三冠物語2024

 止まらない。止まらない。どうにも止まらない。どうにも止まらなすぎて山本リンダが出てきそうなレベルである。

 何が止まらないのかというと、ルメール騎手の快進撃である。今年の夏競馬が終わるまでは重賞3勝であった。それが秋競馬が始まってから、10/14までにもう6勝しているのである。スプリンターズSの週以外は全て重賞を勝っている。10/13,14は秋華賞と府中牝馬Sを連勝したので、平均すると毎週重賞を勝っているようなものである。

 前回のノートでルメール騎手をどう取扱うべきかということについて触れた。後から考えてみれば、結構このノートはいいところを突いている。変なことを考えず、ルメールを買えばいい。
 私もルメールを嫌わず、この秋は結構軸にしているのだが、もう一つの軸が来なかったり、抑えていない人気薄が紐に絡んだりする。結局、この秋にルメールが勝った重賞は全て外している。

秋華賞で見せた完璧騎乗

 この秋ルメールが勝った重賞を全部取り上げたいところだが、ここでは秋華賞のみ触れる。
 10月13日、京都競馬場で行われた牝馬三冠レース最終戦の秋華賞。1番人気に支持されたチェルヴィニアが中団から抜け出し完勝。2着のボンドガールに1 3/4馬身差を付け二冠達成した。

 このレースは始まる前から特殊なレースだったように思う。G1にしては珍しく、人気各馬について、様々な不安要素が取り沙汰されたのだ。
 桜花賞馬ステレンボッシュは1週前追い切りが坂路。これは国枝厩舎にしては珍しい。というか来ないパターン。最終追い切りはそれなりのタイムで駆けるも、最後は馬也のミアネーロに先着を許す。自身は鞍上の戸崎騎手に気合をつけられていながらである。陣営のコメントも自信に欠けていた。鞍上の戸崎騎手が京都を苦手としていたことも不安視された。
 オークス馬チェルヴィニアは桜花賞の大敗、オークスでの勝ち方などから「右回り不安、小回り不安」が囁かれていた。レースでも追い切りでも右回りの時は口が外に向いてまともに走れていない、と一部から不安視された。木村哲也調教師が関西で良い成績を残せていないことも不安の理由の一つである。
 前哨戦ローズSを快勝したクイーンズウォークは川田騎手から「1週前の状態は良くなかった」と会見で明確に言われた。

 しかし、終わってみればチェルヴィニアが優勝。ステレンボッシュは出遅れ、最後は窮屈になりながらも内を掬って3着に滑り込んだ。両馬ともクラシックホースの意地を見せた。クイーンズウォークやミアネーロ辺りの、G1では馬券に絡まない馬たちとは格が違うということを再認識させられた。
 驚いたのは2着のボンドガールである。最終追い切りは坂路で掛かりまくり、ラスト1F13.9まで減速。夏から数えて3戦目でお釣りが無いのではないか、ダイワメジャー産駒で距離が長いのではないかといった声もあったが、後方から大外一気で2着に喰い込んだ。さすが京都競馬場を自らの庭と呼ぶ武豊である。

 なお、このレースのワンツーは昨年の安田記念の日に行われたメイクデビュー(1600m戦).の1,2着を入れ替えたものである。私は当時ボンドガールの応援馬券を買っていた。なぜ最後に信じてやれなかったのか。悔いが残る。


これで重賞3連続馬券内だが、勝ったのは未だこの新馬戦のみ。次こそ大きな舞台で勝利を。

 勝ち馬に話を戻す。ルメールは完璧だった。馬の調子はライバルより良かったし、ミスらなければまず勝てる相手だった。それでも、当たり前のように勝たせたルメールはやはり凄い。

 今回でいうと、ルメール騎乗馬の最大の不安はその適性にあった。それ以外は完璧すぎるほど完璧だった。ノーザンのクラブ馬、キムテツ厩舎、距離良し、追い切り良し、パドック良し。
 そしてもっといえばこの内回りの不安、実は存在しないのである。なぜなら走ったことがないから。経験が浅いだけの不安はノーカウント。そう書いた。
 右回りはたしかに不安だった。というのも唯一の右回りだった桜花賞は13着に大敗しているからである。
 しかし、これは道中と直線で不利を受けたのがあまりにも大きかったことがレース映像から分かる。また、そもそもこの時にルメールは乗っていない。口向きの悪さは技術でどうにかできる性質のもの。操縦しにくかったはずだが、それをやり遂げるのがルメールである。ルメールを信じろ。スタートを普通に出し、好位をとり、口向きの悪さをいなし、大逃げ馬にも慌てず徐々に進出し、最後は完勝する。芸術である。

 と、いうことできっちりチェルヴィニアから馬連を購入したが、ボンドガールは買っていなかった。あの戦績と追い切り過程では買えるわけがない。やっぱり着狙いの京都の武は怖いと再認識した。

 今年の牝馬路線は2歳時からレベルが高かった。阪神JFで競り合ったアスコリピチェーノとステレンボッシュは次走も人気を集めるであろう。それぞれ海外レースと古馬レースというチャレンジになるが、それを克服できるポテンシャルが彼女達にはある。オークス馬チェルヴィニアは次走ジャパンカップだそうだ。国内外の古馬の男馬を相手にどこまでやれるか。オークスはタイムだけ見ると正直物足りない。同じ東京2400のジャパンカップでは、良馬場なら1〜2秒は時計を詰める必要がある。しかし、それを可能にさせるポテンシャルがこの馬にはある。休み明け初戦で、ベストなコースとはいえない秋華賞の舞台であれだけのパフォーマンスを見せたのだから。

牡馬三冠最終戦、菊花賞でも人気馬に?

 さて、秋華賞が終わったということは、来週は菊花賞である。
 今年の菊花賞は、ダービー馬は参戦するも、それ以外にG1馬は参加せず。少し寂しいメンバー構成という感じはするが、トライアル3着以内の馬は計5頭が出走する(神戸新聞杯2着のジューンテイクは故障で回避)。

 中でも1番気になる馬はアーバンシックである。何を隠そう、ルメール騎乗だからだ。
 アーバンシックは春に京成杯2着、皐月賞4着という成績を残したが、ダービーでは11着に沈んだ。前半1000m62.2のスローで後方にいては届かない。
 秋初戦はG2セントライト記念であった。ルメールに乗り替わり、皐月賞2着のコスモキュランダ以下を倒し快勝。一気に菊花賞の有力候補である。

 ただ、馬だけ見ると私は買いたくない。以下、不安要素を上げまくる。
・馬質の割に重賞勝利が少なくG1未勝利の武井厩舎
・特に関西(輸送競馬)での成績が悪い武井厩舎
・京都苦手なハーツクライ系
・皐月賞ダービー共に馬券外(ダービーは二桁着順)
・(セントライト記念では改善が見られたが)掛かる気性

 これで上位人気、なんなら一番人気になりそうなのである。遂に人々が本質に気づいた。「長距離のルメール」は買いであると。

 しかし、あまりにも過剰人気である。クラシック用無しでトライアルだけ勝つ馬なんてこれまでも山ほどいた。記憶に新しいのはレッドジェネシスだろうか。買えない。

 こうして、また私は1年前と同じように、ルメールに平伏すのであろう。