自分のビジョンを明確にする――山下諒流の制作術

今回はxAliceのPV制作等に携わっている、山下諒さんにお話を伺いました。

山下諒さん
映像作家。映像制作だけでなくドット絵やパフォーマンスなど
多彩な領域で活躍するマルチクリエイター。

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――自己紹介をお願いします

山下諒です。
マルチアホクリエイターを自称してます。
主に映像/ドット絵/パフォーマンスなど、自分ができることは何でもやります。
最近は作リエイターズアトリエという番組でMCをしていたりします。

――今までに制作してきた作品の中で、お気に入りのものを教えてください

  • ポプテピピックSP Pop team 8bit

私が大学の頃制作した『DOT BIT BEAT』という作品で学んだことをフルで生かした作品。
今でも見返すほど大好きな一作です。各方面によく怒られなかったなと思います。

  • モスバーガーWebCM トム・ブラウン『超合体漫才』篇

今でもよく許してくれたなと思う一作です。広告映像ですよ、これ。
いわゆる音MADの作り方を広告に持ってきてしまいました。いつか音MADの広告を作りたいと願ってましたが、まあ本当に叶うとは……

  • MOTHER/ - POLLYANNA (I BELIEVE IN YOU) / 戌神ころね(cover)

MOTHERの代表曲を戌神ころねさんがカバーしたMVです。
ここ最近の制作物だと一番印象に残る作品で、我ながら何度も見返してしまいます……
小学生の頃からスマブラで知っていたネスを、まさかコントローラーではなく映像上で動かす側になるとは……いちゲーマーとしてはたまらん経験でした。

――なぜアニメーション映像作家になることを選んだのですか?何がアニメーションの魅力だと思いますか?

正直いうと、成り行きです笑

美大の集団制作の課題で『DOT BIT BEAT』というドット絵の映像のディレクションをしました。その作品を先生に言われるがままあらゆるコンペティションに応募したところ、ありがたいことにいくつか入賞できました。その中のひとつに学生CGコンテストがあったのですが、当時審査員だった神風動画代表取締役の水崎社長に「ドット絵の仕事してもらえないか?」というご連絡をいただきました。その仕事こそ、その先自分の代表作になるポプテピピックでした。

その業務と並行して、当時志望していた「ゲームプランナー」の夢を叶えるために就職活動もしてました。全て落ちてしまいましたが……
その後、同級生が広告映像会社に誘ってくれて内定できたのですが、入社前に放送されたポプテピピックのおかげで会社に所属後も個人の仕事が来るようになりました。本当にありがたい話です。一年半後に転職活動をするのですが、ポートフォリオを見た転職エージェントから「自分たちの仕事を個人で受けてくれないか?」という話を数件頂き……そこで何を勘違いしたのか「フリーで働いてみてダメだったらまた会社に所属しよ〜」と思い立ち、そこからズルズルと5年が経ってしまいました笑

現在はありがたいことにアニメーションだけでなく、幅広い映像分野に携わらさせていただいているので、その観点から言うと「メタモルモーションの面白さ」だと思います。
実写ではできない、アニメーションならではの動き、だからこその面白さや奇妙さや悲しさ。ここ最近だと学生作品ではありますが「Sewing Love」にはその良さが詰まっているように思いました。


――作品の制作において、最も難しいことは何ですか?どのようにそれに対処しますか?

人に伝えることですよね。
映像は総合芸術なのでやることが非常に多く、私のようなフリーランスでさえ時には人に頼らざるを得ない状況になります。
人に頼む以上、理想と完全一致はなかなかなりません。その際、どうすれば自分の明確なビジョンを伝えられるのか。上がってきたものに対して、どこまで許容できるのか。
誰かに作ってもらうので、その人の感性は尊重したいし、化学反応も見てみたい……という時もありますよね。

自分の場合、いくつかのルールを設けています。
ひとつ目は「その作品のテーマに合っているか」です。
自分は作品を作る際、ひとつテーマを決めます。
前述した『ポプテピピックSP Pop team 8bitパート』だと「とにかくゲームパロディを入れまくる」がテーマ。
最近制作した『HOMEYA』という自主制作MVだと、「90年代から2000年代の合成とローポリを多用した元気が出るMV」といったイメージです。


ここを決めておくことでリテイクを出す際の判断基準になります。そのテーマに沿っているのか否か。「なんか違うから」というふわっとした理由でリテイクを出さずに済むという良さもありますね。

ふたつ目は「自分のビジョンを明確にする」です。
ひとつ目にも関わってくる話ですが、とにかく自分の想像しているものをクリアにしておく。
例えば作品を作る際「あの作品のあのシーンのようなことがやりたい!」ということはよくありますよね。しかし作品名が思い出せなかったり、webにその情報がなかったり、なかなかそれを見つけ出すことができない場合があります。その際は自分で撮影しに行く、下手なりに絵を描く、コラージュするなど……とにかく自分のやりたいことを伝えられるようになるべく手を尽くします。
そのため、自分がディレクション側に立つときはリファレンスを過剰に用意することが多いです。
リテイクの際も同じです。「もっとこう……いい感じに!」といったリテイクは絶対避けるべきなので、リファレンスは多めに。自分である程度再現できることは手を動かしてみる。あらゆる手を尽くして自分のやりたいことを伝えるようにします。

特別編として「60点以上であればOK」という考え方もあります。
予算があまりないときという条件付きです。
自分はこだわりが強いので、やろうと思えばとことんリテイクが出せます。
が、予算がないのにクリエイターに負担をかけるのは避けたい……というのが本音です。
また自分では微妙と思っていても、他者から見れば「素晴らしい!」となることもあるわけです。要は一定のクオリティラインを超えていれば、あとは見る人の感性で良し悪しが決まるので自分のこだわりをあまり入れないという考え方です。

――将来の目標について教えてください。今後、どのような方向性やテーマに挑戦したいと考えていますか?

なんでもやりたがり男なので、楽曲制作、演劇、カメラ、CG、ラジオパーソナリティ、プログラミング、ゲーム制作、果てはフィギュア作りなど、色んなことが出来るようになり、相乗効果で映像に良い影響を与えられればと思ってます!映像って総合芸術なので、さまざまな知識が活きるのがいいですよね。
自分は能力的にも性格的にも、ひとつのことのプロフェッショナルになれない人間で。自分以上に能力を持っている人は沢山いるので、その人たちに勝つためにはあらゆる武器を使えるように練習して、それらを組み合わせて戦うことだと思っています。

――"I am xAlice"プロジェクトのファンに向けて、何か一言お願いします

実は立ち上げ時代から携わっております!
今後はアニメ化!グッズ化!舞台化!?様々な展開を期待してます!!

――詳しくお答えいただいてありがとうございました。xAliceのこれからの展開にご期待ください!