がDNA解析からわかった。日本人のルーツは、土着の縄文人と大陸からの渡来人による「混血説」が定説だが、さらに古くまでさかのぼる可能性が出てきた。  日本人の起源は、約1万5千年前から約3千年前にかけて北海道から沖縄まで広く分布していた縄文人と、その後に大陸からやってきた渡来人が混血した弥生人にさかのぼることが、DNA解析などから裏付けられ

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          【一聞百見】邪馬台国「大和説」序章の纒向遺跡 考古学者・石野博信さん

          江戸時代からいまなお続く邪馬台国の所在地論争。歴史ロマンあふれる論争の盛り上げ役として知られるのが、畿内説を唱える考古学者の石野博信さん(87)。邪馬台国の最有力候補地、纒向(まきむく)遺跡(奈良県桜井市)の最初の調査員だ。半世紀前の昭和46年、奈良県立橿原考古学研究所(橿考研)から出向していた奈良県庁で開発計画を知り、調査の必要を訴えて自ら発掘に乗り出した。若き日のすさまじい考古学熱が周囲を動かした。 前方後円墳が日本で最初に出現した纒向遺跡は、倭国女王・卑弥呼(2世紀後

          【一聞百見】邪馬台国「大和説」序章の纒向遺跡 考古学者・石野博信さん

          年代、DNA語るイネの中の「石」 宮崎大で研究40年

           植物の細胞壁に含まれる微小な石「プラント・オパール」から、日本の稲作のルーツに迫ろうという研究が、宮崎大学で40年以上にわたって続いている。最近は土から大量に抽出する方法が確立され、DNAを取り出して分析することや、年代を測定することも可能になりつつある。  プラント・オパールは植物の細胞壁にケイ酸が蓄積されてできる石で、穀物や竹などイネ科の植物を支える「骨格」の役割も果たす。形や大きさは植物の種類で異なり、イネはイチョウの葉のような形が特徴。1980年代に青森県の水田遺

          年代、DNA語るイネの中の「石」 宮崎大で研究40年

          宮古諸島の人々は3集団で構成 災害と移住の歴史を反映

           沖縄県宮古諸島の住民の遺伝情報(ゲノム)を大規模に解析したところ、遺伝的に異なる3集団に分けられることがわかった、と琉球大の研究チームが学術誌に報告した。それぞれの集団の人口変化や形成時期も推定でき、移住の歴史が反映されているという。  琉球大は、沖縄県民の健康増進のため医療情報とともに血液などの試料を集めており、昨年末で約1万8千人分を収集した。このうち宮古諸島で2016~17年に得た1240人分について、DNAをつくる塩基のわずかな配列の差(1塩基多型)に着目。祖父母

          宮古諸島の人々は3集団で構成 災害と移住の歴史を反映

          「縄文人」のルーツをDNA解析 アジア東部で最古級か

           愛知県田原市の遺跡で見つかった「縄文人」とされる人骨から抽出したDNAの塩基配列を詳しく解析したところ、アフリカからアジア東部に到達したホモ・サピエンスの集団の中でも最古級の系統に属することがわかったと、金沢大や東京大のグループが報告した。日本列島人の成り立ちを探るための新たな手がかりとして注目される。  DNAを調べたのは、伊川津(いかわづ)貝塚遺跡から出た人骨(約2500年前)。年代的には、約3千年前から始まるとされる弥生時代にあたるが、縄文晩期の土器が発掘されており

          「縄文人」のルーツをDNA解析 アジア東部で最古級か

          縄文人 日本人にゲノム引き継ぐ

          縄文人は約1万6000~3000年前に日本列島で暮らしていた人々を指す。ゲノム(全遺伝情報)の解読からは、縄文人の祖先が大陸の集団とわかれたのは、3万8000~1万8000年前とみられている。 日本列島では、狩猟や採集をしながら暮らしていた。3000年前以降は弥生人系の人々が大陸から渡来し、縄文人と弥生人以降の人々のゲノムが交わっていった。現在の日本で、本州の人は縄文人のゲノムを約10%受け継ぐ。北海道のアイヌの人たちや沖縄の人はもっと多い。 縄文時代の終わりごろには、寒

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          古墳時代、女性首長多かった…はにわで考えるジェンダー

           千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館(歴博)で、企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」が開かれている。重要文化財など280点以上の資料を展示し、政治の行われる空間や、仕事とくらしの中の、「男」と「女」について古代から現代までの過程を追っている。中世から戦後までの性の売買についてもその歴史を振り返っている。  展示されたのは、館内外の29人が参加したプロジェクトの研究成果。代表の横山百合子教授は「ジェンダーがいつ生まれ、どう変わるのか。よく分かるトピックを取りあげた。幅広い展示

          古墳時代、女性首長多かった…はにわで考えるジェンダー

          縄文人からウイルス発見 「日本人の起源」伝える使者 世界はウイルスでできている(4)

          ワタシは縄文人。名前は……。みんなは「船泊23号女性」と呼ぶの。北海道・礼文島の船泊遺跡から出土した約3800年前のワタシの骨をそう言っているみたい。だけど23号女性なんて失礼じゃない? ワタシのことを誰もわかっていない――。 これからは縄文人の暮らしぶりがわかってきますよ。こう話すのは国立遺伝学研究所の井ノ上逸朗教授だ。手応えを感じているという。大きな発見が最近あったからだ。 縄文人23号女性の歯を削って遺伝物質のDNAを取り出し、大学院生の西村瑠佳さんらと解析した。悠

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          近視の遺伝子発見 予防・治療に期待

          2020/6/8付 日本経済新聞 朝刊 ■横浜市立大学 目黒明特任准教授と水木信久主任教授らは近視の発症や進行に関わる遺伝子を見つけた。日本やシンガポール、台湾の1万人以上を対象に遺伝情報を調べた。遺伝子をもとに近視の発症リスクや進行の速さなどが事前に分かれば、進行を抑える治療に役立つ可能性があるという。 近視の発症には環境要因と遺伝要因が関わるが、近視の程度が強くなるほど遺伝的な影響が大きくなるといわれている。視力0.05未満の「強度近視」は網膜の中心部の出血や緑内障な

          近視の遺伝子発見 予防・治療に期待

          胃がん患者に多い変異判明 東大、東アジアで

          2020/6/7付 日本経済新聞 朝刊 東京大学の油谷浩幸教授や石川俊平教授らは、日本や韓国などの東アジア地域で胃がん患者が多い原因を明らかにした。胃がんにかかわる遺伝子に非アジア人にはない変異があった。遺伝子を調べることで、胃がんになるリスクを推測できる可能性がある。 研究グループは、アジア人319人を含む531人の胃がん患者のゲノムを解析し、親から受け継がれるゲノム配列の個人差がないか詳しく調べた。日本人の胃がん患者(243人)のうち、18症例で「E―カドヘリン」とい

          胃がん患者に多い変異判明 東大、東アジアで

          なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開始

          朝日新聞デジタル 2020年5月21日 19時30分  新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みを、患者の遺伝子解析を通じて解き明かそうというプロジェクトが始まった。人口100万人当たりの死者は米英で300~500人なのに対し、日本では約6人で大きな差がある。研究グループはこの差が生活様式や医療格差だけでは説明できないと考え、人種ごとに異なる遺伝子によって免疫応答に違いが生じているとの仮説を立て、ゲノム解析で確かめることにした。重症化因子が判明すれば、今後のワクチン開発に

          なぜ人種で差 コロナ重症化、遺伝子解析で探る研究開始

          推定地今や50超 邪馬台国ブームに火をつけた男の情熱

          朝日新聞デジタル 2020年5月14日 9時00分  今や推定地は50カ所以上。プロ、アマの研究者が激しい議論を繰り広げる邪馬台国所在地論争は、今なお衰える気配がない。日本人を古代史のロマンに駆り立てるブームを巻き起こした背景には、一人の男の熱い人生があった。  日本古代史最大の謎といわれる邪馬台国。3世紀に編纂(へんさん)された中国の歴史書「三国志」の「魏志倭人伝」に登場し、当時の日本列島の国々の盟主的存在だった同国の女王・卑弥呼は、239年に魏へ使者を送り、金印や銅鏡

          推定地今や50超 邪馬台国ブームに火をつけた男の情熱

          (時代の栞)「まぼろしの邪馬台国」 1967年刊・宮崎康平 所在地論争、盛り上がる

          朝日新聞デジタル 2020年5月13日 16時30分  ■古代史の謎に、アマの自由な風  日本古代史最大の謎といわれる邪馬台国。3世紀に編纂(へんさん)された中国の歴史書「三国志」の「魏志倭人伝」に登場し、当時の日本列島の国々の盟主的存在だった同国の女王・卑弥呼は、239年に魏へ使者を送り、金印や銅鏡を下賜(かし)されたと伝えられる。だが、その国のあった場所は、いまだにわかっていない。  それを探し求め、多くの人々が挑んだのが「邪馬台国の所在地論争」だ。江戸時代以来、学

          (時代の栞)「まぼろしの邪馬台国」 1967年刊・宮崎康平 所在地論争、盛り上がる