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NPO活動における「外部からの提案」に関するジレンマと、負い目を感じさせない提案の模索
NPO活動をしていると、「新しい取り組みをやってほしい」「こういうことを考えたらどうか」など、外部の方からのアイデアや提案を受けることがあります。しかし、その提案の受け止め方や進め方にはジレンマが伴うことも事実です。特に、「自分の生計や本業があるのに、それを犠牲にしてまでやらなくてはいけないのか?」という相手側の気持ちを考えると、安易に「これもやってほしい」と要望することは場合によっては失礼になりかねません。
一方で、アイデアや助言をまったく受けつけないとなると、活動の幅が広がらず、発想力や改善の機会を逃してしまうおそれもあります。活動に身を置く当事者は当事者ならではの視点を持っていますが、外部の人の提案だからこそ気づけるポイントもあるからです。この記事では、このようなジレンマにどう向き合い、外部の人が「負い目を感じることなく」提案してくれるための方法を一緒に考えていきたいと思います。
1.なぜ外部からの提案に抵抗感が生まれるのか
1-1. 時間や労力への配慮
NPOのスタッフやボランティアは、本業や生活があるなかで時間をやりくりして活動を行っている方も少なくありません。そのため、「これをやってほしい」と依頼されると、「そんな時間や余裕はない」という焦りや負担感につながりやすいのです。これは非常に現実的な問題で、活動のマンパワーの限界にも関わってきます。
1-2. 責任が誰にあるのか分からない
「やりたいことは自分でやる」というのは、一見きっぱりしているようで、提案する側とされる側の間に壁を作る恐れがあります。提案者が「このアイデアをやったらよさそう」と思っても、それを実行する責任をはっきりできないと、「結局、私たちがやらなければいけないのか」というモヤモヤを活動当事者が抱えやすくなります。
1-3. 活動当事者のプライドや主体性
NPOが大切にしている理念や活動方針などを、外部の人が的外れに提案してしまうと、「自分たちのやり方を否定された」と感じてしまうこともあります。また、NPOであれば「主体性を持って取り組んでいる」という矜持があるはずですから、まるで“上から目線”のように提案されると受け取りにくいでしょう。
2.それでも「提案が欲しい」理由
2-1. 活動がマンネリ化しないため
外部からの新しい視点は、NPO活動にとって大きな刺激になります。組織の内側にいると見落としてしまう問題点や、他団体の事例を参考にした新たなアイデアなどは、外部からの意見だからこそ生まれやすいのです。
2-2. 修正点を見つけやすい
提案という形でなくとも、「こういうところをもう少しこうしてみたら?」というちょっとした助言は、活動の質を高めるために大変貴重です。当事者が気づかないまま進めてしまうことは少なくありません。その点、外部の方は客観的に見てくれるので、改善の糸口を提供してくれます。
2-3. 連携や支援のきっかけになる
提案をきっかけに、外部の方が新たなボランティアや寄付を検討してくれるケースも考えられます。また、似たミッションを持つ他団体とのコラボレーションの橋渡し役になってくれるなど、多様なチャンスが生まれる可能性があります。
3.負い目を感じさせない提案のために心がけたいこと
3-1. “一緒に取り組む”姿勢を示す
「これ、やってみませんか?」ではなく、「こういうアイデアを持っていて、一緒に取り組むことは可能ですか?」という形にするだけでも、印象は大きく変わります。“やってほしい”ではなく、“一緒にやりましょう”とすることで、相手が「結局全部自分でやらなくてはならない」という負担感を感じにくくなります。
3-2. 小さな実績を示してから提案する
「やりたいことは自分でやる」という考えは、アイデアを持つ側にも当てはまります。提案したいアイデアがあるならば、まずは自分自身でスモールスタートしてみたり、小さな協力者を募って試作や下準備を進めたりするのも手です。「こういう実績があって、実際に少しずつ手を動かしてみました。そのうえで、もっと広げられたら嬉しいのですが……」と持ちかけると、相手も前向きに検討しやすくなるでしょう。
3-3. 提案の背景を丁寧に説明する
活動当事者には当事者の事情や優先順位があります。そこを理解したうえで、「なぜこの提案をしたいのか」「どのような成果やメリットが見込めるのか」をしっかり説明することは非常に大切です。背景を共有してもらえることで、“相手を否定している”のではなく、“新しい視点を提供している”という印象を持ってもらえます。
3-4. 相手の事情・負担をリスペクトする
外部の提案に対して、「断る」あるいは「もう少し考える」という選択肢も当然あります。提案者としては、NPO活動のリソース(人材・時間・お金)には上限があることや、優先的に取り組むべき課題があることを尊重する必要があります。提案した側が「やらないならダメだ」と批判的になるのではなく、「今は難しそうですね。タイミングが合えばぜひ」と柔軟な姿勢を持つことが重要です。
4.まとめ
外部からの提案には抵抗感がある一方、マンネリ化を防ぎ活動の質を高める大きなチャンスでもある。
提案するときには、“お願い”ではなく“一緒に考える・一緒に取り組む”姿勢を大切にし、負い目を感じさせない工夫が必要。
提案する側も自分で小さくやってみたり、実績をつくってから話を持ちかけることで、相手の負担を軽減しつつ協力関係を築きやすくなる。
NPO活動は、多くの人の協力や新しい視点によって発展していくものです。たとえ「やりたいことは自分でやる」という基本姿勢があっても、外部からの応援や提案をまったく拒んでしまうと、孤立してしまいかねません。一方で、外部の人が「これをやってほしい」と頼みづらい雰囲気が続けば、せっかくのアイデアや助言が埋もれてしまう恐れもあります。
だからこそ、負い目を感じさせない提案の仕方を模索することは、お互いにメリットがあるのです。「相手の事情や思いを尊重する気持ち」と、「自分でも少し動いてみる前向きさ」を両輪に、外部からの提案が安心して取り入れられる環境をつくっていく。これによってNPOはよりいきいきと活動し、社会に対してより大きなインパクトを与えることができるのではないでしょうか。