涙で雪は穴だらけ 〜 倉橋ヨエコさん(現 ヨエコさん)の音楽
私がはじめて「涙で雪は穴だらけ」という曲に触れた当時、この歌を歌っていたアーティストさんにはまだ〝倉橋〟という名字がついていた。2007年に発表されたシングル「損と嘘」の3曲目として収録されている。
はじめてこの曲を知ったのは「ニコニコ動画」だった。
初音ミクというボーカドイドにオリジナル曲を歌わせることが爆発的に流行ってたころ、私がとても愛好していたボカロp(ワンカップPさん)がこの歌を初音さんにカヴァーさせて動画を発表されていた。
そこからリアルの倉橋ヨエコさんにたどり着いたわけだ。
この曲が収録されたシングル「損と涙」の内容紹介を見に行ったら、Amazonではこんなふうに内容紹介されていた。
うん…たしかにこの曲の歌詞ってドMだ。そうなんだけど、私にはこの心性がよく染みた。私は生物学的にも性格的にもまちがいなく男なのだが、私自身、ふだんから「ごめんなさい」の言葉ばかりを使って生きている。
私が知ったわずか半年後に引退してしまった
せっかく私がいろんな曲を聴き漁りはじめたにもかかわらず、いくつかの曲を知り始めたばかりのタイミングで、倉橋ヨエコさんは急に「廃業」を宣言された。2008年に「解体ピアノ」というラストアルバムを出し、それっきり表舞台から姿を消してしまったのだ。
なんだよ…と思ってしまった(苦笑)。
せっかく名古屋なのに(ヨエコさんのご出身が名古屋なんです)。
ビリー・ジョエルとかギルバート・オサリバンのピアノも好きだけど、たとえば倉橋さん以前に知っていたアーティストでいえば小島麻由美さんあたりも好きだ。そして倉橋ヨエコさん。ご両名、ジャズテイストの入ったピアノが共通点だと思う(
アーティストさんをひとくくりにするのは失礼かもしれないが、あくまで分かりやすく説明することを優先したってことでご勘弁を)。
倉橋ヨエコさんのデビューは2000年だったらしいが、私がこ倉橋ヨエコさんを知ったのはもう活動末期も末期。リアルタイムでのご活躍の姿を見ることができたのはほんのわずかな期間だけだった。すごくもったいない気分になった。
まさか復活されていたとは…
「涙で雪は穴だらけ」 この曲を記事にしてみようと思い立ってさっそくYouTubeを「倉橋ヨエコ」の名で検索したところ、はじめて目にした動画があった。
名義から〝倉橋〟がとれているので、最初はよくわからなかった。興味本位で動画を再生すると、何やらAdoさんのMVを彷彿するような字体のコトバが画面に表れては消えていく。声をきいて「あれれ、これご本人だよね?」と思ったら、アップされたのが昨年(2023年)の9月ですでに12万回も視聴されているって。
15年ぶりにご復活されたという。いや…はじめて知りました。
お久しぶりです。お帰りなさい。
… 大変だったんだなあ
YouTubeの動画ページ上で「…ぜひお読みください。15年ぶりの復帰経緯、新曲「ドーパミン」をより深く理解することができます」と紹介されていたリンクから、このページに行ってみた。
この記事も、昨年9月15日づけのものだった。8ヶ月遅れだ … なんて私は情報に疎かったのか。たしかこのあたりって、谷村新司さんがお亡くなりになった頃ではなかったのだろうか — 調べてみたらそれは10月8日だった。チンペイ(谷村新司)さんが亡くなった直後には谷村さんの曲ばかり聴いていたし、そのわずか1ヶ月後にKANさんが亡くなってしまったのでKANさんばかりをヘビロテして …
そんなわけで、年が明けるまではこのご両名の曲ばかりしか聴いていなかったと言って過言でないぐらいの状態だった。ヨエコさん復帰のニュースも、そのどさくさで見失ってしまっていたわけだ。
いまさらながらでごめんなさい。
というわけでインタビューに目を落とした。廃業から復活までのあいだのあれこれが報告されている、そのインタビューの記事は長い(計7ページ)。だけど私がこのページで要約してあっさり紹介してしまうようなお話なんかではない。ヘッドラインだけざっと下に紹介するにとどめる。
涙で雪は穴だらけ
今回はこの歌のことを紹介しようと思っていたので、まずはこちらの話をしよう。
ごめんなさいの部分だけ引用してみた。これが一番の歌詞で、二番にもいろんなことに謝っている。この曲全体で計9回も「ごめんなさい」と謝っている。
シンガーソングライターさんの場合、作品がひとつの私小説だったりする場合がある。たとえばKANさんも、生前最後のアルバム2曲目に収録されている「23歳」の歌詞について、8割がたは事実(少しは脚色あるのかな?)と仰っていたのをどこかで聞いたような気がする。
ヨエコさんの場合もきっと、この曲はどこか私小説みたいなものなのではないか…私はそう思い込んでいる。まるで不器用な自分に対する自己嫌悪を、この曲に詰め込んで悲しそうに歌っているといったふうだ。
この歌詞にはじめて触れたときに真っ先に思ったのは、まるでオレ自身みたいだわ…ということだった。
ごめんなさいが口癖の人間は…うんぬんの記事をネットで見かけるたびに心がしくしくする。けっこう辛辣なことが書かれていた気がするんだけど…
今夜の検索結果はまだオブラートに包んでくれているほうかもしれない。
まあこれ以上深入りするのはやめとこうか。ただでさえ自虐モードだしw 。
気分がネガっぽいときには無理してポジティブな曲に埋もれなくていい、という話をどこかで聞いた。そこでは、中島みゆきさんの曲をすすめていたような気がする。
たしかにみゆきさんの曲にも重たいものが多い。私の世代だったらきっと「世情」フィナーレの男女混声のユニゾンを聴くと、腐ったみかんでおなじみの加藤優が護送車で警察に連れて行かれるシーンを思い出してしまうだろう(苦笑)。
無理にポジになろうとせず、かつてのヨエコさんのナンバーにこめられた、きっと私と同じであろうもどかしさをひとりで噛み締めながら過ごしてみようと思う。
ヨエコさん復帰第一弾のCD 「ドーパミン」収録
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