正社員と業務委託の違い
ここ数年で複業(本業のサブ的な位置付けの「副業」は捉え方が好きではないため、パラレルで複数の仕事をする「複業」と表現しています)が増えたことにより、個人での仕事が増え、企業から個人へ業務委託するケースが増えています。
当社でも、複業のエンジニアと業務委託契約を結んで仕事を依頼したりしています。
そこで前々から考えていたのが「雇う側である会社の立場からすると、正社員と業務委託って何が違うのだろうか?」です。ここで言う「違い」とは、契約形態、社会保険の有無、などの制度的な内容以外を指しています。
結論から言うと、こういった違いがあるのではないかと考えています。
・チームメンバーという括りではどちらも同じ
・業務委託は一人前のプロとして完全な自走が求められる
・正社員は一人前のプロもいれば、見習い中の人もいる
考えるきっかけ…当社は業務委託メンバーが多数
考えるきっかけとして、当社で一緒に仕事をするメンバーのほとんどが業務委託である、という点があります。
正社員2名(約15%)、業務委託11名(約85%)、という比率です。
業務委託メンバーの中には、週3〜4日で参画するメンバーもいれば、週1日程度参画するメンバーもいます。また、本業の傍ら複業として参画するメンバーもいれば、フリーランスとして参画するメンバーもいます。
当社では、「チーム」で仕事をすることに重きをおいており、業務委託メンバーは社員と同じような扱いにしています。
例えば、、、
・ミッションやビジョンを共有する
・定期的に1on1を実施する
・会社の経営状況や案件の受注状況を共有する
・メンバーのスキルや経験を鑑みて案件へアサインする
などです。
このような働き方をしているせいか、正社員も業務委託も(制度上の違いを除くと)違いがあまりないのでは…と思っていました。
正社員でも働き方(稼働日数)の柔軟性はある
業務委託だと社会保険や雇用保険の控除がないため、手取りのお金が多かったり、週○日という稼働で1つの仕事(現場)へフルコミしなくてもよかったりします。
お金は制度上の違いからくるものなので、働き方(特に稼働日数)の柔軟性について考えると、正社員でも柔軟にできるので、稼働日数の柔軟性という違いはないかなと思っています。
従来の考え方だと、
・正社員→週5日のフルコミット
・業務委託→稼働日数が柔軟(週1〜)
のような違いがあると思われるかもしれませんが、正社員でも週1日の稼働にすることはできます。
会社との合意が大前提ですが、実際に当社では週1日稼働、週3日稼働の社員がいたこともあります。
「正社員=週5日勤務」というのは、1人が1社に所属することを前提にした働き方です。ところが、会社単位ではなく、人材を流動的に活用してプロジェクト単位でチームを組むことが当たり前になれば、1人が複数の会社に所属することもできるので、週○日の正社員というのは不自然ではありません。
日本では、少子高齢化で労働人口が減っていくことは確定しているので、人口不足の中でより高い生産性を追求して仕事するためには、優秀な人材を複数の会社がシェアする考え方になってきます。必然的に1人が複数の会社で仕事することになるのではないかと考えています。
また、「リスクを極力取らず、会社員として各種保障を受けながら柔軟に働きたい!」と思う人も多いハズなので、正社員でも週◯日という柔軟な稼働が求められていきます。
そう考えていくと、正社員でも業務委託でも働き方(稼働日数)の柔軟性は同じです。
一人前のプロフェッショナルとして自走できる人が「業務委託」
制度上の違いを除いて、と言っておきながらアレですが…正社員と業務委託では指揮命令の違いがあり、そこが一番の違いではないか、と思っています。
ただ指揮命令が違う、というだけではなく、もう一歩踏み込んで考えていきたいと思います。
業務委託の場合、依頼主(会社)から直接指示することはできません。一方、正社員の場合は会社と雇用契約を結んでいるため、直接指示することができます。
ちなみに、IT業界でもよく耳にする「偽装請負」というのは、本来直接指示してはいけないにも関わらず、業務委託している方に対して、直接指示することを指します。
なぜそんなことをするのかと言うと、依頼主にメリットがあるからです。直接指示をすれば、具体的に委託内容を決めなくて仕事を依頼できてしまいますし、その時々で必要な業務を依頼できて便利に活用できるからですね。
話しを戻すと、業務委託の場合は直接指示を受けないので、ある程度の裁量が与えられます。つまり、どのように仕事を進めていくのかを自分で考えて自分で決めていく必要がある、ということです。
ということは、業務委託で仕事をする人は一人前のプロフェッショナルとして自走することが前提になっている、と考えられます。
自分たちではできないから業務を外部へ委託しているので、当たり前といえば当たり前なのですが、当社のようなIT企業だと、スキルとしては自分たちでもできるのですが、人的リソースが足りないから外注するケースが多くあります。
IT業界ではよくあるのですが、人手が足りないから多少スキルが低くても、業務委託で依頼してしまうケースがあります。実際、IT人材は45万人不足していると言われているほどですからね…。
(IT人材不足とは質の不足であり、本当は余剰するIT人材が22万人いるよ、という話を当社コラムで以前書きましたのでご興味ある方はぜひどうぞ)
これは、一人前のプロフェッショナルとして自走できない人が業務委託で仕事をしている、ということです。
こういった矛盾が生じてしまわないように、少なくとも当社から業務委託で依頼するときは、一人前のプロフェッショナルにしか頼まないようにしています。
正社員はプロフェッショナルだけでなく見習い中の人材もいる
業務委託とは逆に、正社員は直接指示ができるので、一人前のプロフェッショナルではない人材もいる可能性がある、ということになります。
誤解のないように言うと、正社員で一人前のプロフェッショナルはたくさんいます。細かい指示を出さなくても自走できる人はいますが、そうではない人もいる、という点が業務委託との違いではないかと思います。
そう考えると、会社としては正社員を教育して一人前のプロフェッショナルへ育て上げる義務があることにも納得できます。
一人前のプロフェッショナルでも正社員を続ける理由
このように考えていくと、正社員として一人前のプロフェッショナルになったら業務委託へ切り替えてしまって、手取りの給料を増やす人が続出するのではないか、と思われるかもしれません。
答えとしては「Yes」です。
一人前なのだから会社から指示を受ける必要もなく、一人でやっていくと言って独立する人はたくさんいます。(一人前のプロフェッショナルだと自分では思っていたけれど会社を辞めてから苦労する、という人もいますが…)
しかし、その一方で、一人前のプロフェッショナルでも会社に所属し続ける人もたくさんいます。
その理由は、会社のビジョンと個人のビジョンが一致しているから、だと思います。
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければ大勢で行け」と言われるように、一人で独立してやっていくには限界があります。一人で実現できないことを、大勢のメンバーで実現するために会社があります。
だから、自分が目指すビジョンと会社が目指すビジョンが一致していれば、一人前のプロフェッショナルだからと言って辞める必要はないわけです。
会社としては、「一人前のプロフェッショナルである業務委託」と「一人前のプロフェッショナルである正社員」で構成するチームを目指しつつ、特に正社員に対してはビジョンの共有を強く行うべき、という方向性が良さそうです。
まとめ
ということで、正社員と業務委託の違いについて考えてみました。
違いについて考えた結果、組織論的な話に行き着きましたが、自分の頭の中は整理できました。(自己完結)
特に業務委託において、一人前のプロフェッショナルではない人へ依頼しないようにするという点は非常に重要なポイントだと思っています。
裏を返すと、業務委託をする人はこの点を常に意識しないと当社に限らず淘汰されていく(契約を切られる)と思っています。冒頭で触れた通り、複業として業務委託する人が増えているので、複業する人はこの点をしっかり抑えておかないとヤバいと思っています。
当社ではこのような方針で経営していきます。
◯業務委託は、一人前のプロフェッショナルにしか依頼しない
◯会社としては業務委託と一人前のプロフェッショナルの正社員で構成するチームを作る
◯特に正社員に対してはビジョンの共有を強く行うべき