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ジュース2本分のがんばれを握りしめて~宝塚記念編~

 「苦しい!キタサンブラック、伸びない!!伸びない!!いつもの力強さが無い!!サトノクラウンが突き抜ける、内からゴールドアクター、さらに外からミッキークイーン……」

高校時代の思い出

 
2017年の宝塚記念。当時私は高校1年生であった。新たな制服に身を包み、弾む心で校門をくぐった入学式から2か月。新しくできた連れにこんなことを尋ねられた。

遠足のバス内では友人とスポーツ新聞を広げて予想した

 「今強い馬ってどの馬なん?」

 中学の時から競馬が好きだったこの私が、高校デビューなどというものをできるはずはなかった。しかし、好きなものを好きだと言い続けているとたまに興味を示してくれるヤツはいるのである。この質問に対し、個人的に強いと思う現役馬TOP5を答えた。2位から5位の順番は結構迷ったが、1位は迷いなくあの馬だった。

 「一番強い馬はやっぱりキタサンブラックかなあ、去年は年度代表馬っていうのになって今年は大阪杯を勝ってこの前の天皇賞でも……」

 キタサンブラックの実績と魅力を存分に語ったあと、こう締めくくった。

「今度の月末に宝塚記念っていうのがあるから、それ見たら強さが分かると思うよ!!」

 こうして、2017年の宝塚記念を迎えた。思い返せば、ユーチューバーのヒカルがキタサンブラックの単勝に1000万円賭けたことも話題になっていた。キタサンブラックは圧倒的な1番人気。単勝オッズは1.4倍だった。この時点でG1通算5勝。G1昇格初年度の大阪杯を制し、春の天皇賞ではサトノダイヤモンドに有馬記念のリベンジを果たし、世界レコードで駆け抜けた。

 さすがに負けようがないだろうと信じ、テレビの前で競馬中継を見ていた。キタサンブラックは3番手の外を追走し、絶好の手応えで4コーナーを回る。「さあ、そっから弾けるだけや!」と思っていたが、いつもより反応が鈍い。そうこうしている内に外から一気にサトノクラウンが先頭に立つ。キタサンブラックは完全に馬群に沈んだ。「え、何これ?もう終わり?」「こんなことが起きて良いのか?」

 そこから私は失意のまま1週間を過ごした。友人はそこから競馬に興味を持ってくれるようになったが、私はキタサンブラックが惨敗したショックでしばらく元気がなかった。負けたこともそうだが、その上凱旋門賞を回避したことも私としては非常にショックであった。キタサンブラックの先行力と根性があればロンシャンの2400mもこなせると夢見ていた。その夢が潰えたのが悲しかった。

阪神競馬場の夢

 あれから6年。私はその友人と夢の舞台にいた。「今年の阪神競馬場に花開く、あなたの夢は……」という杉本清アナウンサーの名文句が思い出されるほどの熱気であった。その友人とはもちろん、私に強い馬を聞いてきた友人である。

 そして今年は、キタサンブラックの初年度産駒、イクイノックスが出走する。昨年は天皇賞と有馬記念を制して年度代表馬に輝き、今年はドバイシーマクラシックで圧勝。現時点でのレーティングは世界1位である。もし私が「今一番強い馬って何なん?」と聞かれたら、間違いなくイクイノックスと答えるだろう。
 父の果たせなかった夢を現役最強馬の息子が叶える。それこそが、今年の私の「夢」であった。

私の夢はイクイノックスですという杉本節が脳内に流れる

もう一つの夢

 宝塚記念の週の木曜日、私の「夢」が叶った。非常に嬉しかった。身の引き締まる思いである。日本のために職務を全うしたいと思っている。
 そのお祝いも兼ね、宝塚記念の前日に友人と飲みに行った。彼はサプライズプレゼントも用意してくれてとても嬉しかった。ちょっと良さげなペンである。さすがに明日のマークシート記入に使うのはもったいないなと思いながら有難く頂戴した。2次会として鴨川デルタに行き、デルタの先端で大層盛り上がった。彼は少々飲みすぎたようであった。

いよいよスタート

 友人が体調を崩したこともあり、ゆっくり出発。阪神競馬場に到着したのは8レースの前ぐらいであった。到着すると既に満員。大阪杯や桜花賞の時とは格が違った。さすがグランプリレースである。

タイトルホルダーが勝った昨年に続き、2年連続の参戦。

 1番人気のイクイノックスのオッズは最終的に1.3倍となった。2017年のキタサンブラックは1.4倍だったので父よりも多くの支持を集めたことになる。
 宝塚記念のスタートは内回りの2200mなので、4コーナーの奥のポケットにゲートがある。そのため、返し馬の時は各馬が観客の目の前を走り抜ける。イクイノックスが通った瞬間、スタンドがどっと湧いた。生のイクイノックスは初めて見たが、度肝を抜かれた。オーラが他馬とまるで違う。ぐっと首を曲げて返し馬をするのは父譲りであった。

とてつもないオーラである

 2番人気は阪神大賞典と春の天皇賞を制したジャスティンパレス。3番人気は昨年のエリザベス女王杯を制し、有馬記念でも3着に入った武豊騎乗のジェラルディーナ。4番人気は復活を狙う昨年の菊花賞馬アスクビクターモア、5番人気は前走天皇賞春で2着、今度こそ勝ちたいディープボンド。

 年に一度だけの特別なファンファーレが鳴り響き、ボルテージは最高潮。ダービーで落馬したドゥラエレーデが17番ゲートに収まり、態勢が整った。

 ゲートが開くと、まず外からユニコーンライオンが先手を奪う。ドゥラエレーデが2番手につける。イクイノックスは後方に位置した。前走ドバイで逃げ切った馬が今日は後ろから2頭目。大丈夫か??阪神競馬場がどよめく。


 そんな中、3コーナー手前でレジェンドが動いた。ジェラルディーナが外から一気にまくる。これを見て場内は大歓声。残り800m地点で先行集団に取り付いた。イクイノックスは少しポジションを上げたがまだ後方から4,5番手。本当に大丈夫なのか??
 そんな不安をよそに、残り600m地点から一気に進出を開始した。「キタキタキタキタ!!上がってきた!!!」場内大興奮。2番人気のジャスティンパレスと一緒に上がってくる。イクイノックスとルメール騎手は馬群の一番外に持ち出した。普通に考えれば阪神の内回りで大外一気など自殺行為に等しい。

一番外から堂々と前を捕らえた。残り100m地点
(赤帽がイクイノックス)

 しかしこの馬には関係ない。残り200mでアッという間に先頭に並びかける。内から人気薄のスルーセブンシーズに迫られるも最後はもう一伸び。着差は微妙だったが圧巻のレースだった。何より勝ち切ったことが大きい。そして嬉しかった。父の雪辱を果たしたのである。海外帰り、梅雨時期の暑さ、内回りの特殊なコースといった、イクイノックスにとって有利ではない条件を克服したのは素晴らしい。

 それぞれの夢がぶつかった宝塚記念。惜しくも2着だったスルーセブンシーズは、凱旋門賞への登録がある。日本競馬にとっての「夢」を叶えるため、積極果敢にチャレンジして頂きたい。

春を終えて

 こうしてサマーグランプリは終わった。この春、G1でがんばれ馬券を買ったのは以下のメンバーである。皐月賞以外は1倍台の1番人気であった。

桜花賞 リバティアイランド 1着
皐月賞 ベラジオオペラ 10着
天皇賞 タイトルホルダー 競走中止
オークス リバティアイランド 1着
ダービー ソールオリエンス 2着
宝塚記念 イクイノックス 1着

 このうち、現地参戦はオークス以外の全てのレースだった。他にも、チューリップ賞(と福永騎手の引退式)、大阪杯、京都競馬場グランドオープン、マイラーズカップ、安田記念は現地参戦した。淀に3回、仁川に4回、中山に1回、府中に2回観に行った。

 秋はもう少し時間があるので、ゆっくり予想したいところ。馬券の予想は中々にアレだった。

秋の見どころ
・秋華賞 3歳牝馬三冠最終戦。リバティアイランド三冠なるか??
・菊花賞 3歳牡馬クラシック最終戦。春の実績馬か?夏の上り馬か?
・天皇賞 最強中距離馬決定戦!イクイノックスVSドウデュース実現??
・ジャパンC イクイノックスとリバティアイランドの対戦が実現したら激アツ!!
・チャンピオンズC ハイレベル3歳世代VS歴戦の古馬の対決
・有馬記念 年末の風物詩。誰が出走するんだろう?

 半年間ありがとうございました。夏も海外競馬等で更新するかも。