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今冬はたぶん「青春18きっぷ」は買わない

列車や高速バスに揺られている時間が好きだ。学生のころからずっとだ。
それほど意味や目的がなくても何時間でも乗っていられる(ただ仕事で乗るぶんはちょっと辛くなりはじめている)。
大学生だったころに北海道の友人宅に遊びに行って、札幌を夜に発つ急行「はまなす」と青森から大阪まで日本海側を日の出から夕暮れまでの半日をかけて走り抜ける特急「白鳥」を乗り継いだのは懐かしい思い出だ。いまはなぜか航空機のほうが超安ってことすらある(ありがたいけれど訳がわからない)。理系のくせをしてかつては頑なにあの「空を飛ぶ金属の箱」を拒んでいたけれど、いまはまったく抵抗がない。安ければとにかくホイホイと飛行機を選ぶ。

魅力的なディスカウントはもう期待できそうにないのが新幹線。コロナ禍のときは叩き売りだったけれど、もうそんな時代は二度と訪れまい。かつて庶民のささやかな楽しみだったものも、だんだん終了の声を聞くようになってしまっている。もっぱらインバウンドかお金持ち向けのサービスにシフトしているような気がしている。残念なことだけど…仕方ないと思う。

ただ…最近は明らかに一般庶民のほうを向いておらず、鉄道会社主導でサービスが改変されているかもしれない。懐具合がアレなので…まだ当面行く予定はないのだけど、たとえば名古屋から北陸へ行くときの鉄道サービスあたりは〝改悪〟の一例だと感じている。かつては名古屋から乗った特急「しらさぎ」が福井や金沢へ直行してくれたものだが、現在は敦賀での乗り換えを余儀なくされる上に新幹線になってしまったことで料金が高くつくようになった。

個人的には「しらさぎ」や大阪からの「サンダーバード」は、たとえ新幹線と並行したとしてもせめて福井ぐらいまでは乗り入れてくれたほうがありがたい。高速バスでもいいのだけど…最近の名古屋ー福井間や名古屋ー金沢間はすごく混むようになったみたいだ。どれほど安くてもさすがに満員の高速バスで数時間というのはつらい。懐事情のため、ちょっとした息抜きに出かける先は、すっかり京都ばかりになってしまった(月〜木の特割が片道わずか1500円ほどという超破格な上、わりと相席になるほど混んでいることが少ない)。

例年なら12月10日以後は「青春18きっぷ」にシフトしていた。全国どこにでも行けることがメリットだ。日帰りで岡山ってのはさすがにきつい。ちょっとだけ新幹線も併用しながら(当然その区間だけは、特急料金以外に乗車券も購入することになるのだけど)出かけることにはなるけれど、例年年に1度ぐらいはそうやって岡山まで足を運んだりもしていた。とりわけ昨年から今年(2024年)にかけては、特急「やくも」(岡山^ー出雲市間)が往年のカラーをまとって走ったり、長らく走り続けた国鉄型車両(381系)が引退したり…などといったメモリアルイヤーだったもので。

いわゆる「緑やくも」と呼ばれた塗装
「スーパーやくも」として活躍した当時の塗装
これが引退時点、つまり最後の塗色
国鉄時代のカラーの復刻塗装

新車に置き換わった「やくも」はまだ目にしていない。

つい先日、京都の鉄道博物館でおそらく最後のお披露目となる381系の展示がおこなわれたので見に行った。平日なのにすごい人だった。展示車両のひとつには、天王寺(大阪)から南紀を結ぶ「くろしお」号のカラーラッピングが施された。

京都鉄道博物館にて

ただ…「くろしお」ラッピングが車両の〝前半分〟だけだったことだけはちょっと残念だったけれど。それでも、とてもいいものを見せていただいたと思う。

後ろ半分は〝地肌〟そのままだった(京都鉄道博物館)

ちなみに京都の鉄博には、くだんの「くろしお」がまだディーゼルカーで走っていたころの車両(キハ81系)も常設展示されている。この車両は私が幼少のころ、母親に手を引かれて天王寺までわざわざ引退式典を見に行った思い出深いものだ。認知症になってしまった母親はそんなこと覚えていないんだろうけど。

独特な顔から「ブルドック」という愛称がある


今冬から青春18きっぷは「3日間連続」または「5日間連続」で使用しなければならないという制約がついた。これまでは長きにわたって任意の5日間で使用できたのだけど…おそらくはサービスを悪くして売れなくして、このきっぷもゆくゆくは廃止に持ち込みたいってところなのだろう。

何かと余裕のない社会になってしまった。かつては新幹線が発達するなかで「スローな旅」という需要もあったし鉄道会社もそれに対する理解もあっただろうけれど、コロナ禍明けあたりからは「目の上のたんこぶ」的な商品になってしまったのだろう。サービスの質を落として廃止…さびしくもあるけれど、私自身がこの数年に遭ってきたできごととかを見るに仕方ないとも感じている節がある。

JR北海道も…道東へ向かう特急を減便するという。かわりは高速バスに…といっても、肝心のドライバー不足問題のさなかである。こちらもこの先、事情が良くなりそうな感じがひとつもしない。地方都市はどんどん衰退していくんだろうな。


名古屋から関西への帰省で使っていた近鉄には、かつて正月だけ使用できて特急割引券のついた全線フリーきっぷがあったけれど、これも今年は発売されるという話は聞いていない。土日を含む3日間使える全線フリーきっぷはまだ売られているけれど、来年の正月は…土日を含まないから使えないんだよな。

さすがに正月は高速道路も混むので、高速バスという選択肢は外さざるを得ない。大晦日まで仕事なので、夜に実家を訪れるもののこれは新幹線の一択だ。

どう考えても3日、もしくは5日連続で鈍行に乗って…という使い方ができそうにない。残念だけど今年は青春18きっぷは買わないつもりでいる。

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