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見えないほうがいいものもあるよ

視力が低い。
でもずっと、眼鏡をかけないで生きている。

運転とか、舞台や映画を見に行くときとか、絶対に遠くを見なくてはいけないとき以外は裸眼で過ごしている。
コンタクトレンズは使ったこともない。
だから、遠くのものは全然見えない。


昔、まだわたしの視力がそんなに悪くなかった頃。
ずっと視力のよかった母が、遠くのものが見えなくなってきたと言っていた。
わたしは当然のように眼鏡をかけるものだと思っていたんだけれど。
母は言ったのだ。

「世の中、見えないほうがいいものもあるよ」


その後母は、近視用の眼鏡をかけることなく、今では手元を見るときに老眼鏡を使っている。
だから別に、眼鏡自体がいやだったわけじゃなくて。
ただ本当にそう思ったんだろう。

その言葉がわたしにはカルチャーショックで。
そうかそんな考え方があるのかと心に刺さって。
未だにわたしも、裸眼生活をしている。

こだわり、というにはもう染みついた習性になってしまっているんだけれど。


世の中には、見えないほうがいいものも、見えなくてもいいものも、いっぱいある。
情報があふれすぎている中に生きていると実感する。
見たくないニュースのはずなのに検索してしまったりとか。
見なくてもいいやりとりを追いかけてしまったりとか。

抜けがないように、TLをきちんと遡って全部見ていたり。
昔はしていた。
でもそれ、疲れちゃうんだよね。
わたしたちは毎日、情報に溺れている。全部に接して全部自分の中に取り込んでいたら、保たない。


あんまりにもスマホを見てるから、視力はどんどん下がっている気がしている。少なくともピントスピードは遅くなった。
きっともう、追わなくていいんだ。
世界のすべてが見えてなくたって、いいんだ。


そう思いつつ、4歳には口うるさく「画面から離れてね」「時々休憩してね」と声を掛けてる。
これが親心ってやつなのかな。
できるんであれば、遠くのものまで見えていてほしい。
きみが道を選ぶときに、いろんなものを参考にできるように。


母から教わったことを実践しつつ、そうでない道を子どもには願う。
矛盾してるなと思いながら、明日もきっと目を細めて数メートル先を睨む。


今日も読んでくれて、ありがとうございます。

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ただのはる
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